38本目
「ワタクシのパンドラロックを解除してクダクダさい」
ロボットが近づいてくる。
地球にいたロボットよりも、綺麗にメンテナンスされてる感じがする。
リルレなんか、最初見たとき錆びだらけでディストピア感満載だったからな。
サイボーグ化の技術はペッボレゲセのものなので、技術者が彼女のメンテナンスをきちんとしているのかもしれない。
「博士、彼女は大丈夫か?」
「まあ、問題ない。我々、第一世代の最強七人の中でふたつ名があるのはテトナと彼女だけでな。テトナは『暴虐』だったが、彼女は『淑女』だ。淑女のコサ。そう呼ばれていた」
テトナが暴虐か…。
すげー納得。
淑女なら大丈夫か。
俺はコサに指を差し出す。
「トオル様のDNAコードを確認。パンドラロック解錠。モード『ハルマゲドン』解放。再構成開始します」
コサが光輝き、再構成が始まる。
この光景は何度見ても美しい。
白いボディに、キメの細かい黒い肌と顔立ち。
ヘアースタイルは黒人特有のチリチリパーマで、優しげな目をしている。
ワヲンと同じくらい長身だが、肉感的だ。
美しい。
第一世代はボディはみんなテトナを除き白いな。
テトナは魔獣と融合したからだろうか。
一方、第二世代はそれぞれの個体により色に個性があるようだ。
イウは燃えるような赤、エオカは淡いピンク、シスは淡いシアン系。
ドミニオンズは、試作段階だったからなのかもしれない。
「パンドラロックから解放してくださり、誠にありがとうございます、トオル…サトル様。わたくし、コサと申します。今後ともお見知りおきを」
おー、何かまともそうだ!!
「よろしくお願いします。コサさん」
手を差し出すと、コサさんが俺の手を両手で温かく包ん骨が砕ける音がした。
「うぎゃーーーッ!! いでぇッ!! な、何するんだぁ~~~ッ!?」
コサさんが驚き、上品に口許に手をやる。
「ご、ごめんなさい! わたくし、とんでもないことを…」
「コサは、あのテトナですらパワーでは勝てなかったからな。本人がコントロールしきれないところがあるんだ」
そう言って博士は俺にナノマシンを注射した。
「ホントにごめんなさい! ま、まさかこんなに貧弱だなんて…。あ! いや、悪く受け取らないでください!! あぁ、わたくし絶対に嫌われましたわ…。うわぁあああ~~~ッ!!」
地面に両手の拳を叩き付け、轟音とともにクレーターが出来る。
「う、うわッ!!」
恐怖で腰抜かしてションベンが…。
あー、服着てなくて良かった!
「ごめんなさいぃ~~~ッ!!!」
走り去るコサさん。
あ、新しいタイプだな。
あいつはやべーわ。
出迎えてくれた、レブデン市民たちもドン引きしてる。
市民たちの前で漏らして恥ずかちー!!
『ま、まあ、気を取り直ちて、王が待つ王宮に行きまちょう』
取りあえず俺たちは市内に入り、王宮に向かった。
王宮は、ヘルメスからも見えた超高層タワーだった。
見上げるとすげー迫力。
中に入ると、モダンでしかも、細やかな細工が施されており、それが主張し過ぎずに上品だ。
市内もとても清潔だ。
市民たちも明るく活気があり、いい国のようだ。
王宮は、このタワー全体ではなく、中層の一部らしい。
下層が商業施設、中層が王宮や政府機関、それと異星の大使館など、そして高層は研究所や学習用の機関があり、広く市民に開放しているようだ。
かなり好感が持てるな。
普通王宮を最上階にしそうなものだが…。
『ようこそ、いらっしゃいました。わたしは惑星ペッボレゲセの治世を任されているバロアチです。パニから皆さんのご活躍をお聞きいたしました。ゾンビとコカビエルの件、大変感謝しております。部屋に案内させますので、まずはお休みになり旅の疲れを取ってください。夜にはささやかながら、歓迎の宴を用意しております』
ペッボレゲセの王様…パニ姫のお父さんは、髭を生やして恰幅のいい人の良さそうなおじさんだった。
パニ姫と同様、髪と肌がピンクがかっている。
俺たちを膝まづかせることなく、事務的な部屋に通されテーブルを挟んでお互い座って話している。
俺はすっかりペッボレゲセが気に入ってしまった。
「ありがとうございます、バロアチ陛下。では、お言葉に甘えてそうさせていただきます」
俺たちはひとり1部屋割り振られた。
その部屋がめちゃくちゃ綺麗で広くて、超すげー!
俺のために何部屋あるのよ…?
服を着たまま空気圧で洗浄用ナノマシンを吹き付けるナノシャワーと、お湯のシャワーがあったが、俺はもちろんお湯のシャワー。
この星では水は大変貴重だが、排水は完全にリサイクルされ再利用されるという。
あー、超気持ちいいわ。
シャワー浴びながらのションベン…。
これに勝るものなし!!
部屋には色とりどりの果物が置いてあった。
早速パクリ。
うん、美味い!!
腹が減ってたので、俺はいくつか果物を腹に入れ、いつの間にかベッドで眠ってしまった。
2~3時間熟睡してしまい、マミムに起こされ宴に向かうことにした。
さすがに裸で向かうわけにもいかないと思い、部屋にあったガウンを羽織ったのだが、似合わないと言われマミムに脱がされてしまった。
えー、裸でええんかいな…。
宴会場に着くと、そこには沢山の料理が用意されており、王様を始め、国の要職に就く方々からも歓迎された。
あ、でも何か俺だけ無視されているような…。
裸だから、ペットのゾンビだとか思われてるのかな?
まあ、気楽でいいや。
気にせず、接待は博士とリルレに任せてマミムとふたりでバクバク食う。
そこに、パニ姫とモジャ大臣がやってきた。
『何やら、サトル様に失礼な態度を皆が取ってるようで、誠に申し訳ないです! どうも、珍しい動物か何かだと思っているようで…。救世主だと話したのですが、冗談だと受け止められてしまいました』
『あとで、わたちからも王に伝えておきまちゅね』
ふたりは申し訳なさそうだが、ホント俺は気にならないわ。
王様とか偉い人たちと話すなんて苦手だしね。
「いやいや、気になさらないでください。料理が美味しいし、酒でも飲みましょうよ」
ふたりの顔が明るくなった。
『いいでちゅね! 飲みまちょう飲みまちょう!!』
3人で乾杯して飲んでると、そこにひとりの若いペッボレゲセ人の男性が寄ってきた。
『貴様か…今回英雄たちに連れてこられたペットとやらは。随分と姫に馴れ馴れしいな』
『これ、止めなさいジーよ』
モジャ大臣が諌める。
「まあまあ、大臣。大丈夫ですよ!」
酒のおかげで俺はすこぶる気分がいい。
「そんな機嫌悪そうにしてないで一緒に飲もうぜ。俺はサトル。よろしくな」
そう言って右手を差し出すと、ジーは俺の手を払った。
『俺の姫に近付くやつは許さん! お前何でも昼間小便を漏らしたらしいな。そんな臆病なやつに姫は渡さんぞ!!』
場内がシーンとなってしまってる。
え?
俺、もしかして喧嘩売られてるの?
何だかめんどくさいことになってきちゃったなぁ…。




