第二話 膨らむ蕾と、不器用な彼は
小説の執筆は初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれる予定です。念の為R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と一緒に、目的の旧女神城跡地を目指して旅をする。
「はい。ぜひご一緒したいと思います」
旅人の答えを聞いた瞬間、ポーション屋の表情がパッと明るくなった。
「ありがとうございます! これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「あの、差し支えなければ私も旦那様とお呼びしてよろしいですか?」
「好きに呼んでください。今はもう大した身分じゃないから、そんなに畏まらなくていいんですけどね」
「いえ、これほど魔法に詳しい方は尊敬します。旦那様も私にはそんなに畏まらなくて結構ですよ」
「じゃあお言葉に甘えて、改めてよろしくね」
「はい!」
仲間が増えたお祝いにささやかな宴がしたいと旅人は言う。ポーション屋も大男も大賛成で三人は食事処に入った。運ばれてきた料理と飲み物を手に乾杯する。大男は酒をガブガブ飲んですぐに顔が赤くなっていた。ポーション屋は甘い酒を飲んでいて、旅人はジュースを飲んでいる。ポーション屋は大男に話しかける。
「旦那様に同行するきっかけは何でしたか?」
「俺か? 俺はな、ちょっと成り行きで盗賊をやろうって仲間に誘われたんだけどよ、初戦の相手が旦那でな。コテンパンにされて降参したら拾われたんだよ。けどまあ、何と言うか心意気に惹かれてな。コイツはとんでもねぇビッグになる男だって俺の勘が言ってんだ。だからついてきた」
「やっぱり旦那様には人並外れたカリスマ性のようなものを感じますよね」
「そうそう。しかも旦那はスゲー剣の達人なんだぜ。怒らせたらあのとんでもない剣捌きで瞬殺だからな。気をつけろよ」
「ふふふっ。何か旦那様を怒らせたんですか?」
「俺じゃねえよ。俺はちょーっと剣を交えただけだぜ?」
和やかな時間を過ごしてしばらくするとポーション屋は一度お手洗いに席を立った。大男が旅人に話しかける。
「花があるってのはいいもんっすね」
「そうだね」
「やっぱあの娘をパーティに入れたってことは気があるってことなんすよね?」
「ん? 気っていうのは?」
「はは〜。とぼけないでくださいよ。ああいう子がタイプなんすよね?」
「タイプ? まあ、彼女と魔法の話をするのはとても楽しいよ。魔法の話なら夜通し話したいな」
「へへっ、ってことはやっぱ恋っすね」
「恋……?」
旅人が数秒真顔になって考えてから何かに気づいた。
「はっ! これが恋!?」
大男は少し呆れる。
「え? 何すかその乙女みたいな反応」
一方旅人は興奮気味に立ち上がって言う。
「そうか、これが恋……! 気づかせてくれてありがとう。今すぐにでもこの気持ちを伝えないと」
「いやいや、便所から戻ってきていきなり告白は変っすよ。こういうのは雰囲気が大事なんすよ、旦那」
「そっか。そうだね」
旅人は落ち着いて席に座る。大男は呆れながらも旅人に聞く。
「てか魔王なら昔は妻子とかいたんじゃないんすか? どうやって結婚したんすか?」
「えっと……それは……」
大男は旅人の回答を待つが返事がない。
「お見合いとか、政略結婚みたいなやつっすかね?」
大男が助け舟を出しても返事がない。よく見ると旅人はどこか五千光年先でも見ているような目をしてフリーズしている。
「ん?」
大男が旅人の目の前で手を振ってみるが反応がない。
「旦那? おーい、旦那!」
大男が旅人の肩を掴んで大きく揺すってやっと旅人は気がついた。
「あ、あれ? 何の話だっけ?」
「いや……何でもないっす。それより、彼女に告白するならせめて二人きりの時がいいっすよ」
「なるほど、そうだね。ありがとう」
「あとはプレゼントとかも効果的っすよ」
「それはいいね。考えておくよ」
一方その頃お手洗いを済ませたポーション屋はすぐに席に戻らずに一人喜びを噛み締めていた。
「はぁ。旦那様……素敵な人……」
こんな素敵な人と一緒に旅ができるなんて、これほど幸せなことがあるだろうか。ましてや女神様の玉座跡を目指していて魔法が好きだなんて、これ以上の運命的な出会いはきっとないだろう。旦那様には帰りを待つ恋人はいるのだろうか。こんなに素敵な人が独り身なんて信じがたい。でももしもそうだとしたら私が一緒になってもいいんだろうか──。そんな妄想を一人膨らませるポーション屋だったが、一度深呼吸をして平静を装い、席に戻った。
ひとしきり楽しく話して満足した三人は宿に戻ってゆっくり休んだ。
翌朝、三人は次の街へ出発する。
その頃、とある立派な教会の扉が開いてローブを着た者が旅荷を持って出てきた。ローブのフードを深く被ったその者の胸には、まるで発光しているかのような神々しい輝きを放つ石のペンダントが揺れている。
「それでは、少し留守にします」
そう言ってその者は教会を後にした。
三話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
小説の執筆が初心者すぎて小説の書き方のルールを調べた時に出てきた「!」や「?」の後に文字が来る時は空白を入れるとか、「…」は二つ付けると書いてましたが、何故それが読みやすいと感じるのかという理屈までは理解出来ずにとりあえず先人がそう言ってるんだからそうなんだろうよと思って訳もわからずやっています。この物語を書き終える頃にはその感覚を肌で理解できるようになってるといいですが。
ところで、この物語に出てくる登場人物たちは固有名詞が無いのは何故なのかという質問が来そうな気がしてきたのでお答えします。作者のネーミングセンスが絶望的に無いからです。作者はゲームが大好きですが、ゲームを初めてプレイする時に主人公の名前を入力する画面が出ることがあると思います。私はあの画面で2,3時間から半日悩むことが多いです。下手すると数日悩みます。そんなところで躓いてゲームが始められないという経験が多いので、いざ小説を書こうと思った時にも同じ現象が起こりました。ゲームでは固定のユーザーネームを決めることで解決しましたが、ここではそうはいきません。しかも登場人物が増えれば増えただけの名前を考えなくてはなりません。流石に何か決めなければと思い悩み考えること数年、ついにその解決策を思いつきました。それがこの「名前を付けない」という結論です。もしもキャラクターたちに名前を付けたいなら読んだ人が勝手に名前を代入して読んでもらえればいいんじゃないかと考えてやっと物語を書き始めることができました。なのでこの物語には固有名詞はほぼ出てきません。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




