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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A009.ドラゴンズラヤを越えて

南方森林同盟の地から南にそびえたつ山脈。竜の住処であると言われるそのドラゴンズラヤを踏破して更に南へ広がる果ての砂漠に転送施設の設置が完了した。という設定であるが、ドラゴンズラヤ自体は12人レイドグループを組み、真面目なグループ構成とMMORPGお馴染みの大縄跳びギミックを理解出来れば踏破も乱獲ファーミングも出来る難易度であった。


となると、果ての砂漠は大縄跳び大会かと思えばそうでもなかった。というよりも、大縄跳びが必要なコンテンツがまだ見つかっていないだけであり。探せばあるんだと思う。


 俺とコラーダとエリーンとジノーは見渡す限りの砂、岩、陽炎の地である果ての砂漠最北端からクエストを地道に消化していく。やれ食料確保の為に雑魚モンスターを乱獲してこいとか、ストライダー達の聖地を清めよとかそんなお使いクエストばかりだ。ストーリーもそれなりに練ってはいるらしいが、どっかで見た話だなと思う程度だ。


そんな熟練者にはおもしろくないクエストをこなしていても、初心者二人の目には新鮮に写り、俺達も新しいドロップ装備が手に入るので、それの考察や使い道をギルドチャットで検討する。


そして、初心者二人のペースに合わせる半幽体離脱的な戦闘モードで情報収集をしていると、ギルドチャットから爆弾発言が転がり込んできた。「スキル90の素材が出た。」と。


この発言を見たコラーダと俺は目を見合わせた後に「先輩と産廃ってなんか似てませんか?」とコラーダがとても失礼な発言をしたがスルーして「世界一硬い金属のエルチウムさん、設定台無しだな。しかし、また装備の見直しか…。」と呟いたら、その新しく発見された素材はエルチウム合金と言う実に見苦しい名前であった。


砂漠の北側はデスワームやらバシリスクやらサンドヴァイパーやらエンズスコーピオンやら砂漠の狐、等の如何にも砂漠の生き物ですよ、毒属性と物理攻撃ですよ、といったものばかりであったが。


更に南方に進むと段々と敵が。フライングクレイモア、レスゴリアテ、ボーンパイロットアーマー、といった妙にメカメカしい物に変わっていく。クエストの内容も古代文明の兵器達が主無き今も彷徨い戦う続けているといった設定らしいが。これでもまだ中盤に差し掛かってもいないので、これからどういう敵が出てくるかちょっとワクワクしてきた。


まずフライングクレイモア、こいつの攻撃方法は自爆のみだが、常に他の敵と一緒に出現し、最高の避け難いタイミングで自爆攻撃をするすばらしい戦闘ルーチンを持っていらっしゃいやがる。プレイヤーが「このタイミングで爆発されたら嫌だなぁ。」という時に見事大爆発し、DPSクラス相手ならほぼ即死の威力を出してくる。こいつはもうルーチンというよりAIか何かじゃないかと思える。


次にレスゴリアテ、小さい戦車の様な敵だが。なんとこいつは機銃が付いていて、更に『引き撃ち』をしてきやがる。引き撃ちとは、逃げながら射撃攻撃をする戦法の事で、英語圏だと『パルティアンショット』で通じると歴史マニアの友人が言っていた。

正直、広大な砂漠の中で引き撃ちを開始されると面倒臭すぎる、チャージスキルを生かす為の意図だとは思うが、バードや罠職はこいつの前では完封される未来しか見えない。


ボーンパイロットアーマーの見た目は骸骨やミイラがメカを操縦している様に見えるが、きっちりアンデットモンスターでは無く、リビングアーマー等のゴーレムタイプだった。必死に光や炎や銀武器で攻撃しても軽減されるだけであり、ギミックとしては骸骨の部分を攻撃すると、ポロリとそれが前のめりで倒れてくるので、近接職がこの敵と殴り合ってうっかり骸骨を殴ろうものなら、目前から骸骨が抱きついてくる様に倒れてくる。骸骨自体もよく作りこまれている為に、一人称視点だとホラームービーのワンシーンにしか見えない。アーマー自体の弱点は雷撃と衝撃属性らしい。


