A010.ドッフルギャンガフフフそうでしったけ?
サメのワールドボスを撃破した後にまた皆が散開しクエスト消化や装備集めの旅に戻る。俺達4人は初心者2名入りなのであまり効率がどうとかそういうグループに入らずマイペースにコンテンツを味わう事にしている。
砂漠を更に南へ進むとまた敵の種類が変わる。
まずは大きなとさかを持ち、銀色の鶏を大きくした様なロボットのカクメック、こいつはモンスターの癖にチャージスキルを使用してくる。物凄い速さでこちらのグループメンバーに手当たり次第チャージスキルで突き回してくるのでターゲットが取りにくい。
コラーダが久しぶりに「ターゲット鳥憎い。」と寒いジョークを口にしているがスルー。
しかもチャージスキルはランダムターゲットの様で挑発スキルで敵の固定が出来ない。
お次はカエシウムスライム、こいつは遠目には金色の金属球に見えたが、戦闘状態になるとドロリとその球体が姿を変え、よくファンタジーであるスライムに姿を変える。スライムだから火に弱いだろうと思ってジノーが火の元素魔法を叩き込むと、そのスライムは板状の形に一瞬姿を変え、ジノーの元素魔法をそのまま反射してきた。
ジノーは強力な攻撃スキル構成だが、耐性スキルが低いので実に脆い。ジノーはその反射された自分の魔法をモロに食らい追加効果で炎上、必死に緊急回避で転がりながら炎上状態を解除するがその一撃で戦闘不能寸前になったのでジノーは大人しく楽器スキルを演奏し始めた。
カエシウムスライムの移動速度は結構速い、俺が挑発スキルを使用したならばすぐに目の前に現れた程だ。挑発をすると移動速度や攻撃速度の上がる沸点低い設定の敵か。しかし、この金色のスライムの動きも気持ち悪いな。おお、スライムから無数の触手が現れて俺を貫こうと…、あれ?物理ダメージが出ないが代わりに変な持続ダメージが食らうぞ。
うーん?液体金属は都合の良い硬化能力持ちが基本じゃないの?映画で見たよ。
持続ダメージの源である自身の状態変化表示を確認すると、汚染毒と火傷という状態変化がかかっている。こいつ、持続ダメージだけで攻撃を加えるタイプか。
このタイプの敵には盾が役に立たないしこの二種類の状態変化は結構ダメージがある。
金色の触手にペチペチと叩かれている俺だが、横を見るとコラーダがいそいそと片目掛けの眼鏡を装備し始めた。あれはまさか撮影用のエモーション。
「コラーダ君。」「何でしょう先輩。」「なんで動画撮影の開始なんてしてるの?」「貴重な先輩の触手攻めに合うシーンですよ、そりゃ保存しますよ。」「いいから敵を叩いてくれ、マイペースプレイは良いけど、なめプは禁止です。」
と言われたコラーダはしぶしぶとスライムにお気に入りのロングソードで殴りかかったがダメージはあまり通らない。武器も剣と棍棒と長槍と斬衝突属性と素早く切り替えながら攻撃しているも、どれもダメージが半減以下に見える。
投擲による毒攻撃にいたっては無効ですらある。
結局はコラーダとエリーンの軽減された物理攻撃の連打で押し切ったが、こいつも何らかの弱点はあるはずだ。それが分かるまでしばらく避けて通ろう、どうせまたマイナースキルが弱点なんだろ。
金色の球体を避けて移動していると、今度は水平十字型の白い胴体でプロペラが十字の先端に4つずつ付いた飛行物体の群れを見かけた、どう見てもドローンです。名前の表示を見るとフーファイターというそうな。
そのドローンの群れにエリーンが考えもせずに弓矢でアローレインぶっぱなし、それに併せてジノーが元素魔法の範囲スキルを使用しまとめて焼き殺そうとするが。攻撃を受けたドローン達は真っ直ぐこちらに来ないで範囲攻撃の横から飛行機のバレルロールみたいな動きをし攻撃範囲を脱出、その後ドローン達は素早く左右に展開しながらジノーへ向かい包囲攻撃を開始した。
例えボス階級では無い雑魚とはいえ、5体ぐらいの敵が同時に後衛職をタコ殴りにすればプレイヤーといえどあっさり沈む。ジノーは緊急回避を使って少し粘ったが戦闘不能にされる。
そのタコ殴りにされているジノーと敵に向かってエリーンが散弾矢やアローレインで削りにかかったが倒しきれず、ドローン達は次の矛先をエリーンに定め突撃してくる。
