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5 やっぱり、ここで寝る

 もう、ミカンの離れには帰れなかった。

 深夜どころか、丑三つ時。

 フー! 今日も忙しい日になりそうだ。


「そろそろ、休ませてもらうよ。ハルニナもメイメイも、ちゃんと休めよ。休めてる?」

「大丈夫。こっちは二人三脚だから。ミリッサ、ここで寝る? それとも、うちに来る?」


 なるほど、ランの屋敷は妖怪屋敷。毛布もなければ布団もない。

 それに合戦終了となれば、妖怪連中が大挙して戻ってきて、おちおち寝てもいられなくなる。

 すぐさま祝勝会が開かれるかもしれない。

 一緒に参加して、となるのは流れからすると必定。

 妖怪連中、こっちの疲労など、お構いなし。


「そっちにお邪魔しようかな」

「よかった」



 待て。待てよ。


 天王山に顔も出さず、ハルニナのところで寝たと知っては、ランは何と言うだろう。


「もう無理だ。眠たすぎる。やっぱり、ここで寝る」

「そう? じゃ、お布団持ってこようか?」

「すまない」

「そうだ! 私たちもここで寝ていい?」

「それは……、ご自由に」




 まどろんだものの、すぐに目が覚めた。

 両隣、ハルニナとメイメイは寝息をたてている。

 服を着たまま布団に潜り込んで丸まっている。


 外は暗い。

 ここと人間界では時間の流れが異なる。

 向こうは何時ごろだろう。

 合戦は終了した頃だろうか。

 そう思うと、完全に目が覚め、覚めると同時に、ランを労いに行ってやりたくなってきた。


 まず、ハルニナを起こした。

 行こう、と誘った。

 それならメイメイも。

 すぐに出立した。




 京都と大阪の国境、天王山の山頂。

 あいだみちの口から出るなり、目を奪われた。


 山のすぐ足元、ぽっかりと真っ暗になった京都山城の地。暗い夜空に、光の柱が静かに屹立していた。


 光り輝くその柱は、京都競馬場をすっぽり包み込み、高度数千メートルに及ぶ固い金属のように揺らぎもしない。

 あの円盤、ランが足場と言ったものはどこにあるのか、光が強すぎて見えない。

 光の柱は、様々な色が渦巻き、まじりあい、うねり、華麗で、またおぞましくも見えた。

 秋の夜空に浮かぶ雲一枚一枚がその光を反射し、レインボーフィッシュの鱗のように美しく光っていた。


 木々が切り払われ、広場となった山頂で、ランはお館様と並んで、ディレクターチェアに腰かけていた。

 猫の姿ではなく、女の子の姿。

 いつもの黒ではなく、お館様と同じような白っぽい衣装。

 薄紫の髪が山裾から吹き上げる風になびいていた。


 お館様も然り。獣としての狐の姿ではない。

 二人、なぜかくつろいでいるように見えた。

 ただ、周囲には数多の妖怪たちが立ち並び、物々しい雰囲気。

 かがり火が焚かれ、彼らのシルエットや影が揺れ動く。


 その輪を抜けていくのははばかられるが、せっかくここまで来たのだ。

 ランに声を掛けずには帰れない。


「わおおっ! ミリッサ! 来てくれた! 見て見て、あれ!」

「ああ。見たよ。すごいな」

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