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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
人外魔境に咲く花
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B024.空談会

「ほう、それでダンジョンコアを破壊せずにそのまま逃げ帰ったと、叩き潰すのも戦いの道じゃと思うがな。」聞きなれたドワーフのおっさんの声。

「Sympaxiでもテクチャルプレイヤーが覇王軍海洋ギルドとそちらのギルド天魔で癒着をしている可能性を指摘しているコメントが出ていますね。」これは初老のオークが出す無骨な声。

「実際もう既に覇王魔王の一部はズブズブなのですが、純粋な人々という者はいるのですよ。後、カラシはそういうふうにブレなさすぎるから嫌われるんですよ。」これは透き通るような美声、だが男だ。

「深い意図は無かったので勘弁して下さい、泣く子と妹には勝てませんから。」と俺は些細な気まぐれから発展しつつある政治摩擦についての話に巻き込まれる。こっちのギルマスがやって欲しい会話なんですけど。


俺達は戦艦での激しい戦いの後にテクチャルのZerg集団に追い回されたが逃げ切る事に成功、以前戦った敵船団の方角へ逃げると見せかけて適当な小島に全員で隠れ込み奴等をやり過ごした。

ここで大きく逃げる事は出来ない、理由はこの大湖にある湖神像をせめて拝むくらいはしたいからだ。

そんな状況で『マギラ3ちゃんを救う会(仮)』から外部ツールによる連絡を受ける。


「覇王軍の海洋ギルドがガチでネレイド、マーマン、リザードマンを滅ぼして制海権を確保するつもりなのは確かみたいですが。」

「船を作るには資材が必要でしょうが、それはどこから流れているんでしょうか。エルフは協力していませんよ、森林伐採はエルフにとっては重罪ですからね。」

「あ、それワシんとこからだな。」

「ドワーフ、トロル、ハーピーの故郷の山、防竜連山でしたか、確かにあの辺りにも木材はありますが、それほど恵まれた土地だといった記憶はありません。木材はグリーンジャイアント大森林がシステム上で一番産出しますからね。」

「ワシ等は占拠はしないで山脈の西側に浸透し密猟しにいく戦力を保有しているのもある。」

「それなら亜竜のホームも潰せるのではないですか?」

「今はエンシェントエーテロイドとラットマンのピンチ種族で連合を組ませてそれを雇っている。そうなれば飛行ユニットはワシ等勢力からするともはやカモじゃよ、それに滅ぼすとアライメントポイント稼げないじゃん。」

「それとエールート、エルフの全員がお前と同じ思想だと思わない方がいいし、金になるならば敵に資源を売る勢力も大勢いる。」

「そうですか、それはエルフの中からも異端狩りをしなければなりませんね。」

「お前も大概ブレないな。」

「そうなるとカラシさんは今回は大商人プレイですか。」と俺はMMORPGをいつも別のゲームだと思って引っ掻き回す黒幕にプレイスタイルの確認を取る、事と次第ではこの人がラスボスになるのだから。

「ああ、現状は物流の調整で忙しくてレベルも上がらんわい。前作も序盤はこんな感じだったな。」

「そうですね、マギラ2で素材屋ギルドを立ち上げたのも貴方でしたね。あの仮面情報交換ギルドも貴方の仕業でしたか?」

「いや、あれは恐らく黄龍じゃろう、今更前作の話などしても仕方ないが、あれはミームの観察所だからワシなら作らん。」

「言われれば頑固者の貴方には確かに無縁そうですからね。」「信念があると言ってくれ。」

「続報、ギルド黄金のシロッコSW12基地の管理人ミズーリより。ギルド天魔の攻撃はダンジョンコア破壊目前で敵が増援を察知した為に全滅を恐れた敵は急遽撤退を決断したと断定。談合や癒着は天地湖神に誓い存在しない。お前の話を聞く限り、こいつも甘ちゃんだな。」

