第25幕
…ユキナは果たしてうまく逃げ出すことはできたのだろうか?
心配だ。彼女は変なところが不器用だし。
…お父さんには今までたくさんの迷惑をかけたのに何も言えないまま死んじゃった。
…そうだ。天国ではお母さんに会えるかな?どんな人だったのか詳しく知らないから、あっちで会えたならたくさん話を聞かせてもらおう。
「でも、やっぱまだ死にたくはなかったなぁ。」
ここは夢なのか天国なのかは分からない。
上や下さえすら分からない真っ暗な空間だが僕の姿ははっきりと見える。
目を覚ますとそんな不思議な無重力な場所に僕は浮かんでいた。
とても静かで何回か見たことのあるあの夢の中にでもいるみたいだ。
だが、その静寂は唐突に終わりを告げる。
【マスターにはまだ生きていてもらいますよ!!】
頭に大音量で入ってくる生き生きとした声。
これってもしかして…
「サポナビさん!?」
僕は頭の中で聞き返す。すると
【はい!!私はマスターにサポナビという素敵な名前をつけさせていただいたサポートシステムです!】
即答ですね。てかほんとに元気ですね。この子こんな喋り方だったっけか?
【聞きたいことは色々とあるかとは思いますけれど、先ずは手っ取り早くあなたに生き返ってもらいますよ!】
「ええええ!?ちょ…唐突な。」
【問答無用です!!】
「いやちょっとまっ……」
その言葉を最後に僕の意識はまた途切れた。
近くで水の流れる音がよく聞こえる。
僕はうっすらと目を開けると青白い光が一気に目に入ってきた。
「うぉ眩し!?」
あわててもう一度目を閉じてから再度、その膨大な光に少しずつ目を慣らすようにゆっくりと開いていく。
「うーんと?現状を察するに、壁から青白い光が出てるのを見る限りだとここはメビウスのダンジョン内だな。」
僕は仰向け状態から上半身だけを起こして周りをみながらそのように考察する。
そして、その際に色々と違和感を覚えた。
「はて?僕ってこんなに体が筋肉質だったっけか?」
そう、なんか肌寒いと思ったら上半身が裸で何も着ていない状態な訳ですよ。で、なぜかやけに生前よりもこの体はさらに引き締まっているんだよね。
…てかこのダンジョンの中は平均気温がマイナス5度って聞いたよ。なんで肌寒いで済んでるんだ。
この時エデルは筋肉質になった他にも他の部位にも明らかにかつ目に見える形で身体に変化が生じていたのだが鈍さが売りの彼にはどうにも気がつかないようで。
【お目覚めになりましたか!マスター!】
サポナビさんの元気な声が頭に響き渡る。てか元気良すぎ!うるさすぎ!ちょい声のボリュームおとして!
【まずは、簡単に現状を説明しますね。ここは、メビウスのダンジョン内です。現在私たちが絶賛滞在しているのは48階層のセーフティフロアです。】
ふむふむ、確かに48階層は真ん中に小川が流れている特殊フロアだからさっきのは水の音が聞こえたんだな。
「でも、なんで僕は48階層にいるの?確か50階層でアレクに殺されたはずだよ僕は」
するとサポナビさん、自慢げにとんでもないことを喋りだした。
【確かにあの憎たらしい長身男に私の愛しのマスターは一度殺されてしまいました。しかし、その際に生じた多大なショックにより私ことサポートシステムが進化を遂げて自我を持つようになりました。私はあなたにこのまま死んでほしくはなかったので、より強靭でかつマスターの職業であるモンスターテイマーに合う身体をこの安全な48階層へと瞬間移動で移動させてその肉体に改造を施しました。】
「おぉそうなのか。なんかご苦労様です…」
とにかく僕のために一生懸命色々とやってくれたことは伝わった。
あ!そうだ!
「あのさ、2つ聞きたいことがあるんだけど今ってユキナが連れていかれてからどのくらい経った?それとフルの姿が見当たらないんだけど…どこ?」
生き返るという超常現象よりもこっちのほうが優先度が上だ!
