表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

第二話「A Bitter Chocolate.」(中編)

前編に後半を追加しています。まだそちらをご覧になっていない方はまずはそちらをご確認ください。

 その夜、颯太は今日起こった出来事を眞琴に話した。

「なぁ、虎瞳さん?って人知ってる?」

「....知ってるけど、どうした?」

「いや、ちょっと気になることがあって。」

「まさかその女に手を出そうとは思ってないだろうな。」

「え、好きなの?」

「そういうことじゃない。まぁちょっと気になってた時期はあったが....」

「あったのかよ笑」

「色々あったんだ。俺の周りでな。」

「ふぅん。明日は大会だから明後日詳しく話すよ。」

「了解。一人俺の友達も呼んでいい?」

「誰?」

「西原飛鳥」

「あ、にっしーね...」

 西原飛鳥(にしはら あすか)。通称にっしー。眞琴と同じクラスの男。バスケットボールのクラブチームで10年以上プレーしてきており、中学2年生で県大会を突破し全国大会まで進出、ベスト16に食い込むほどの驚異の成績を残している。しかし女癖は非常に悪く、これまでに手を出そうとした女性は7人を超えている。

「あいつはどういうわけか難アリな女性に引っかかりやすいからな。」

「あ、やっぱり難アリなんだ。」

「だいぶな。というか、明日大会だろ。お前はそろそろ寝たらどうだ?」

「確かに。もう23時か....」

「詳しいことは明後日話そう。しかし嫌な予感がするな....」


 翌日、大会当日を迎えたCodaのメンバーたちは皆緊張していた。実力はあるが、皆初めての大会だ。やはり会場には独特の緊張感が漂っており、彼らもその渦に飲まれていた。バンド数は11校25バンド。彼らの演奏は12番目だ。彼らの演奏曲は「Sweet Milky Chocolate」。恋愛の切なさやもどかしさを謳う甘いバラードである。眞琴から警戒しろと言われていた強豪校はインフルエンザ流行のため辞退していたが、それでも彼らの不安は拭いきれなかった。

「いよいよだね...」

「うぅわまっじで緊張してきたぁ〜!!」

「ともきくん落ち着いてwww私達はいっぱい練習してきたんだよ!勝てる勝てる!」

「しかし不安だな....うちにできるだろうか...」

「ひさぴーさん大丈夫だって....」(ひさぴー=矢巾久光の渾名)

「不安なものは不安なの!!あ〜〜もう!!」

「みんな落ち着いて!っ大丈夫だからっ!!」

そう声を荒げたのは大葉原(おおはわら)さき。Codaのギタリスト。非常に優れた能力を持つ。Coda唯一の常識人である。おそらく。

 そんな会話をしているうちにも本番の時間は近づいてくる。いよいよ10番目のバンドの演奏が終わり、颯太たちは楽屋(に改装されたリハーサル室)に通された。一時的な改装のせいもあるだろうが、いつも練習している場所でも、本番直前ではこんなにも違うように見えるのかと颯太は感じていた。

「みんな、自分たちのベストを出せば、きっと勝てる。精一杯頑張って、焼肉に行くぞ!!」

「おーー...って焼肉!?」

「なんか昨日さぁ、」


〜昨日〜

「大会で優勝したらCodaにはなんか奢ってあげようと思ってるんだが、なにか欲しいものはあるか?」

「いや別に欲しいものはこれと言ってない...けど...」

「けど?」

「焼肉に行きたい。」

「....は?」

「焼肉ね!よろしく!」

「あ、おい、ちょっ」


颯太は眞琴に何も言わせず電話を切った。そして今日、大嶋眞琴は、会場に来ていない。


「眞琴可哀想じゃない!?笑」

「だからきてないのかww」

「いや、それはなんか元から予定があっていけなかったらしいよ。なんか、関西のように用事があるとか。」

「なにするんだろ...眞琴はやっぱ突拍子ないからなぁ....おもろいw」

「城を見に行く、って言ってた。」

「わかんね笑」

「でもさ、まことくんはそういうとこが魅力でもあるんじゃん?」

「そうだな笑笑」

そんな眞琴トークをしている間に11番目のバンドの演奏も終わり、いよいよ彼らの番がやってきた。会場のアナウンスとともに彼らはステージで準備を開始した。颯太は指の震えが止まらなかった。もし出だしでミスったら....などと無意識に良くない想像をしてしまっていたのだろう。そして音出しも終わり、いよいよ本番。

「続いてのバンドは不動岡高校、Codaです。」

「...ぉおねがいします!」

少し情けない返事だったなと内心思いつつ、いつも通り演奏を始めた。


不意に芽生えた恋心

色めく花 それ以上に気になるのは君のこと


あぁこれで終わりなのかな もうさよなら?

