割切り
ジグ視点です。
リーンの死体は塵になったはずです。
翌朝
レイカさんの消耗を考え、1度村に引き返すことにした。
レイカさんはデグに背負われている。
生命力を随分吸われたらしく生きているのが不思議とミケさんは言っていた。
「だからもう謝らなくて、良いってマドウ」
レイカさんは呟いている。
不思議な癖だ。
歩くデグは真っ赤になっている。
これはレイカさんが重い訳ではないだろう。
「こんなところをスキュラに襲われたらひとたまりもない。」
ミケさんに話すと
「スキュラが2人目を欲しがらない限り大丈夫。」
と言われた。
「え?ミケさん。魔獣退治をしなくて大丈夫なんですか?」
レイカさんがデグの背中から尋ねる。
「スキュラに次の発情期が来るのは推定で15年後。」
「それに今の戦力では勝てるかおぼつかない。」
「何よりお金にならない。」
ミケさんが答える。
その後数日で、何事なく村に帰還した。
夜。
帰還した夜に村長宅に報告に出向いた。
[至高神の剣]が帰還しない理由を巡回報告ついでに伝える為に。
村長は報告を聞き、そして自分が説明したミケさんの仮説に納得していた。
下腹部が爆ぜ、内臓がない遺体を見たことがあったと村長は告白した。
そして、姉の面影が残る化け物を遠目に湿原で見たことがあったとも。
「馬鹿な男共に警告しておけ。それで被害は防げるはずだ。」
「15〜20年後どうするかは、次の冒険者の仕事だろ?」
ロバートさんの言葉に村長はうなだれている。
「それに魔獣がゴブリンを間引くからゴブリンが近づかない面もある。悪い事ばかりじゃないさ。」
それから数回の巡回任務を終え[五芒星]の初仕事は無事完了した。
村を出る時はレイカさんを見送る村人とデグを見送る子供達が手を振ってくれた。
「割り切れないって顔してるのねジグ。」
いつの間にか隣りを歩く事が多くなったミケさんが囁く。
かつて冒険者の響きに英雄的なスリリングな日々を夢想した事もあった。
これが現実か……。
己の未熟さを噛み締めていた。
黒髪と金髪と黒髪の親とそのコピー。
次は各地区に現れるかもです。
私の黒歴史がまた1ページ。




