81 全馬、競争中止です!
日曜日になった。
JRAは予告通り、京都競馬は開催。
メインレースは、重賞京都大賞典。
このレース中に事故は起きた。
アナウンサーが各馬の順位を説明していた。
先頭のオグラアン、十五頭を引き連れ淀の坂に差し掛かりました。
足は衰えません。
他馬を引き離しにかかります。
追うハクチョウザまで十馬身、このまま逃げ切れるか。
続いてヤマザキノラン。外からウジチャチャチャ。
少し遅れてレイチェルノキス、チョットマッテ、並んでいます。
ここまでが先団。
おっと、後方のライラノイカリ、ジョッキー落馬。
どうしたのでしょう。
後続グループは前から、
と、ここまで言った時だった。
ドォォォォーーン!
地響きとともに、池の水が吹き上がった。
池の中央から、続いて右から左から。
ドドドォォォォーーン!
とてつもない水柱が立った。
その高さ、スタンドをはるかに超えている。
水しぶきがスタンドまで降り注ぐ。
アナウンサーが絶叫している。
これは!
これは!
どういうことでしょう!
各馬、総崩れ!
ジョッキー落馬、続出!
各馬、バラバラの方向に突進しています!
逃げまどっています!
ラチに激突して倒れています!
もう競争ではありません!
競争中止です!
全馬、競争中止です!
風にあおられ、スタンドまで降り注いだ水。
いつもの席に陣取っていたサークルのメンバーも、したたかに濡れた。
呆然と立ち尽くしている人、逃げまどう人。
なぜか、馬場の方へ駆け寄っている人もいる。
これは演出などではない。
昨日午後の競馬が緊急中止となったのは、これか。
コースの不具合。
コースの凸凹、この水柱。
どう関係しているのかわからないが、とんでもないことが起きている。
いずれにしろ、この惨状はあまりにも。
見届けねば。
馬は!
立っている馬は二頭だけ。狂ったように走り回っている。
他の馬は、ラチに激突し、倒れている。
足をばたつかせている馬もいる。
ジョッキーは全員が投げ出され、コース中に倒れている。
たちまち水柱は低くなり、そして消えた。
池は、元の水面に戻った。
波立ってはいる。
水位はやたらと低い。
どうなってるんだ!
なにが起きてるんだ!
ハッと我にかえった。
皆に怪我はないか。
みんな、いるか。
ガリ、ジン、スズカ、ブルーとピンクの不安げな顔……。
アイボリーは!
ミカンは!
ンラナーラ!
どこにいる!
退避したのか?
濡れないところへ。
いつ!
ジンが叫んだ。
「みんな! ひとまずスタンド内に!」
アナウンサーはもう押し黙ったまま。
場内アナウンスもない。
濡れた階段を駆け下りて、スタンド建物内へ。
が、そこにもアイボリー、ミカン、ンラナーラの姿がない。
ジンがうろたえている。
「アイボリー! ミカーーン! ンラナーラ!」
「探さなきゃ!」
三階か一階に向かったのだろうか。
あの時、二階屋外スタンドで、学生たちを前列にし、ガリと並んで座っていた。
思い出せ。
アイボリーらは、どこに座っていた。
どうしていた!
俺の前に、通路側からスズカ、ブルー、ピンク、ジン。
その前に、ンラナーラ、ミカン、アイボリー、の順だったはず。
座っていたか? 立ち上がっていたか!
階段を下って行ったか? あるいは登って行ったか?