少しほろ苦い恋はビターチョコレート

それよりも苦いのは 君と一緒に作った思い出のミルクチョコレート


 こうして無事に演奏を終えた彼らは、なんと一箇所もミスをすることなく演奏することが出来た。どの審査員からの評価も良い。中にはこんな作曲が高校生でもできるのか、というコメントもあった。

「っしゃ!こーれはいったっしょ!!」

「いやごめんね...なんかちょっとミスった気がする...」

「大丈夫だよ!ひさぴーのドラムまじで完璧だった!!」

「よかった....ほんとみんなありがと。まずは自分たちに拍手!!」

こうして、その後も順調に大会は進み、全バンドの演奏が終わった。結果は3日後に発表されるが、つなぎとして審査員5人からの全体の総括が行われた。彼らが良かったなと思ったらしいバンドの発表があったが、名前が出されたバンドに、Codaの名前は、なかった。

「.....」

「いや、まだ希望はある!みんなが褒められてたのはパフォーマンスのことで、演奏の出来に関しては何も言ってなかったじゃん!!」

「でもパフォーマンスも大事...」

「弱気になっちゃだめだよ!!颯太はほんとによく頑張ったよ。もしだめでも、みんなでお疲れさま会しよ?」

「そうだね...」

颯太は、気分の落ち込んだ状態で家路についた。


 翌日、颯太は眞琴に呼ばれ6組教室へと入った。

「大会おつかれ!早速だけど、話を始めさせてもらうよ。」

「よぉ颯太。久しぶりだなぁ。」

「にっしー....虎瞳さんとなんかあったの?」

「は?なんで知ってんだお前...お前だな?」

飛鳥は眞琴の方を見る。

「いづれ話すことになるんだ。別に問題はないだろ。」

「いやそうだけどさ、お前が言うのは違うくない?」

「まぁまぁ落ち着いて...」

颯太は飛鳥を宥める。

「とりあえずにっしー、話してやってくれ。」

「はぁ...わかったよ。俺といよは、去年の6月に行われた文化祭のときに恋愛関係に発展した。」

「発展させようとした、の間違いだぞ。」

「黙れお前。まぁ付き合ってはないんだけど、指輪交換はしたし...」

指輪交換とは、深戸高校文化祭で5年前から行われるようになった、気になる人や仲のいい人と支給された指輪を交換するという文化祭中の一大イベントである。全校生徒の前で交換するといった拷問のようなことはないが、クラスごとに指輪の色が違うためバレることは容易である。

「ええええしてたの!?」

「眞琴がバラしてると思ったけどそこはバラしてなかったのか。」

「俺は口硬いぞ。」

「どこがだよ。俺のことべらべら喋ってるくせに。」

「まぁにっしーだからな。」

「はぁ?」

「続けろ。」

「ああああイライラすんなぁ!!まぁいいや。問題はその後だ。文化祭が終わった直後から、いよは俺のストーリーにイイネをつけてくれなくなった。」

「え、それだけ?笑」

「そんなわけねぇだろ。結局は、俺は恋愛対象として見られてなかったらしい。」

「その後隣の高校に通ってるお前の塾の先輩から勉強のお誘いが来て、寂しさ埋めたいとか言って待ってたら結局来なくて俺と2時間電話s」

「やめろしゃべんな。その後夏休み中はなんか振られたらしくて向こうから電話してくることが増えて、これまた狙えるんじゃねぇの?ってちょっと期待したんだけど...」

「何があったの?」

「合コンに参加してた。」

「はぁ?え、それ大丈夫なやつなの?」

「流石にな。学校で勝手に男女3対3で朝に合コンみたいな真似をし始めたんだ。」

「それは...色んな人から変なこと言われるんじゃない?」

「だいぶ言われてたな、特に俺のクラスでは。」

「で、そのうちの1人と付き合ったんだが、1ヶ月で別れた。」

「はっや」

「それも別れた理由がいよの浮気だ。」

「マジでぇ!?」

「ああそうだ。」

「で、こいつが浮気現場を撮影した写真がまだ残ってる。」

「いや消した。」

「え?」

「いや残したくねぇなって。」

「確かにな。」

「ただ、俺はそれをあるグループラインに送っていた。」

そういうと、飛鳥は2人に「虎瞳伊代被害者の会」というグループラインを見せた。

「こんなものが...」

「こん中には元彼もいるぞ。後でこいつも来るから色々聞いとけよ。」

「え、来るの?」

「にっしーが呼んだ。こいつ人脈広いからな...」

「お前もだろ。」

「話を戻すが、俺はこのグループにしか送ってないはずだったんだ。グループに入っていた奴らはみんないよの愚痴を言ってたし、特に怪しいやつもいなかった。でもな、バレたんだよ。」

