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第一話 終わる世界で、魔法の話を

初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれる予定です。念の為R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。

この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。

「その魔導書を売ってくれませんか?」

魔法が廃れたこの時代にそんなことを言う人を初めて見た。露店の娘はそう不思議に思った。


話しかけたのは若い旅人の男だった。店番の暇つぶしに魔導書を読んでいた露店の娘の傍には他にも魔導書が数冊積んである。露店の娘は答える。

「これは売り物じゃありません」

「それは失礼しました。大切になさってください」

旅人は笑顔でそう言った。

店番の娘はすかさず商売屋の顔に戻って言う。

「ところで、ポーションはいりませんか?」

「すみません。ポーションはあまり効かない体質なんですよ」

「そうでしたか」

しかしポーション屋の娘は気づく。

「あの、もしかして魔法は好きですか?」

旅人は笑顔で答える。

「はい。魔法は大好きですよ」

「それなら、今からお茶しませんか? その間だけならこの本をお貸しします」

「いいですね。ぜひお借りしたいです」

「分かりました。じゃあ、片付けるので少し待っててください」

ポーション屋の娘は急いで露店に並べていた品をしまい始めた。

旅人は心配そうに聞く。

「こんなに早く店を閉めてしまっていいんですか?」

「いいんです。どうせお客さんなんてそんなに来ませんから」


二人は近くの喫茶店でお茶を飲みながら持っている本を見せ合っていた。

ポーション屋は目を輝かせて言う。

「すごいですね。こんなに魔法に詳しい人とお話しできるなんて夢みたいです」

「こちらこそ、こんな時代に魔法の話ができるなんて奇跡ですよ」

「ええ。私が生まれる前に魔王がこの世界から魔法の力を奪って消えてしまったせいで、私は生まれてから一度も本物の魔法を見たことがないんです。一度でいいから本物の魔法を見てみたいものですね」

「……そうですね。そういえば、魔王は崩れた女神の城の下敷きになって行方不明だそうですが、魔王は死んだと思いますか?」

「どうでしょうね。世界から魔法の力が失われたから魔王の不死身の力も失われて死んだんじゃないかって噂はよく聞きます。でも、もし魔王がまだ生きてたら私の特製毒ポーションを味わってもらおうと思います」

「あははっ。それはいいですね。きっと魔王もイチコロですよ」


二人が仲良く話しているのを少し離れたところからこっそり見ている大男がいた。

「ふむ。痩せ型で肉付きはあまり良くない。俺のタイプじゃないな。旦那はああいう子がタイプなのか」

大男は小声で独り言を呟いた。


するとポーション屋と仲良く話していた旅人が大男の存在に気づいて手を振った。

大男は気づかれて一瞬慌てるが、すぐに二人の前に出てきた。そして大男は申し訳なさそうに言う。

「すいません、旦那。邪魔するつもりはなかったんすよ」

「いいよいいよ。そんなに隠れることないのに」

ポーション屋は大男に会釈する。大男もそれに返す。そして大男は旅人に言う。

「えっと……ナンパっすか」

「あははっ。違うよ。むしろ誘われたのはこっちの方」

ポーション屋は少し恥ずかしそうにしながらも言う。

「あの、旅人さんはとても品が良くて言葉遣いも丁寧で、眷属をお連れしているということはひょっとして貴族の出身ではないでしょうか」

「お目が高いですね。やっぱり魔導書の文字が読めるだけの学があるとお見受けします。しかし残念ながら僕のいた国は滅亡してこの通りすっかり没落してしまいまして、今はただの流浪人です」

旅人はぼろぼろのマントを揺すって見せた。

大男はぼそっと言う。

「俺はたまたま旦那に拾われて命拾いしただけで、眷属なんて大層なもんじゃねえよ。せいぜい荷物持ちってところだ」

「そうなのですか? とてもご主人を大切にしておられるように見えました」

「そうか?」

大男は困惑した様子で頭を掻いた。


「ところでお二人はどちらに向かって旅をされているのですか?」

「旧女神城跡地です」

旅人が答えると、ポーション屋は目を輝かせた。

「もしかして、お二人も女神様を信仰なさっているのですか?」

すると大男はバツが悪そうに旅人の顔色をうかがった。旅人の表情は変わらず笑顔だった。

「いいえ。特に何も信仰していません」

旅人がそう答えると大男も続けて答える。

「俺も。別に何も信仰してない。あんたは女神を信じてるのか?」

「はい! 我が家は魔王のせいで家計が火の車だった時に女神様の教会に助けていただいたので女神様を信仰しております。毎日女神様に『魔法を見れる日が来ますように』とお祈りしております」

旅人は言う。

「そうなんですね。僕は観光で旧女神城跡地の謎のミイラを見に行こうと思ってるんですよ」

「謎のミイラって、女神様の玉座跡の前で見つかった遺体のことですか?」

「そうです。あの地は長らく魔物に支配されていて人の遺体なんて跡形も残っていないのに、あの遺体だけは数千年前から全身がほぼ残っていて女神の加護を受けたに違いないって噂されて御利益があるとされているんですよ」

「そうでしたか。興味は人それぞれですね。私だったら女神様の玉座跡の方が見てみたいです。そうだ。私もお二人の旅にご一緒してもよろしいですか?」

「いいですね。仲間は多い方が旅が楽しくなりそうです」

大男は驚いて少し焦った様子で旅人の方を見た。

「えっ、ちょっと……一旦相談タイムいいっすか?」

ポーション屋はどうぞと言って大男は旅人を掴んで他の離れた席に連れて行く。そして小声で話す。

「だ、旦那、あの娘ヤバいっすよ。旦那の正体が魔王だってバレたら寝首かかれません?」

「大丈夫だよ。僕は不死身だから」

「ええ……俺にすぐバレたみたいにあの娘にもすぐバレたらどうするんすか?」

「バレたところでどうしようもないよ。お互いにね」

「そうっすか……わかりやした。旦那が選んだ女に文句は言わねぇっすよ」

二人は元の席に戻る。そして旅人はポーション屋に言う。

「お待たせしてすみません」

「いえ、こちらこそ突然の申し出なのに真剣に考えてくださってありがたい限りです。それで、結論は出ましたか?」


二話へ続く

ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。


先月は謎の風邪をひき、先日は作りたてのXアカウントが一時凍結され、クレベースがひょうざんおろしを外し、今はギックリ腰になりましたが、これから一生懸命この物語の続きを書いていこうと思っています。

まだまだ小説の執筆は完全に初心者です。小説を書くときのルールくらいは少し調べてから書き始めましたが、いかんせん小説を読んでいたのは中高生の頃までなのでさほどの経験値もありません。それでも暇さえあれば頭の中で物語を考えるのが好きでやめられず、いつかどこかで形にしてみたいと思っていてやっと筆を取り始めました。

この物語はファンタジーな異世界で恋愛を軸に書いていこうと思っています。不定期の更新になりそうですが何かしら見える形で応援していただければギックリ腰くらいは治ると思うので応援よろしくお願いします。それでは次回もお楽しみにお待ちください!

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