6 今、考えなくてもいいことじゃない?
三四郎経由で外の状況は聞いた。
魔獣封じは順調に進んでいるようだ。
このまま進めば、明け方ごろには完了するだろう、とのことだった。
町の被害も大したことはない。
大規模な停電は起きているが、火災も起きてなければ、大きな地震もない。
大気の汚染も水質の汚染もないはず。
あくまで、このまま順調に進めば。
だが、相手はまともな心を持たない巨大な古代魔獣。
予断は禁物。
「今日中に命令解除、明日には人が戻ってくる、てなればいいけど」
「そうね。でも、私たちはそれからが本番」
「コアYDの復旧か」
「そう。人力ではどうにもならないと思う。また、お館様に助力を依頼するしかないのよね」
「だろうな」
「どんな見返りを要求されるか、恐ろしすぎて」
「そうかな。案外、寛大だったりして」
「かもしれないけど、妖怪、加減ってこと、知らないから」
「まあな」
「当面、コアUDに機能を集約する方向でも検討してるけどね。もともと、こういう時のための二拠点制なんだし」
見返りか。
金銭の要求ではないはず。
ハルニナの命を差しだせ、という類のものでもないはず。
「予想もつかないから、困るのよねえ」
「でも、こうは言えないか。そもそも魔獣が覚醒したのは妖怪の怠慢。そっちのせいでこんなことになった。損害賠償だ」
「それ、ミリッサ、お館様に言える?」
「僕は、言えないな」
「魔獣を封印してるのは、そもそも人間社会を護るため、って言い返されてますますこっちの立場は弱くなっちゃう」
「だな」
そんなことを話していても、意識はまだ、今救出し、療養所に送り出した女らに向かう。
「ハルニナ、あの連中、気にならないか?」
「考えるのは避難命令が解除されてから。で、いいんじゃない? それまで、どうせ、出られないんだから」
「そうだな……」
「安心して。療養所のスタッフ、完璧な対応するから」
「ああ、そこは全然心配してないよ」
「二人ともカニだから、その点では安心かな。手慣れてるし」
「なるほど、そうだったのか。なので療養所」
「まあね」
そういえば、あの巨大猫、あれは何だったのだろう。
あの後、あっさりどこかに行ってしまったが。
ランが仕向けた?
なぜ?
「ま、それも、今、考えなくてもいいことじゃない?」
そうだ。
今、こんなことに悩んだり、考えあぐねたりしても意味はない。
その時が来れば、あの話もこの話も、本人が話してくれるだろう。