生き残ったドローン達とエリーンの壮絶な殴り合い?の末にエリーンが砂丘の上で勝利のポーズを決める。
しかし、あのドローンの動きはどこかで見たことがある。
けど、それはゲームじゃなくてドローンを現実の軍事訓練に使った時の展開方法だ。
開発チームの本気具合がよく伝わるモンスターばかりだな。こういうのを見てると、マギラ3のモンスターの行動ルーチンは全てAIに開発させているという話だが、どんなゲームになるか楽しみだ。
「あの、お兄さん達。なんで助けてくれなかったんですか?」とジノーが恨みがましい声で倒れながら聞いて来る。
「ロド、どう思った?」と俺は横にいるコラーダへ話を振る、ジノーを無視している気は無い。
「ダメージを受けたら敵も緊急回避みたいな動きをしてダメージの回避か軽減を狙う、その後一番柔らかそうなプレイヤーに集中攻撃、攻撃方法は中近接のスタンガンみたいな攻撃、たぶん電撃属性かな。」
「うん、俺も同じ見解だ。対策はどうする?」
「まずタンクが突っ込んで挑発、直後に後衛からAoECCをしてからタンクが全部のターゲットを取って時間をかけて焼くか、数匹わざと挑発しないで分散させる。辺りじゃないっすかね。」
「つまりどういうことだってばお兄ちゃん!」
と、ジノーを蘇生しに行きながら喋るエリーンに対して俺は出来るだけやんわり伝える。
「タンクが攻撃する前にDPSが手出ししたらいかんよって事ですよ妹様。」
「助けなかったのは、それを身にもって覚えて欲しかったからね。」
とコラーダの方はちょっと厳しい言い方をする、だってこいつガチ勢だもん。
そこへ一応俺も強めにフォローと解説を入れる。
「そうなんだ、特に野良グループではDPSが先走ったら助けずに見殺しにするヒーラーやタンクが結構いる。なぜかというと、タンクやヒーラーはDPSをまずは格下として扱う人間が多いからだ。」
「こじらせたヒーラーやタンクはプライド高いからね。」
と、二人への愛の教育は終わり。
こういうDPS見殺し事件を受けたDPSはヒーラーやタンクに目覚めて同じ見殺し事件を起こす場合が多い。
まぁ、本当に強いDPSはソロでも敵を全滅させてしまうのだけどね。
「後はそうねー。敵の群れが『高さ』を使って行動している様にも見えたから、罠使いはまず勝てないでしょ。」とコラーダが分析しているが、罠使いさんも先のワールドボスといい、良い様に使われて大変だな。
4人は次にまっすぐ南ではなく西の方角へ移動する、マップのどこを見渡しても砂漠だらけなのでうんざりしてきたが、リアルで寒い時期には丁度良いくらいか、問題は夏場にこのマップには絶対来たくない所だ。
西へ向かうと遺跡の様な物を発見した、マップでこの位置を見るとこの遺跡の真ん中辺りに悪魔の顔の様なマークが付いている、ワールドボスの表記だ。
「んー、挑んでみる?」と俺達は露天遺跡の中心にそびえ立つボスらしき、赤い縁取りのされた長方形の板の様な黒いモノリスを囲みながら相談する。
「さっきのサメさんより強そうオーラ出てるよお兄ちゃん!」
「ギルドからの情報は特にまだないし、周りにも人がいないから未知のボスだね。」
「お任せします、お兄さん。」
そうだ、せっかくの新しいコンテンツだ、死んで楽しみながら覚えよう。
と俺は思いBuffを開始する。それに併せて他の3人も戦闘準備に入り、それが終わっただろう直後にシールドチャージからの挑発をモノリスにぶちかました。
モノリスにはCCは勿論無効、挑発は入るが、直後にカウンターアタックがモノリスから発せられる。
モノリスから黒い波の様なエネルギーが発せられ、4人に対して状態変化が付与される。
内容は『逆進化』状態。
文言が『退化』ではなく逆進化である理由が分からない。
すると、こちら側4人のMPEPSPが急激に上昇した、その他にも見知らぬ補助効果が味方にかかりまくっているが、敵にBuffをかけてどうするんだ。と思いながら各々はボスを殴りにかかった。
ボスのモノリスが今度は電撃の様な光を発してこちらの4人へ持続ダメージの攻撃を加えてくるがこれは致命傷にはならない、音楽スキルの自然回復向上で相殺される。
ボスは少々硬いが時間を掛けてモチベの30%を削った辺りでその黒いモノリスが機械の様な声を発した。
『サンプル回収完了、ハヴァエイダム』
