第28幕
「仕方ない、こちらも奥の手を出すしかないようだな。スティーン!あいつらを解き放つ用意を!」
僕は今考えられるその狼のモンスターとやらを撃退する一番良い方法の準備をするようにスティーンに伝えた。
だが、やはり返ってくるのは反対意見だけ。
「正気か!?"あいつら"は確かにこの会場が襲われた時の緊急事態用に一応、捕獲はしてきたが怒り狂っていて自我がねぇ。
客やスタッフにさえ被害がでる可能性すらある。
危なすぎんだろ!」
その意見を聞いて僕は久しぶりに声を荒げ、スティーンをつき飛ばす。
「だから、今がその緊急事態だって理解できねぇのか?
この月一の奴隷競りが失敗に終わったらあのパーティリーダーを怒らせちまうだろうが!
もっと考えて発言しろ!」
そう、あの人は非常に短期な性格で人の失敗を許さない厳格さも持っている。
もし失敗なんかしようものなら…考えるだけで恐ろしい。
…なんとかバイヤー達に気づかれることなく、この状況を終息させねば。
スティーンは僕の顔を一瞥して舌打ちだけを残して消えていった。
「こちらの戦力は警備兵1000人に"あいつら"がいる。そんな狼のモンスター1匹ごときに引けをとるはずがない」
「うーん。結局あのダンジョンから連れてきたモンスターの数は7500体かぁ。
この兵力であのアレクを止められるかな?」
僕は竜の背に跨り、その後ろをまるで押し寄せる波のごとくズラズラと付いてくるモンスター達をみながらそう不安を呟く。やはり一度殺されているということもあり、幾ら仲間が多いとはいえ不安がよぎるんだよね。
さて、ここはフルのいる場所からおよそ2キロほど離れていると思われる、たくさんの岩がむき出しになっている砕石場の跡地のような場所。普段であれば絶対に人が訪れるような場所ではないここに僕は今来ている。
『ご主人!私めに任せてください!
必ずや私が我らが軍を勝利を導きましょう。』
そう自信満々に目を輝かせて僕に言ってくるのは金ドラ君…じゃなくて、僕が先ほど命名した金豪鋼鉄竜のドレイクだ。
ちなみに、現在彼の背に乗っている理由は本人たっての希望でのこと
『あなたはご主人なのだから是非とも私の背に跨ってください』
とか嬉しそうに言ってきたからだ。
決してドレイクに対する嫌がらせなんかではない。
「だけどねドレイク?これから行く場所にいる人達は絶対に殺しちゃだめだからね?
そのあたりの制裁はバスパの街の警備隊の人たちに任せるつもりだから」
と、僕はドレイクに向かって言った。
すると、目に見えるほど分かりやすくシュンとした。
この子危な!ここで僕が注意しなきゃ多分、その奴隷売買が行われている場所にいる人全員を血祭りにあげてたかも…。
【!ご主人様、たった今あのクソッタレアレクがいると思われる場所から強力な力を要した存在が2体解き放たれたのが確認されました!
そのうちの一つは現在戦闘中のフル様の元へ向かった模様!
…そしてもう一つの存在はまっすぐこちらへむかってきています!
あとおよそ12秒後にこちらへ参る計算です!】
とサポナビさんから今報告が来た。
だけど僕は別に特に驚かなかった。
「…ありがとねサポナビさん。でもあの戦闘狂のフルの心配は全く不要だよ。
それどころか逆にあっちへ行ってしまった敵の方が心配になってるくらいだ。」
僕はドレイクの背から降り、そうサポナビさんに返答する。
「さて、一体なにがやってくるかねぇ?」
僕はある一点を凝視する。
そこは僕の前方4メートルほどの地面。
するとその直後、丁度僕がみていた地面が一瞬盛り上がったと思ったらそこから強い衝撃が上に生じて大量の砂煙が上がった。
そしてその砂煙が治ってそいつは姿を現した。
体長6メートルはあり、体の丁度真ん中を境に右側が赤色の体表で左側が青色をしており、目を真っ赤に染めた竜がそこにはいた。
●エレメンツドラゴン 状態【怒り大】
●HP 5632/5632 SP 3209/3209
●レベル 59
●スキル ????極
「うわ〜メンドくさいなぁ」
それが僕が最初にこいつをみて頭で思った正直な感想だった。
なんせエレメンツドラゴンなんて普通、こんなバスパの街周辺なんかに生息していない推奨冒険者ランク10のモンスターだよ?