こいつとの戦闘中に骸骨が覆いかぶさってくる時があり、それに驚いたエリーンが「きゃああああ!」と叫んだ所に向かってフライングクレイモアさんが見事な自爆攻撃で戦闘不能に追い込んでいったのはすごいと思った。

雑魚敵で初見殺し、しかも精神攻撃からだ、作りこむ所が違うだろ。

でも妹が倒れた時に俺はガッツポーズを無意識で取った。


クエスト自体は面白味が無かったが、様々な追加モンスターにはおもしろギミックが搭載されている。

しかし、いつかこいつらのルーチンにも飽きが来るんだろうなと思うと寂しさを感じる。


そんな最中にギルマスから。「おもしろいワールドボス見つけたから見においで。」というチャットが流れた。ギルマスが指定する位置はここから遠くも無い場所だったので4人で見に行くと、ギルドメンバー達が砂丘の上で遠巻きに見える野良プレイヤー達がワールドボスに蹂躙されまくっているのを見守っている。


ワールドボスとは、ダンジョンやクエストでは無く、マップの表層に出現するボスの総称であるが、強さはピンキリだ。レイドで挑まなければ勝てないボスもソロで倒せるボスもいる。


今回は前者の様にも見えるが、野良プレイヤーの人数を見る限りでは1レイド以上いるのに一方的にボスがプレイヤーをタコ殴りにしている、ワールドボスの癖にギミック持ちか。


ボスの見た目は地面から生えた三角のチェーンソー、あれは砂の中に本体が潜っているのかな?


「どう思う?」とギルマスが口に出すと、周囲は異口同音に「片っ端からスキル試すしかないんじゃね。」と言った脳筋よろしくなウチのギルドらしい回答しか出ない。


「そうか、んじゃ行くか。」と言いながらギルマスが蹂躙されている野良プレイヤー達へ走りより、音楽やCCあしどめを展開、これは勿論はずれ。


二番手はチビパンさんのスケルトンラッシュだが、これもボスのチェーンソーによりバラバラに吹き飛ばされ骸骨達は空を舞う。


三番手は俺の投擲による毒攻撃、これは微妙にダメージが通る。それを見た周囲の人間は投擲による攻撃を開始し始めるが。あまりダメージは通らないのでこの攻撃で倒そうとすると毒の素材料金でスカピン街道まっしぐらだ。


4番手は兵器攻撃、ウォーデルタやフェーダワールドで日夜プレイヤーを再出撃に追い込む素敵な兵器達だ、これも効果なし。


5番手はギルドメンバーのSIVAさんの落とし穴。え?落とし穴?チェーンソーがSIVAさんの目の前に迫ると彼はスッと足元にスキルを発動させ冷静にボスを迎える、あれ失敗したら死ぬだろうな。と思っていたら、落とし穴がストンと発動し、ボスの本体をあらわにする。サメの様な機械の魚が落とし穴の中でピチピチと跳ねている。


「「おお!?」」と周囲はどよめき、落とし穴の中であらわになったボス、『デザートシャーク』へ各々が遠距離攻撃を開始し出すと見事にボスのMPモチベーションポイントがきっちりと減るではないか。


罠なんて普通取らないよ、と俺は心の中で思いつつボスに接近するが。

ボスは落とし穴の中だ、近接職はどうすりゃいいんだよ。と思いながら一応遠距離で挑発スキルを入れて落とし穴に飛び込み殴りにかかる。

俺以外のプレイヤーは普通に遠距離攻撃持ちばかりなので俺だけが落とし穴の中に斬り掛かる。

俺のスキル構成だと落とし穴からの脱出スキルも無いんだよな。

リソースももったいないから攻撃は他人に任せてやっぱり落とし穴に入らないようにするか。


「エリーン。」と俺は一番役に立たなさそうな味方を呼ぶ「何ーお兄ちゃん?」と妹は穴の端まで近寄ると「シナジーアイコンが出ると思うからそれを選択してくれー。」と伝え、落とし穴系からの基本的な脱出方法『手を伸ばす』のシナジーを俺は発動させる。すると、これで穴の上の人間にも『手を延ばす』のシナジーが発生するので、それを選択すると脱出の手助けが出来る。