直後に俺達の足元からものすごい勢いで棺の様な物が飛び出してきて、その衝撃で全員がノックダウンを受ける。
棺はボスの増援召喚ペットかと思い、俺は他の3人へ向かって「固まって動け。」と指示を出す。
全員が寄り添うように俺に近寄るのを確認したら戦術スキルの方陣を発動させ防御モードに入る。
その防御モードに入った俺達の後に続けて棺達がその蓋を開け放った。
棺の闇の中から這い出てくるギミックから生まれし者、その姿は俺だった。
正確にはコラーダやジノーやエリーンも棺から出てきた。姿、装備、まるで同じものだ。
すごい嫌な予感がする、新手ヒトガタの頭上には『インスバイオロイド』と表示されている。
こういう時は敵の大将を潰してペットの消滅を狙うのが定石なので俺試しにモノリスへ斬りかかるも、モノリスは青白い光を放ち無敵モード、いや、攻撃の反射モードに入った。
愛刀スズメバチの刺突攻撃が自分へ跳ね返るのを感じながら冷静に、冷静に勤める。
「ボスにはまだ攻撃するな!ペットを先に倒すぞ!」と俺は号令するが。
「え?だってあれお兄ちゃんや私の姿をしているよ?」とエリーンは混乱し。
賢いコラーダとジノーは下唇を噛むような顔をしている。
俺は急ぎ挑発スキルを敵のペット4体に素早く入れる。
それに合わせて敵のビータもこちらの4人へ挑発スキルを入れてくる。
敵のコラーダが喜色を浮かべこちらへチャージスキルを繰り出してくる。
そんな軽い顔付きはお前じゃないよ!と俺は冷静にその攻撃を逸らす。
エリーンのコピーが怒りの顔で弓を構え俺を射る、俺の妹はそんな事をしない。
エリーンの構成は弓矢に特化されている訳では無いのでコピーならばその威力は脅威にならない。
ジノーの影法師が泣き顔で骨の戦士達を呼び出す。お前はそんな簡単に泣かないだろ。
俺と敵のビータを盾にした壮絶な乱闘が始まった、その光景を見物している黒いモノリスからは嘲りや悪意すら感じる。争え人間共め!と言わんばかりだな。
見知らぬ人と泥沼の戦いをするのも地獄だが。偽者とはいえ、自分やそれに近しい姿の者と戦うのは心にダメージを受ける、ましてやこれだけ技術の進歩した時代のゲームだ、敵も様々に表情を変えながら攻撃を繰り出してくる。
キャラクターに愛着も深い、それを攻撃に利用してくるのは実に趣味が悪いぞ開発者。
挑発を敵全員にしてしまっているので、俺は敵の攻撃を一身に受けながら、敵で一番柔らかいだろうジノークローンに向かって方陣を解除し突撃し範囲スキルを連打する。
他の3人もそれに合わせて範囲攻撃を開始する、敵に挑発を受けた場合の対処方法は予め教えてあるのだ。
そこで更に俺は取って置きの切り札をここで切る事にした。
「ジノー、『放浪熱』の発動をしろ。」
「駄目!ウルティメットスキルがなぜか発動しないよお兄さん!」
と言われスキルスロットを確認すると、確かにUltSkillが使用不能になっている。
これが『逆進化』の効果か、ステータスを上げる代わりにこちらのスキルを一部封じてくる。
しかもこちらのかかっているBuffは敵のコピーにもかかっている。
という事は敵のジノーを潰さなければ『放浪熱』が逆進化の切れた途端に敵から飛んでくる可能性もあるか。
逆進化の解除まで後3秒、解除後にはまたすぐ発動されるのではなく、数秒の空き時間があるだろう。
そのタイミングでウルティメットスキルを発動させろというギミックか。
敵のビータとコラーダが俺に食いつくように襲い掛かってくる、敵のジノーは逃げに徹していないので、もう少しで落とせるがエリーンからの血神魔法で回復を受けている。逆進化の効果が切れた瞬間に最大MPも下がるのでその時がチャンスでもありピンチだろう。
逆進化解除、直後にジノーが『放浪熱』のウルティメットスキルを発動させる。
放浪熱はゲーム中最強最悪のスキルで、以前はPvPエリアでも使用可能であったが、激しいバッシングにより今はシステム的にPvEエリアでしか発動出来ない仕様になっている。
効果は対象に30秒の持続性病気ダメージを与えるというものだが。このスキルの恐ろしい所は、感染者の周囲5m以内にいる敵にも30秒の病気ダメージが感染し、最初にかかった敵が30秒を経過して回復しても、また別の感染者から30秒の病気の感染を受けて無限ループになり、死屍累々の屍をたった一人のネクロマンサー築き上げるという点が問題だった。
