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79 バレた? どうしよ 怒られる

「なに?」

「ランと知り合いか?」

「バレた? どうしよ。怒られるラ」


 怒られる?


「バレバレだ。あれか? ランと同類の」

「やだ、言わない、で」


 ランのやつ。

 お守りでは飽き足らず、監視要員まで送り込んでいやがったか。

 さすがにはっきりさせておかねばならんな。

 ランにも、こいつにも。


 と、ンラナーラの顔が、チラっと三毛猫の顔と見えた。


 なるほど。

 ランの下僕といったところか。

 猫妖怪軍団。

 狸やカワウソでなかっただけ、良しとしよう。



 いやな気分ではなかった。

 むしろ、微笑ましさがこみあげてくる。



「で、ンラナーラ。俺を見ていて、報告してるんだろ。ランに」

「えっ。え?」

「そうだろ?」

「え? あ、、、」

「だろ?」

「あ、な、なぜ、それを」

「あのなあ」


 いたってシンプル思考のやつだ。

 妖怪らしい。


「ランに言っていいな。こんな奴が来てるって。それとも、知らん顔、しておこうか?」

「ここは何卒、知らん顔で」

「わかった。じゃ、俺の言うこと、聞けよ」

「はい。ミリッサ、あ、先生、いえ、ミリッサ殿」

「間違っても、今後、ミリッサ殿とは言うなよ」

「心得ましてございまする」

「その言い方も。あくまで、物静かなンラナーラで通せよ」

「ハイハーイ」


 変わり身の早いやつだ。

 

「何なりと。ミリッサの、言うこと、なんでも、聞く」

「今はない。待て、ランが今どうしているか、俺に報告しろ」

「ええっ、それ、ダブルスパイ!」


 面白いやつだ。

 そんな言葉まで知っていやがる。


「何言ってるんだ。ランに見張られて、俺は迷惑してるんだ。嫌なら、ランにンラナーラを引き取らせろ、って言うぞ」

「い、いや。わかりました。ミャー・ラン殿のこと、逐次、お知らせいたしまする」

「ラン、って言えよ」


 よし、これでいい。

 ランが何してるのか、これでわかる。

 一安心。


 やれやれ、それにしても、俺、何、考えてるんだ。

 ランのことを知りたいとは。


 ハ!

 ま、あれだ。

 学生にいつも授業で言ってること。


 人を好きになったら、まず相手のことをもっと知りたくなる。次に自分のことをもっと知ってほしくなる。

 そういうことだ。

 相手は学生。しかも、妖怪七人衆。武闘派巨大黒豹。

 知りたいに決まっている。

 好きになったら、という点はさておき。


 ん?

 さておき、なのか?

 まあ、いい。

 フフ。

 今日は大収穫だ。



「じゃ、ミリッサ。また、明日」

 と、妖ンラナーラは、元来た道を引き返していく。


 そうか、あいつ、どうしても俺と話したかったんだな。

 案外、自分は妖怪で監視役だと、言っておきたかったのかも。

 フフフ。

 いいじゃないか。

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