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9本目

「あのさ、人類の国って元々お前が言ってたことだろ? 何惚けてるんだよ」


次の日また出発してから、俺はマミムに問い質した。


俺たちが人類の国に向かってるんでなければ、一体どこに向かってるというのだろうか?


「人類の国なんてないわよ。わたしたちが向かってるのは、パンゲア合衆国で、人類が唯一住んでる国だよ」


「だから、それは人類の国のことだろが! お前は言い回しがちょっと変わるだけで理解出来なくなるのか?」


昨日めちゃくちゃビビって、しかも俺はおかげで昨日あまり眠れなかったんだけど、超超超損したぜ。


何なんだ、ホントにこいつは…。


「あーはいはい、そゆことか。ま、そういう言い方しちゃう人ってたまにいるよね。ごめんね、わかってあげられなくて」


ウインクして俺の肩にポンと手を置く。


ねぇホントさぁ、バカに上から目線で言われると腹が立つ現象にそろそろ名前を付けない?


マミムられる、とかさ。


しかし、パンゲアか…。


それって確かはるか昔大陸が別れる前にひとつだった、最初の大陸の名前だよな。


合衆国ってことは、アメリカみたくいくつかの州に別れてるってことか。


1000万人しかいないから、現実的にはいくつかの街に別れてるって感じなのかもしれないな。


国としての統一はあるが、ある程度の自治を各街に任せているのかもしれない。


「パンゲア合衆国にはあと何日くらいで着くんだ?」


「このペースだと、あと1週間くらいかなぁ」


「そっか、今日向こうに見える森に入ったら、食料の調達をするか。何か動物とか果物とかあるといいけどな」


「わたしは馬が食べたいな」


「お前はどんだけ馬が好きなんだよ! 馬食ったら馬車が使えないだろうが」


マミムは指をパチンと鳴らして俺を指さした。


「それな。大正解♪」


こいつと話すとマジでイライラする。


きっとこいつの頭蓋骨の中には脳が存在せずに、体液とかで満たされているだけなんだろう。


バカに自分がバカだと自覚させることは困難を極める。


なぜなら、自分がバカだとわかってないからバカなので。


あー、こいつはホント顔だけが取り柄だな。


胸もちっちゃいし。


「な、何なに? あたしの体を舐めるようにイヤらしく見ちゃって。ふたりだけだからって変なことしないでよね」


「するか! お前に何かするくらいなら、ゾンビにした方がはるかにマシだわ!!」


「え? そっちの趣味の人? 超キモいんですけど~」


こいつに比喩的な表現とか禁物だな。


イライラするだけだ。


「お、そろそろ森に入るわよ」


森にせめて果物とかあるといいな。


気候が温暖なのと、これだけ草木があるということは水も豊富にあるということなので確率は高いだろう。


森の中の少し開けたところに馬車を停め、俺たちは一緒に食料を探すことにした。


ホントは分かれて探した方が効率的だが、またゾンビに襲われたときにふたりの方が…特に俺の生き残る確率が高くなるからだ。


しばらく歩くと川を発見した。


ありがたい。


これで少なくとも水は確保出来るな。


食糧庫で見つけた何かの動物の皮で出来た水袋に川の水を入れる。


半分ほどに減っていた水袋が満タンに満たされる。


ついでに川の水を飲んでみるが、安全そうだし美味い。


あとで馬を連れてきて飲ませるか。


魚とか泳いでないかな。


木の枝を銛代わりにして、獲れるかもしれない。


まあ、先に果物だな。


ビタミンは死活問題だ。


ビタミンCがないと人間はコラーゲンを作ることが出来なくなり、細胞同士の結合も緩くなって出血し出す。


昔の船乗りたちがよくかかった病気で、果物を食べるとすぐに治る。


ここんとこの食生活で、俺の出っ張った腹はだいぶ絞まってきた。


と言ってもまだ出てるが…。


こういうサバイバルのときは、多少体脂肪があった方が生き残るのに有利だ。


太古の狩猟時代の人類にとって、体にエネルギーを溜め込むことが生き残るために非常に重要なファクターであったため、糖や脂肪を求めるために美味しく感じるように味覚が発展したんだと思う。