しかし、モンスターには病気耐性を持つ個体が多いのでこのクローン達に効くかどうかわからなかったが、どうやらこいつらは『プレイヤー属性』も持っているらしい。
放浪熱が敵に通って安心した俺は油断していたと思われても仕方ない、このタイミングで敵のクローン達が一斉に俺に対してウルティメットスキルを繰り出してきたのだから。
コラーダクローンの遠心回転撃、俺のクローンによる連撃、エリーンクローンからの弓矢UltSkill『不射の射』。そして、ジノークローンからの放浪熱。コラーダクローンからの一撃必殺を逸らしたとはいえ、俺のMPは一気に9割程削られた。よく死ななかったなと思いながら緊急回避をしながらポーションとアクアビッテを使用し立て直しを図る。
その間にこっちのコラーダはジノークローンへ激しいトドメ刺しに向かうが、ジノークローンは倒れた直後に突然また復活、あれは死神スキルの『転生の約束』を予め自分にかけておいたのだろう。補助魔法も自前で使うのか、あのクローン。
『転生の約束』は発動後5秒間だけ自身が戦闘不能になっても3割回復した状態で復活できる、死神信仰の壊れスキルの一つだ。ジノーは未だにこれを使いこなせないが敵はきっちり使ってきたな。
こっちのジノーとエリーンはその敵が使いこなす自己復活魔法に動揺したが、コラーダはぶれなく再度ジノークローンへトドメを刺しに行く、あれは「こいつを2回も倒せるなんてラッキーだな!」といった顔をしている。
敵と俺の挑発時間が切れる、もし敵がプレイヤー属性ならば挑発に対する耐性がしばらく付いてしまうので、挑発はしばらく諦めCCを主体にしなければならない。運命神信仰がいればもう少し楽に戦えたのだろうが、居たらいたで敵からの強力なCCがこちらへ来ていただろう。
敵からの放浪熱は本体のジノークローンが死亡消滅状態でも継続でこちらへダメージを与える。
クローンは戦闘不能に追い込めばモンスターと同じで死亡か、蘇生はないのだろうか。
しかし、今は深く考察する時間はない、それを気にしていたらいけない、次に狙う敵は。
「コラーダクローンに集中攻撃だ!」と俺は叫び、乾坤一擲からの連撃とそれに合わせてコラーダも乾坤一擲からの遠心回転撃をコラーダクローンへ叩き込む。さすがに自分のクローンを殴る時は無表情だったコラーダさん。
ジノーは音楽スキルを継続しながら骨の戦士をコラーダへけしかけ、エリーンは血神信仰スキルのUltSkill『謝血祭』を発動し味方の回復と防御力向上に努める。そうだ、この4体のクローンを倒してもまだモノリスがいるのだから持久戦の構えで良い。
その強力な攻撃を受けてコラーダクローンは暗闘スキルのファストハイディングで姿を消し逃げに回るが、俺は条件反射で戦術スキル曳航弾を発動しそれを看破、そこへこっちのコラーダがチャージスキルからの瀕死敵に効果のある処刑スキルを発動し戦闘不能へ追い込む。
もし敵のコラーダがUltSkillを遠心回転撃ではなく時空魔法のタイムエスケープに使用していたら全回復されてまずい所だった。
黒いモノリスよりまた黒い風が吹く、逆進化状態が戦う者達へまた付与される。
既にこちらは4人ともウルティメットスキルを使用した後なのでこれは問題ない。
敵のクローンは残り二体、全員が真っ先にエリーンクローンへ標準を合わせるがエリーンクローンは曲芸クロスアロウをエリーンとジノーへ発射、二人は足元に十字状に突き刺さった矢に躓きノックダウン、その転んだジノーに対して俺のクローンが攻撃を開始し始めるが、そこへシールドチャージで突撃。死にはしないだろうがジノーは脆いので守らなければならない。
「お兄さんありがとう、カッコいいです。」とジノーは軽口を叩く余裕がある様なので安心だ。
「あ、私も死んじゃうなー守って欲しいなー。」とコラーダが棒読みでこちらをチラチラ見ながらエリーンクローンに斬りかかっているが無視。
状況が4対2になってしまえばまず逆転は無いが、エリーンクローンはそこそこだったが、俺のクローンが結構硬い。4人で遊ぶようになってからはサブタンクから純タンクよりになったからだ。