しかし、その救助劇の途中。ボスのモチベが30%程減った辺りでズドンと大きな音と共にボスは体勢を立て直し、また砂の海へ逃げ込んだ。そのボスが発した衝撃で落とし穴の上にいたはずのエリーンも穴の中に落ちてくる。これにも思わずカッツポーズ。


しかし、エリーンは落とし穴に落下した直後に天然スキルのハイジャンプを使用し一人だけあっさりと落とし穴を脱出、保身の対応は早くなったな、裏切り妹め。

俺は溜め息を付いて、手を伸ばすシナジーをぽちぽち押して落とし穴から這い出るが、そこへコラーダが手を伸ばし脱出の手助けをしてくれる。


「助かったロド、友好度UPだぞ。」と軽口を叩く俺だが、いつもはノってくれるコラーダが険しい顔をしながら俺の近くより緊急回避を使い後方へ退いた。


その直後に俺はサメ公の砂を巻き上げながら迫るチェーンソウっぽいヒレの直撃を受けて跳ね飛ばされる。

めっちゃ痛い、具体的にいうとMPの8割持っていかれた。タンク系の構成でもこのダメージなら確かに野良プレイヤーは即死ものだろう。

吹っ飛ばされ中のノックダウンにジャンプキーを試しに押してみたらジャストリバーサル発動でダウン状態は免れた、問題は次にまたヒレの突進を食らうと戦闘不能になりそうだということだ。


急いで強化魔法のダメージシールドを展開しポーションを飲む、周囲からも光神や血神の回復系魔法が飛んできてMPを持ち直すが、また目の前に砂飛沫を上げたサメのヒレが来たので今度はガードを試みる。

ガード成功では吹っ飛ばされなかったが、ガードしてもでかいダメージを食らう、これは物理防御貫通攻撃か。

さっきボスを挑発したのが俺だから、俺を基準にボスはぐるぐると轢き殺す様な動きで迫ってくる。


正直さっさと倒して欲しいのでSIVAさんに尋ねる「罠ってもう一回効かないんですか?」と。

すると「罠にかかるクールタイムがあるらしいな、今の敵のヒレが光ってるだろ?たぶんあれ無敵状態だ。」とボスのヒレを見ると、確かに青く発光しているのが分かる。


俺がメインタンクでSIVAさんがその周囲に落とし穴を設置、かかったら俺がまた遠距離挑発を使い、周囲の人間が遠距離攻撃でサメを袋叩きにするというパターンが決まり、サメ公はようやく沈んだ。


攻略法が分かってしまえば楽なボスだが、罠スキルとそこそこ硬いタンクと回復スキルと強力な遠距離攻撃が必要になるので、少しカジュアル向けなボスでは無い。


「やっぱり、今回のもガチ勢向けのコンテンツかよ。」とギルメンの一人が呟いた。

そんな中で、このサメボスのユニークドロップを拾ったという人物が出た。

早速装備して外見を見せて貰うと、頭の上に三角のチェーンソーが付いて、顔面がサメの口の中に入っている様なサメ型の兜であった。

「「うわ、だせえ。」」と周囲のプレイヤーは異口同音に感想を漏らすが、性能は良いらしい。

・装備について

クラフト装備は攻撃スキルや耐性スキルの高さに比例して装備出来る素材が変わり、高ければ高いほど頑丈な装備を付ける事が出来る。

ドロップ装備は耐性スキル0でも装備出来るとするが。その代わり別の装備条件スキルが発生し、基本防御と攻撃力もいまいちとなっている。耐性スキル0で全身ドロップ装備という選択肢も可能だが、基礎防御力が低くなるので補助魔法やダメージシールドをこまめにかけないとほぼ一瞬で死ぬ。

急なパッチで今までの装備が即産廃になるゲームは個人的に大嫌いです。


・大縄跳び

多数のプレイヤーで挑むエンドコンテンツには、一人がヘマしたら即全滅に繋がる仕掛けや内容が多くあります。筆者は実は大縄跳びコンテンツは嫌いではありません。重要なのは、その大縄跳びで失敗しても笑って済ませれる様な人間関係と再挑戦にかかる時間の短縮が重要だと思います。

プレイ出来るタイミングに制限があったり、復帰までに時間がかかる大縄跳びはプレイヤー達の神経を大きくすり減らします。

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