あー、甘いもの食いたいな。


余計に果物を俺は渇望した。


しばらくウロウロしていると、ビワのような果物を発見した。


俺は果物の種類はあんまり詳しくないし、ましてやマミムの話を信じるならば2000年後の地球だ。


食べられるかどうか、慎重に考えなければならない。


まず、匂いを嗅ぎ少しだけ口に入れて飲み込まないで様子を見る。


そして、嚥下しさらに様子を見る。


大丈夫なようなら、1個だけ食べてみて1日様子を見る。


こういう慎重さがサバイバルするための基本だ。


「あれ? 食べないの?」


俺が制止するよりも早くマミムがバクバク食い始めた。


「ちょ、お前いきなり食うな! 毒とかあったらどうすんだ!?」


「バカね~。お腹減ってるのに食べないなんて。わたしが全部食べちゃうわよ」


仕方ない、取りあえず何個かもいで自分の分を確保した。


俺も恐る恐る食ってみると、うんやはりビワだな、これは。


大丈夫そうなので、俺は全部食べたいのを我慢して、取りあえずひとつだけ食べた。


うん、めちゃくちゃ美味い!!


ビタミンC不足はこれで何とかなりそうだ。


「おい、マミム! 全部食わないで取っておけよ。まだ1週間かかるし、次にいつ食料が手に入るかわからんからな」


「うん、わかった」


どんどん食べるマミム。


こいつわかってないな。


まあ、俺が確保しておけばいいか。


用意しておいた背嚢に、更にもいでなるべく多めにビワを入れておいた。


次は魚だな。


干し肉はいい加減飽きた。


川に戻ると、落ちていた枝を先が鋭くなるように折って、簡易な銛を作った。


川は透明感があり、そんなに深くないので、俺は裸のままだしそのまま腰の辺りまで浸かる深さのところまで入った。


冷たくて気持ちいい~。


そうだ、ついでに体も洗ってしまおう。


俺はごしごしと体を擦った。


「あ~! わたしも体を洗いたいんだけど」


「あとにしてくれ。魚を獲ったら火を起こすから、その間に水浴びしてくれよ。そうじゃないと、俺の前で裸にならなきゃいけないだろ?」


「じゃあ、早く魚獲ってよ」


この野郎、簡単に言うけど俺はやったことないんだけどなぁ…。


かと言ってどうしても魚を食べたいので、水面に目を凝らす。


少し深めのところに魚がいた!


何匹か、鮎みたいな魚が見える。


泳ぎは苦手だけど、この際やるしかない。


俺は枝を片手に潜ってみた。


水中で魚めがけて刺そうとするが、向こうも動いてるしなかなかうまくいかない。


水面から顔を出して息を吸っては潜り吸っては潜りを何回か繰り返すが、1匹も取れない。


もう、こういうのは練習しかない。


10回くらい繰り返して、何とか1匹獲ることが出来た!


魚は俺が近づくだけで逃げてしまうので、なるべく川上から近づき、川の流れに身を任せるようにしてあまり魚を見すぎないように気配を殺して枝を突くといいようだ。


結局、そのあと1時間くらいで5匹獲ることに成功した。


素人だし、上出来なんだと思う。


俺は枝を使って魚の腹を強引に裂いて、はらわたを出してから火を起こすことにした。


火を起こすのは、全然自信がない。


よく両手で枝を挟んでグリグリ回すのを映画とかで見るが、あんなの枝の節が手に痛くて出来ないと思う。


最初は、なるべく乾いてると思われる枝同士を勢いよくごしごしと擦ってみた。


…超疲れるし、何も起きない。


枝が湿ってるのか?


折ってみると中が少し水分を含んでいるようだ。


なるべく乾いてる枝を探してやってみても、全く出来ない。


やなり、手で挟んでグリグリやる方法しかないのかも…。


俺があれこれ試行錯誤してると、その間水浴びを済ませたマミムが枝で地面に穴を掘り、すり鉢状にして、そこに枯れ枝を入れ、レーザー銃であっけなく火を着けていた。


そういや、こいつレーザー銃持っていたんだった。


「お前さ、今までの道中それ使えば温かい食事出来たよね?」


「え? 言われなかったから、いいのかな~って思ってたの」


…気付かなかったとは、マミムに負けたようで言えない。


俺たちは無事に魚を枝に刺して、焼いて食べることが出来た。


塩も持ってきてたので、塩かけて焼いたからめちゃくちゃ美味い!!


鍋みたいなのがあったらお湯作って干し肉入れてスープにするんだけどな~。


まあ仕方ない。


でも火って偉大だね!!


魚は少なかったけど、干し肉とパンも食べて、俺たちは充実した食事にありつけた喜びで、この日の夜はご機嫌だった。

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