自分のクローンを斬りつけながら考える、種族ボーナス考えると純タンクでノーマッドは微妙だな、と。
俺のクローンを殴る時はジノーとエリーンが遠慮がちだった、かわいいやつらめ。その点コラーダはこれまた情け容赦なく全力で俺のクローンを落としにかかる。お前本当にブレないな。
敵のクローンが4体倒れる、精神攻撃もここまでだぞとモノリスに向き直ると、さっきまで放っていた青光りが消えて殴れそうな状態へ戻っている。
「よっしゃ、ギミックはこれだけなら勝てるぞ!」と俺はグループの引き締めと建て直しにかかる。
またボスのMPが減ったらクローンが出てくるに決まっているからな。冷静に対処すれば勝てない相手ではない。
と、思ったその時に突然「待たせたな!」というセリフと共に横からギルマスが砂煙を上げながら大量のメンバーを引き連れてやって来た。
その光景に俺は顔から血の気が引き「だめええええええええええ!」と情けない叫びを上げたが、時は既に遅かった。
ギルメンが殺到して殴りだした黒いモノリスがまた機械の様な声で
『サンプル回収完了、ハヴァエイダム』と言った。
その後は本当に地獄絵図となった、ウォーデルタでもこんな状況はまずないだろう。
このボスは何人までのクローンが作れるのは分からないが、少なくともギルド永久凍土のここまで来たメンバーの全員である24人のクローンが誕生したのは確かだ。
「ギャハハ!なんだよこれ!」「お前が俺でー!」「ボス本体は反射持ちだぞー。」「日頃気に入らない奴を殴る為のサービスですね。」「放浪熱使えー。なにこのBuff?逆進化?」「おーい、タンクは挑発でタウント取れよ。」「敵のルーチンめっちゃ優秀なんだけど。」「マグミさんよりは賢いなこいつら。」「ひどーい。」
といったお祭り騒ぎになったが、2ウェーブ目の敵クローンを掃除し終えた頃にはエリーンやジノーやギルメンの一部等、参加者の約3割が戦闘不能に追い込まれた、これだけの乱戦で3割で済んだのは運が良いのか実力か。
「たぶんクローン戦が3ウェーブくらいあると思いますので建て直しを優先して下さい。」
と俺は叫ぶものの相手はウチのギルドだ。
蘇生?倒れる奴が悪いんじゃいと言わんばかりに建て直し時間に使えるモノリスの無敵解除時間にギルメンは殺到してモノリスを殴り始める。
モノリスがパタリと横に倒れてドロップアイテムが出る死体の判定になった頃には周囲の人間は元もとの半数だけが立っていた。
「サメより強いな。」とギルマスが呟いたが、ギミックを知っていれば4人でも勝てたんすよ。と念の為に突っ込んでおいた。
戦闘不能になった仲間を起こして敵のドロップを確認。レアな装備はモノリスのデザインに沿った鎧系や盾と剣もあるらしく、各々がその装備の能力について考察し始めた。見た目はカッコいいらしい。
そんな中で俺は仲間の3人と共にまた旅に出ようとする、見知らぬ砂漠の果てを目指して。
所で。
「ロド、お前。クローンの俺とジノーとギルマスを攻撃する時めっちゃいい顔してたな。」
と軽口で尋ねると、コラーダは良い微笑みをしながらこう言った。
「フフフ、そうでしたっけ?」
設定
・『放浪熱』
ネクロマンサーの複合スキル。要 死神信仰 召喚魔法 暗闘
実際こういう魔法がゲームであって、ゲームバランスを大きく崩したために引退者が続出したゲームがあった。
作品とあんまり関係ない小話
・ゲームは実際の戦争に役立つか?
一つだけ筆者の経験で答えがある。筆者が自衛隊の新兵だった頃に射撃訓練があった。89式や64式自動小銃で200m先の的をアイアンサイトで狙う訓練だ。
この訓練での筆者の成績は100人中3位、更に上位の2-5位は全員FPS中毒者だった。
つまり、FPSをプレイしてると実銃がうまく当てれるのは本当。
そして、アメリカ軍の研究でもFPS中毒者は人間に向かって引き金を引くのに躊躇が無いという研究結果も出ていたはず。とはいえ「引く事覚えろカス!」みたいな名言がある様に、そっちの方が重要なんじゃないかとは思ってる。
ちなみに射撃訓練の1位は元水泳部員でした。ワーストランキングは元野球部員達。
しかし、野球部員はソフトボール投げや手榴弾投擲がものすごい飛距離と精度なので侮れない。