「え、、つまり」

「内通者がいた。ってこと。」

「で誰なのそれ?」

「だからそれがわかんねえんだって言ってんだろ...」

「どうやら男側にも彼女がいたらしい。要するにW浮気だ。」

「で、そこから俺があいつと関わることはなくなった。後のことは知らん。」

「そっか、ありがとね。元カレの方からは何か他の情報聞けそうなの?」

「いやあいつも俺と同じタイミングで関係を切られたから知らん。合コンしてたやつならわかるんじゃね?」

「確かに、参加してた人の名前知ってる?」

「いやそこまでは。」

「残念ながら俺も。」

「そっかどうしよ...」

「あ、元カレに聞けばいいじゃん。」

その時、ドアが勢いよく開いた。

「久しぶり、拓海」

諸竹拓海(もろたけ たくみ)。伊代にすべてを捧げるため部活までも捨てた男。しかしその決意とは裏腹に伊代に対しては無意識モラハラを行っていたとか、いないとか。

「何だよ急に呼び出して....」

「お前に頼みがあってな、伊代といっしょに合コンみたいなやつにいた女子を教えてくれないか?」

「....伊予の話すんじゃねぇよ。」

「ごめん拓海。ただどうしても知りたいんだ。」

「わかったよ...あの場にいたのは伊予と、チアダンス部の谷津絆さんと、あとは、」


「軽音楽部の鞍網ひかるさんだ。」

----

「まだ残ってたのか、ひかる。」

「眞琴と颯太じゃん。あたしに何か用?」

「ああ。虎瞳伊予の件だ。」

「.......。」

「お前ら、前から関わってるのは知ってたから仲がいいのかとも思ったんだが、どうもおかしい。この間あいつのSNSを久しぶりに開いたんだが、ひかるが写ってるストーリーがすべて消されていた。しかも、お互いフォローすら外してるみたいじゃないか。」

「...なんで知ってんだよ。」

「あいにくそういう情報に強いもんでね。で、何かあったんじゃないのか?」

「....あったよ。」

「あいつのことだ。どうせ男関連だろう?」

「話せる内容か?」

ひかるは首を横に振る。彼女の反応からして、これは相当闇の深い話のようだ。

「伊代に智樹が狙われてるかもしれない。智樹が危ないんだ。」

「頼む。何があったかを俺達に教えてほしい。」

「...わかった。」

ひかるは、何があったかをすべて颯太と眞琴に話した。眞琴は、ひかるを一度教室外に呼び出し2人で話し始めた。

「なぁ、この情報、他に誰が知ってる?」

「えっと、あたしと絆と、あとは6人くらい。」

「絆さんもいよのフォローを外してるみたいだな。まあ当然か。しかしこんな事があってもフォローを外さないその女子はすごいな。」

「ね。どうでも良くなったんじゃない?別にそこが付き合ったわけでもないし。」

「この話、その知っている奴らで智樹と、お前らの周りにいる奴らに噂として流してくれないか?」

「は?やだよ。もう関わりたくもない。」

「さっきも言ったが智樹が危ないんだ。頼む。あいつの青春を、あんなやつに壊されたくないんだ。あと、お前自身の復讐にもなる。」

「復讐...わかった。後でみんなにも連絡する。」

「ありがとう。しかし俺達は、どうやらとんでもない化物を相手にしてるみたいだな。」

「いやほんとに化物だよ??これ以上はかかわらないほうがいいよ...」

「智樹を助けたら関わることはないと思うぞ。」

「だといいけど...」

「ちなみになんだけど、いまあいつが仲いいやつ知ってるか?」

「いや、わかんないけど...でもクラス一緒だから誰と話してるかはわかるよ。」

「だれだ?」

「山堂っていう人。バド部の人なんだけど、趣味が合うらしくて最近はずっと一緒にいるよ。」

「おけい。ありがとう!すまなかったねこんな話をさせてしまって...」

「大丈夫だよ。それよりも、智樹を助けてあげてね!」

「勿論だ。颯太、行くぞ。」

「え、なに!?」(直前まで会話を聞いていなかったため何について話しているかがわからない)

「もう一人に会いに行く。お前もついてこい。」

「おっけー。ひかるさんありがとね。」

「うん。」

こうして、彼らはバドミントン部の部室へと向かった。

「...いないな。」

「どんな人なの?その山堂って人は。」

「あれ、会ったことがない?そっか...じゃあもう帰っていいよ。」

「なんで急にwww」

「あいつは誰にでも行くように見えて意外と心が狭い。一応信用が在る俺だけで行くほうが得策だとおもったんだ。」

「わかった。じゃあ帰るね。」

「色々付き合わせてしまってごめんな...」

「大丈夫!お陰で僕の知らないことたくさん知れてよかったよ。」

「こんなこと普通に言ってくれるやつはもうお前くらいしかいねぇよ...ありがとな...」


眞琴は、そこから部室前で彼が来るのをずっと待っていた。そして、ついにその時が訪れる。

「久しぶりだなぁ山堂。」

「え、眞琴!?なんで...」

「虎瞳と智樹の件について聞きたいことがある。協力してくれ。」

「......知らない。」

「え?」

「俺はそんなこと知らない!!」

後半に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