「甘ちゃんという評価よりも優しい嘘付きと言って下さい。事実コアの破壊をして油断をしていたら全滅は確実でしたから。」

「コアをぶっ壊してから敵の報復で全滅する、憎しみ4倍で世界をしっちゃかめっちゃかにした方がおもしろかったんじゃがなあ。」

「カラシの脳内はちょっと荒み過ぎてるよ、育ちか家庭環境が悪い人間にしか見えないわ。」

「しかし、こういった方がいないとゲームが盛り上がらないのはあるんですよね、嘆かわしい。」

「俺は妹と自分の判断は間違っていなかったと信じますよ、ゲームを盛り上げないとしても、まずは自分が強くありたいんです。」

「少年、それで良いんだ。この二人がおかしいだけだぞ。」とアルカントス氏は俺の肩を持ってくれる。

「オークの頭領でエルフを襲うのが趣味なのもどうかしてると思うぞアルカントス。」


「敵さん、諦めてくれたっすかね。」とロドリコが岩場から包帯に繋がれた首だけを空に向かって延ばし索敵をする。見た感じとしては包帯バージョンの妖怪ろくろ首、気持ち悪いからその索敵方法はやめて欲しい。というかマミーって首取れても平気なんだ。

「うーんうーん」と岩場で唸り声がいくつか重なり合っている、理由はエリーンとジノーがレベル20に到達してしまい変異先に悩んでいる所。

レオ、バッシー、ナイトウィンドは社会人組みなので少しまだレベルが足りないし、アレキシは迷わず変異先を邪竜に決定した。

そもそも大人組が悩む所をあまり見た事が無い、これが大人の余裕か。

「どうでやすか!なんかパンクになったでやすよ!」とアレキシがウキウキとくるくる回転しながら変異先の姿を披露するが、今俺達は敵から隠れている状況だ、でかい体でくるくるされると目立って仕方ない。それにパンクって、モヒカンにでもなったのかなと確認したが別にそんなことは無かった、翼と鱗が硬そうになったのとトゲトゲが生えるくらいかあ。

リスペックが一回出来るとはいえ、この下法竜の人型と竜型の切り替えがめっちゃ便利で邪竜にするか悩むんだよなあ。でも人型になったらお姉ちゃんだしなあ。


天魔のダンジョンで絶賛ヴァルハラが如くで戦い死に生き返り稼ぎ続けるマリッドの姉御は迷わずにオーガからの変異を生存力の高いオーガバトラーへ決定したらしい。DPS特化より半タンクの方がPvPで強いのは確かだから正しい選択だろう。

ア・ヨグの姉御と触手がりるんがLv30に到達したという話も聞いたが、ああいう一日中PvPをし続ける事が出来る人は稀である。本作ではPvPが一番経験値効率が良い事はこれで判明した。

ただし、先の海の民二人組みと戦ったデータを見てもレベルの差が勝敗に繋がる訳でも無い。

レベルが高いと便利なスキルが増えるだけであって、威力の高い攻撃は低レベルの頃に覚えたスキルで十分だ。

ただし信仰魔法は除く。BBSにも「ゲーム始まったら信仰レベル10取ればいい気がする。」みたいな書き込みも目立つので宗教戦争かよと思うも、世界観が神話の時代だという事が判明しつつあるので案外それも正しい世界観に適したプレイスタイルなのかもしれないという話もある。


「んじゃ、そろそろ湖神様を拝みに行くか。」と俺達は空へ飛び立つ。俺ら憎しとはいえテクチャルもゲームプレイヤーであるので無駄な探索に時間はかけまい。そもそも移動速度が飛行神のお陰で格段に違うしエリーンのスワンプマンスキルであるラーニングには湖神信仰『和平の笛』が登録されている事なので不測の事態は回避出来る。スワンプマンとドッペルゲンガー強すぎ無い?とも思うが、他種族も大概なバランスなので強種族に強種族をぶつけていくのがこのゲームのスタイルなのは分かる。

