遭遇
ジグ視点です。
二足歩行で道具使える相手は強敵です。
休憩により、少女も回復した様だ。
ゴブリンの死体が放つ悪臭に当てられたのかもしれない。
休憩前は気分悪そうにしていた。
竜の島では、鈴木家は相当な名家なのだろうか?
少女の反応を見ると、明らかに世間知らずなのがわかる。
それとも、やはり転生者なのだろうか?
しかし、転生者ならもっと何かしら、持っていそうなものだ。
転生者の業績が美化されているにしても。
そろそろ薬草の森の猟師小屋が、見えてくるところまで来た。
弟に警戒を促す。
ゴブリンの移住が始まっていたら、6体では済まなくなる。
風に乗り、微かに悪臭が漂ってきた。
先程嗅いだのと同じ。血と撒き散らされた内臓の臭い。
さらに近づくとゴブリンの死体があった。頭は叩き潰され、胴や手足は何かに喰いちぎられている。
まわりを、さらに見ると死体は1体ではない。
少女はまた気分が悪くなったのか、顔色が真っ青になっている。
気合の声とも、咆哮とも聞こえる音が響いた。
森の茂みから、棍棒を手に巨体が飛び出してくる。
待ち伏せされていた。
飛び出してきたそれはオーガだった。
弟は体格が良く、筋骨隆々。その姿を「オーガの様だ」と村人が話しているのを何度も聞いたことがある。
だが目の前のそれは、その弟の2倍近くの体躯を持つ。
弟でも両手でやっと扱える程の棍棒を片手で振り回してくる。
初撃を躱すことが出来たのは偶然でしかない。
「デグ間合いを取り、受け流せ。受け止めては叩き潰される。」
「2人で挟み込めば勝機はある!」
絶望的な戦いが始まる。
速度、持久力、瞬発力、全てが上回る相手に逃げる選択肢はない。
3人分かれて逃げれば、1人ぐらいは逃げ延びられるかもしれないが、可能性は低い。
ジグと挟み込み、少しづつでも削ってゆくのが最善。
少女だけでも逃したいが、オーガが強行突破に出たら、足留め出来るとは思えない。
何度か剣を当てているが、硬い表皮に弾かれ、大した傷になっていない。
デグも踏み込みが甘く、戦斧が軽くあたるだけ。
ただ踏み込み過ぎて、反撃をくらえば、こちらは一撃で戦闘不能だろう。
少しの間、戦いは膠着していた。
だがやがて、剣の攻撃の方が軽いとオーガに気づかれた様だ。
戦いに関してオーガは馬鹿ではない。
オーガがデグに攻勢を強める。
デグは下がりつつも、何とか凌いでいる。
こちらからの牽制が効いていない。
このままでは押し切られる!
強めの牽制の為、一歩踏み込んで剣を出した瞬間。
オーガが向き直り、棍棒を横薙ぎに振るってきた。
隙を誘ってからの反撃。
肋骨が数本まとめて砕ける音と衝撃。
弾き飛ばされ、意識が遠のいた。
ロールプレイングゲームは紳士協定が前提になってます。
最初の冒険でオーガは紳士協定違反かもしれませんが、現実はそんなものです。
私の黒歴史がまた1ページ。