【ユキナ様はあの憎たらしいコンチクショウ男に連れておよそ13時間前にダンジョンを後にしたようです。】
およそ半日か…。間に合う…いや間に合わせてやる。僕の家族に手を出したらどうなるかを教えてやる。
「それならフルは?」
僕は聞く。すると途端にサポナビさんが黙り込む。
嘘だろ…まさか
【はい、おそらく察しているとは思いますが…
フル様も肉体改造は成功し、マスターが目覚める2時間ほど前に意識が戻られ、ユキナ様を救うためにこのダンジョンの最下層まで潜って経験を積むと意気揚々と私に言い残して行ってしまいました。
現在はですね…どうやら最下層の100階層におります】
「おーい!それは予想がつかんわ!てっきりフルは生き返らなかったと心配したわ!」
僕の生き返って一発目のツッコミはとてもデカイものとなった。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 10061/10061 SP 8201/8212
●レベル 72
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減 プラズマフレッグ
瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効
王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化
●特殊スキル 学びLV2
●テイムモンスター 子神狼
●名前 神狼 フル
●HP 10061/10061 SP8201/8212
●レベル85
●スキル プラズマフレッグ ????
???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮
〜メビウス99階層〜
『カラカラカラカラ…』
「邪魔すんなよまったく。」
僕は前方から鋭利な槍で乱れ突きをしてくるクラッチスケルトンと呼ばれているモンスターを素手で槍ごとぶん殴って身体もろとも粉々にする。
いやー全く恐れいった。なんかここまでくると一度死んでみるものだなとか思っちゃうわ。
なんたってステータスの上がり方がおかしいよね。さらに、スキル欄に目を移してみると状態異常無効とかいうチートスキルが習得されてんだよ。これだけでもすごいのにサポナビさん曰く全く使わない無駄スキルの消去までやってくれていたらしい。
よく考えてみると悲観耐性とかいらないもんね。
はいさて、みなさん気づいているかもしれませんが実は僕、未だ先に行ったフルを除いて誰も到達できていないフロアまで攻略しました。
48階層からおよそ1時間くらいかなぁ?とにかくそれくらいの時間でサポナビさんとお話しをしながら素手のみでここまで来た。
50階層でアレクの攻撃により落としていた剣と胸当てはさっきしっかり回収できたし、とりあえず一安心。
そうそう、ここまでの道程で使ったスキルは思い返してみるとなんと認識超強化のみ。僕の死後のこの身体はどうやらスピードもパワーも以前より3倍は上がっているおかげで殴る、蹴るだけで僕の前に出て来たモンスターを半殺しにできた。
なぜ半殺しかって?それは後でわかるさ。
てかこの基本ステータスで与ダメージ倍増と剣を使ったら果たしてどうなるんだろうね?
そんな事をぼんやりと考えていたら、最下層のボス部屋への扉の前についていた。
【マスターが死後、カッコよく変化なさったようにフル様もとても凛々しく変貌を遂げましたよ。きっとこの部屋の中にフル様はいます。早く駆けつけてあげましょう】
あの一件からボス部屋に入るという行為に嫌悪感を覚えていた僕だったが、サポナビさんに言葉で押されて扉に手をかけた。
大丈夫だ。今の僕ならもう誰にも負ける気がしない。
それに、早くフルにも会ってみたい。
「さぁ、行こう」
『ワタシガヤブレルヒガクルトハ…ナ』
『何をいうか。なかなかにお主は手強い相手であったぞ!』
いや何これ、とりあえずボス部屋へと足を踏み入れて見たはいいけどその中はなんだかすごいことになってたよ。
体長が7メートルはあろうかという神々しいほどの金色のドラゴンをこれまたデカい体長2メートルほどの赤いオオカミが倒している光景がそこにはあった。
ドラゴンの方はまだ死んではいないようだけどウロコとかがはがれかかっているところをみるともはや満身創痍だな。対してもう片っぽの赤い毛皮のオオカミはどうやら見る限りだと傷一つ負っていないようだ。
「あのサポナビさんや、フルはもう別のフロアに移動したのかね?僕の目には神獣が殺し合いをしている光景しか見えないんだけど。
」
僕はサポナビさんに確認をとる。だが【その殺し合いをしていた神獣こそフル】だとツッコまれた。
いや、嘘やん。
そして次の瞬間、フルに似たような似ていないようなあのデカオオカミと目があった。
その刹那、オオカミは瞬間移動で僕のすぐ前まで瞬間移動を使って現れた。
オオカミは右目が青色で、左目が赤色のどちらもキレイなオッドアイで、その目には涙が浮かんでいた。
『まったく心配をかけさせるでないぞ!罰として後でモフモフを我にするのだ!』
うん間違いない。これはフルだ!
「分かった分かった!ユキナを取り戻したら嫌ってほどにモフモフをしてやる!覚悟しとけよ!」
僕ら家族はこうして一度死んでしまったが、見事に再開を果たした。
次回更新予定
2018/3/29