時折エリーンが意味も無く和平の笛を気に入ったのか無駄に使用しているが、クールタイム中に必要になったら困るので止めて頂きたい。


湖神像周辺には敵の防衛線が引かれていなかった、というか湖の上にちょこんと天秤を胸にしまうように持つ女神像が水面に建っていて周囲を加工するのが難しいのだと思う。プランとしては周囲を船で囲めば覇王軍でこの神像を独占できるはずだが、それをしない理由には訳があるのだろう。

なぜなら湖の女神は平和の神様だ。それに、この神像から信仰を魔王軍が得れば敵との商取引も盛んになる。

恐らくカラシさんが何らかの手を回してるんだろうなとは思う。あの人が何かに熱中すると強引には行かず、少しずつ浸透する様に目標へ向かうタイプだからだ、やり方は王道から陰湿まで様々だが。

大理石調の女神像の持つ天秤皿には片方に笛ともう片方にはハートの形をした巨大な銀貨が乗せられている。よく見ると銀貨の表面には方位が書き込まれているし笛の形は妙に捻じ曲がっている。

「あ、この笛の形、なんとか座ですよ。設定資料集でありました。」

「なんとかって…。」

愛微笑の動きが止まりガサゴソという音が聞こえた後に

「あーこれこれ、これです。水女座っていうらしいです。設定には海の民の娘がある日…。」

「分かった、後で聞くから今はここから離脱しよう。」

「看破スキル使うとチラチラと見えるのがいるよ、あれは敵だね。」

「平和の女神様の前で暗殺を狙ってくるなんてふてえ奴でやすね。」

「問題は次の行き先だな、北東に行けば魔王軍の水生種族対覇王軍の艦隊の決戦。北西に行けばノースマン故郷であるヘヴシンキと氷神像と大雪原か。」

「戦争の手伝いはしなくていいんですか?」

「うーん、正直に言うと制海権はもう取れないと思うんだよな。あの戦いは魔王軍の負けだろうよ。」

「我々が制空権を握る一端を担ってしまったから勢力が偏ったな…。私の短い故郷もお別れか。」

「所でマーマンとネレイドって男女逆なだけで同じ種族じゃないんですね。」

「それな。」「負け戦なんかに加担するよりも観光に徹するべきっすよ。」

「そうですね、水生の皆さんごめんなさいー。」

と相談の末に一同は北西の寒空へ飛び立っていった。

・設定 防竜連山

覇都より結構西、ラットマン及び獣人の巣穴の西にある、北は大湖から南はピラミッドのある砂漠までを縦に連なる山脈。東側にはドワーフ、北にはハーピー、南にはトロル、西には亜竜のスタート地点がある激しい戦地である。初期状態でははっきりいって覇王軍が不利だが、ゲームが進むにつれて逆転するという勢力バランスを取っているらしいがベータテストでそこまで進むことは無いだろう。


・水女座

海の民の娘がある嵐の日にマーマンの子供を拾った、彼女はこの子マーマンを匿い続け故郷の地に帰してやる為に色々と手を尽くすが、マーマンの故郷は遠い東の地。彼女はある日、家出同然にマーマンの子供を引き連れて旅に出た、道中様々な人々に出会い詰問されると、彼女は「このマーマンを売りに行く途中だ。」と誤魔化し、巨大なモンスターに出会えば「危害を加えればこの子の命は無いぞ。」と狂気の形相で水魔法や戦技の限りを尽くし追い散らした。やがて彼女達の旅は終わりマーマンの里へ子供を届ける事が出来たが、この子のマーマン親族は皆海の民に殺されてしまっていたらしい。マーマンは血族を大事にする種族なので戦争で疲弊したマーマン達は血の遠いこの子供を引き取らなかった。マーマンの子供も娘に懐いていた為に行き場の無くなった二人は大湖の一つにある小島でひっそり暮らす事にしたが、ある日戦火に巻き込まれて共に命を落とす。

それを哀れに思った湖神は二人を星座にした。その形は女人が子供の手を引く形だと言われている。

ネレイドの発生もこの頃だとされるが、それには異説がある。

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