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三十二話 弾けた飴玉は、響く耳鳴りへ

初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。

この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。


・あらすじ

魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。

一行は女神の城に着く。

医者と少年は兵士に女神様がお呼びだと言われて、手枷に繋がれた鎖を引かれて城の長い廊下を歩く。医者は小声で少年に話す。

「私、実は女神様から直接お言葉を賜ったことがあるの。それだけ私が女神様から一目置かれてると思ってる。だから私の話なら女神様も耳を傾けてくださるはずよ。安心して」

少年は目を伏せて何も言わなかった。


そして二人は、家でも建てられそうなほど広い謁見の間に辿り着く。

部屋の一番奥に女神が玉座の肘掛けに肘をついて座っていて、医者は唾を飲んだ。少年はずっと目を伏せたまま震えていた。

二人は兵士に連れられて部屋の中央まで歩いて膝をつく。

女神は退屈そうに一瞬二人に目をやったが、すぐに飽きてサイドテーブルに並ぶ小さなケーキを摘んで食べた。

医者は頭を下げたまま女神に言う。

「女神様。お話があります」

「面をあげよ」

医者は顔をあげて女神を見た。少年は横目で医者を見ていた。

女神はサイドテーブルに積んである飴の山から宝石のように形が整えられた飴を一つ摘んで、目の高さでそれを眺める。

女神が飴から指を離すと、飴が空中に静止してその場で回転し始めた。


女神が飴を指で弾いた。

飴は高速で飛んで行く。それは医者の眉間にぶつかり、貫通して頭の反対側まで突き抜けて風穴を開けた。その勢いで医者が後ろに倒れた。

少年は何が起きたのかを理解する間もなかった。

ただ、そこに倒れているお母さんの頭からじわじわと鮮烈な赤色が広がっていく。少年は目を見開く。徐々にそれを理解して、急激に心拍が上がる。


少年は医者の方へ近づく。しかし手枷に繋がる鎖を引っ張られてそれ以上医者に近寄れない。

少年は力ずくで医者の方に鎖を引っ張るが、大人の兵士の力には勝てない。少年は鎖を引っ張りながら叫ぶ。

「お母さん! お母さん!」

女神は表情ひとつ変えずに言う。

「其奴は牢屋に連れて行け」

兵士は少年に繋がった鎖を引っ張って連れていこうとしたが、少年の体からは溢れ出る瘴気が鎖に纏わりついて鎖が千切れた。

少年は大きく息を吸うと、女神を睨んで喉が壊れるほど叫んだ。







「────────」











その瞬間少年からとてつもなく強力な魔力が女神に向かって放たれた。

女神はそれを目の前に魔法壁を張って受け止める。しかしあまりの強烈さと鋭さで分厚い魔法壁が次々に壊れて貫通し、女神の体を貫いた。

衝撃波で女神の城は壊れて吹き飛び、瓦礫の破片が国のあちこちに降り注いだ。

国中の地面がひび割れて一瞬のうちに強烈な瘴気が地中から染み出して溢れかえった。

強烈な瘴気を浴びた者たちはもがき苦しんで生き絶えていく。

国中が強力な魔物で溢れかえって瘴気に耐性があって生き延びた人々を襲った。


そうして地獄絵図と化した女神の国は一夜にして滅びた。ひび割れた床だけになった城は謁見の間があった場所を中心に窪んでいて、その中央に立っている少年と黒い塊だけがポツンと残されていた。

少年の近くに倒れていた医者の遺体は瘴気で覆われて真っ黒になっていた。

一気に魔力を使い果たした少年は膝をつき、前に倒れて気を失った。


謁見の間の奥にある瓦礫の山が崩れて何かが這い出てきた。全身が黒く焼けこげていて火花を散らしているが、その体はすぐに再生して女神の姿に戻っていく。

立っているのがやっとの女神だったが、堪えきれずにハッと短く笑った。

「貴様の宣戦布告、しかと受け取った」

そう言って女神は倒れてきた柱の瓦礫に潰された。

飛び散った女神の血は不自然に動き、地面の隙間に染み込んでいった。


三十三話へ続く

ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。


今回はこの物語の核となる話だったと思っています。

ところで、今回は少年が叫ぶシーンがありました。

「────────」

と罫線で表しましたが、メモの時点では「あああああ!!!」と文字でもっと長く書いていました。初めは文字がたくさんある方がインパクトがあるかなと思っていました。しかしある日、仕事中に大きな音が鳴った時に耳がキーンと耳鳴りのようになったことがありました。映画やゲームの中で近くで爆発物が爆発して周りの音が消えてキーンと耳鳴りだけが聞こえるシーンがたまにあると思いますが、あれって本当にあるんだとその時思いました。なので少年が叫ぶシーンも「あああああ!!!」と文字で叫ぶのではなく音が大きすぎて耳鳴りしか聞こえない表現にしようと思ってこの罫線と余白で表現してみました。そんな感じが伝わってるといいなぁと思います。


今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!

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