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第2章-1

こよみは自宅に帰ってくるなり、自室に向かった。

本来なら、台所に行き、晩御飯の支度をしている母親の手伝いや、味見を理由でおかずのつまみ食いとかを行うのだが、今日はそういった気分にはなれなかった。

自室に入ったこよみは、制服のまま自分のベッドに倒れこんだ。

そして、軽く首を動かすと、それに釣られて視界も動いた。

その結果、ベッドの近くに置かれた小さな円形のテーブルが視界に入った。

更には、その上に置かれている小物や置時計もが見えた。

そして、その置時計が記している時間は、午後七時を少し過ぎたところだった。

「……」

こよみは深くベッドの上に置かれている大きめな熊のぬいぐるみに自分の顔を強く埋めた。

強く――

あの時に貰ったぬいぐるみに――

こよみの涙が侵食して行った。

こよみの嗚咽がそれとの隙間から漏れながら…………


置時計の針は止まることなく……


遙は自宅に帰ってくるなり、自室に向かった。

寧ろ、それが本来の行動である為、問題として挙げられることはなかった。

「……」

そして、制服を着たまま、ベッドに倒れこんだ。

「……」

今、彼の中にあるもの……それは悔みと言う名の後悔。

そして…………自分の愚かさ。

『あれで正しかったのか?』と自問を問いかけても返ってくる自答は沈黙もしくは回答なし。

「……こよみ……」

あの時、自分のどこにそれがあったというのか?

本当に自分が『こよみ』に飽きを感じていたと言うのか?

それでも、その自問に返ってくるものは何もなかった。

遙は、頭上に置かれている枕を引き寄せ、それに顔を強く埋めた。

そして――それとの僅かな隙間から彼の嗚咽が漏れた。

悲しみに満ちた、それ。

悔しさに満ちた、それ。


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