だが、このモンスターは普段であるならば知能が非常に高くこちらからあからさまな攻撃をしない限り怒ることもなく、あちらから攻撃をしてくることもない。
だけど、モンスターの目が赤く染まっているということは
「暴走個体かぁ。全くあいつは一体なにをやったんだよ…。」
僕がこんなにゲンナリする理由は2つだ。
まず一つ、それはこのモンスターは体表が赤く染まっている方は溶岩並みの熱さ、青色の方は極寒の南極の氷並みの冷たさなのだ。
つまるところ、こいつとの戦闘においては素手での攻撃が封じらているハンデがついており、倒すのには時間がかかる。
そして2つ目なのだが、こちらは認識超強化のスキルを持つ僕くらいしか気づくことができないであろうことなのだが、目の前のこのエレメンツドラゴンの後方に恐らく、アレクに雇われたのであろう多数の人間が隠蔽のスキルを使ってあちこちの岩の影に隠れている等が挙げられる。
と、マイナスなことばかりが頭を駆け巡っていた時だった。
『私ノ…息子ヲカ…エセ』
…は?え、何?今もうしかしてあいつが喋ったのか!?
だっておかしな話だ。確かにエレメンツドラゴンは知能が他のモンスターと比べて非常に高いことで知られている。
しかし、人の言葉を操るなんてことは前例がない。
なんか僕、生き返ったからナゼかモンスターの言葉が分かるようになっているような…。
気のせいなのかな。
そんなことをぼんやりと考えていたら、エレメンツドラゴンが僕に向けて口から灼熱の炎と極寒のブレスを息もつかせずほどのスピードで交互に撃ってきた。とりあえずこのままドレイクに跨ったままだと、僕はあの攻撃を躱すことができてもドレイクには被弾しそうだなぁ。一応降りておくとしよう。
凄まじい勢いで飛んでくる幾多もの蒼と紅と攻撃、およそ2000度の炎と−150度の氷のブレス。
一瞬肌をかすっただけでも人の命を奪うであろうそれらを僕は必要最低限の動きで躱して一歩一歩とエレメンツドラゴンのもとへと近づいていく。
正直普通の人からしたら生きてこの状況を乗り越えるのは絶望的なんだろうけど、認識超強化と生き返ったから動体視力が向上した僕には大した障害ではない。
それどころか止まってみえるくらいさ。
「僕はお前の事も息子の事も知らない。ただ僕の邪魔をしようというのなら容赦はしない」
自分でも驚いてしまうほどに殺気を含ませて言葉を発することができた。その証拠にあれほどの勢いで僕に遠距離ブレス攻撃をしかけてきていたエレメンツドラゴンが少しばかり怯んで攻撃をしてこなくなった。
『ご主人、あなたはユキナ様を救わねばならなく、時間がないはずだ。
ここは私が奴の相手をいたします。どうぞお先に進んでください。』
さすが長い時を生きているだけあって気が効く。
では、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。
「ならよろしく頼んだ!それと気づいていたか知らないけど、あのエレメンツドラゴンの後ろにたくさんのアレクの兵が隠れているみたいなんだよな。
だからダンジョンから連れてきたハイオークを500体ここへ助っ人として置いていこうと思う。」
このハイオーク達はドレイクの指示を聞して動くようにしておいたし、これだけ兵力がいればここは問題ないだろう。
「そうだ。そのエレメンツドラゴンも殺さないでおいてね。後で聞いてみたいことがあるから。
さて、そんじゃあいっちょユキナを救ってくるね」
僕はドレイクにそうとだけ言い残し、7000のモンスター達を引き連れてアレクの元へと再度歩みを進めた。
『おい!そこのメスエレメンツドラゴン!我の前からうせるのだ!』
『返シナサ…イ…私ノ息子ヲ』
およそ500人のアレクの部下との一戦を無傷で勝利し、アレクの元へユキナを取り戻すために向かっていたフル。
しかし、奴隷売買が行われていると思われる砕石場跡まであと900メートルと迫った時だった。
地面が急に盛り上がったとおもったらいきなりこやつが姿を現したのだった。
さらに、暴走個体だというオマケつき。
『我は貴様の息子など知らんぞ!
これで最後だ。我の前から失せよ!』
我はこやつが逃げ出せる最後のチャンスを与えた。
しかし、返ってきたのは言葉での返事ではなくブレスの攻撃。
我はその攻撃を避け静かに怒りを燃やした。
『なるほど、貴様は我のユキナ奪還の邪魔をしようというのだな。』
両前足に生き返る前まででは出すことができなかったであろうパワーアップした超高電圧のプラズマを纏わせる。
『エレメンツドラゴンの後ろに隠れている人間達もろとも相手にしてやる!
かかってくるのだ!』
こうして我とメスのエレメンツドラゴンとの戦闘が始まったのであった。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 10061/10061 SP 7321/8212
●レベル 72
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減 プラズマフレッグ
瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効
王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化
●特殊スキル 学びLV2
●テイムモンスター 子神狼
●名前 神狼 フル
●HP 10061/10061 SP7321/8212
●レベル85
●スキル プラズマフレッグ ????
???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮




