ちゃんと仕事もしてます
「はい、もしもし」
部屋に入ってから電話を取る。
『お疲れ様です、大山です。
今お時間大丈夫ですか?』
電話の相手、俺の担当編集者の“大山 留奈”さんだ。
「はい、大丈夫です」
『今回の打ち合わせ日時についてなのですが、何時が宜しいでしょうか?』
「基本的に家に居ますので、何時でも大丈夫ですよ。
なんでしたら、明日でも大丈夫ですし」
『わかりました。
では、そうですね。
明日では急すぎるので、その次の月曜日では如何でしょうか?』
「わかりました。
ちょっと、例のこの先の展開の事で相談したいことあったので宜しくお願いします」
例の2択、まだ迷っていたのだ。
どちらの話もそれなりに書き進めてあるので、相談しようと思ってたのだ。
一応、大山さんには悩んでること、両方書いていることは伝えてあったが、あくまでメールで伝えたのみで直接会って話はしてなかった。
『わかりました。
私の意見で宜しければ』
「いやいや、大山さん以外に適任居ませんので」
賞に応募した時の審査員の1人で、俺の作品を気に入ってくれ、コミカライズやアニメ化を強く推してくれた、言わば恩人である。
今までも、悩んだ時は相談して、結果作品は一定以上の評価を受けている。
困った時の大山様だ。
電話を終えキッチンに戻ると、希望さんが洗い物をしてくれていた。
何だか楽しそうな表情のように見えるのは、俺の願望のせいなのかもしれないが。
しかし、俺の部屋で希望さんが洗い物してくれてるなんて、これはもう同棲カップルか新婚夫婦かだろう!
あれ? 前にも似たようなこと思ったことある記憶が・・・。
「スミマセン。
洗い物してもらったみたいで。」
近づき声を掛ける。
「お疲れ様です。
いつも美味しいものご馳走になってますので、これくらいさせて欲しいです」
「ありがとうございます」
「お仕事の方は大丈夫なのですか?」
日曜日に、仕事の電話がかかってきたら、何かトラブルがあったと思うのが普通か。
「いえ、在宅ワークなので、たまには直接会って打ち合わせをしないとなので、都合の良い日時を聞かれただけなので」
希望さんは、なるほどと言った感じで頷く。
「そうなんですね。
在宅だと、意思疎通大変そうですもんね。
何かあっても、すぐに話出来るとも限らないですからね」
「そうなんですよ。
取り敢えず、メッセージなんかで進捗知らせたり、書類データ送ったりはしてるんですけど、やっぱり直接会うのとは違いますからね」
♪〜〜♪〜♪〜
またスマホが鳴りだす。
珍しい事もあるもんだ。
発信者を見ると瑠璃華からだった。
「お忙しそうですね」
「いや、今度は瑠璃華からです」
希望さんに電話の相手を伝え、今度はその場で取る。
『お兄ちゃん。
瑠璃華だけど、今大丈夫?』




