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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
18/95

A001.悪鬼神楽

「そんなの人選卑怯ですよ!レギュレーション違反です!」、そのバードはキンキンとしたシャウトスキル発した。青い肌、黒い尻尾、黄色と黒の瞳と漆黒色の髪とそこから飛び出る二本の角、デビルの娘。左腕にはバックラーという盾を腕に通し、鎧は瀟洒な細工が描かれた白いライトアーマー、手にはリュートの様な楽器を握り締めている、彼女の頭上には愛微笑と名前表示がされている。


彼女の目の前には美形大柄で紺色長髪の女剣士と黒髪で男にしてはやや長い髪型で、その手には変わったデザインのレイピアと火を纏う剣を握る戦士。更には後ろには半裸の格好でマントを羽織って頭装備だけはバシネットという鳥の頭を模した兜を被った楽器持ちのトロルと弓を持つ獣人の男達。各々に頭上の名前表示はコラーダ、B太、ハッチマン、まろいサザンクロス、と表示されている。


<戦闘開始まで後30秒です。>デビル少女の悲鳴に無慈悲なカウントダウンが重なる。

混迷する思考の中で愛微笑はこのゲームの相方に意見を求める事にした「ナイトウィンドさん!」

ナイトウィンドと呼ばれた薄い褐色肌で整った顔立ち、灰色の髪に尖った耳、黒を基調とするレザーとライトアーマーを複合装備している男は「捨てゲーはしない主義だ、いつも通りにやるぞ。」とストイックな返事しかくれない。


その他には「ウッホゴッホゴッホ」と吼えている、愛微笑の後ろに控えているウータンという猿にそっくりな種族、彼の場合はゴリラ系の見た目でクリエイトされたキャラが動物の様な鳴き声をさっきから繰り返している。

「ゴリラ5号さんも何か言って下さいよ!」そう言われたウータンのゴリラ5号は少し頭を捻り「ひまわり。」と答えた。「そうじゃない!」話にならない!


ああ、更に後ろにいる味方の変なエルフもシャドーボクシングしながら「スーズー・タン!?スーズー・タン!!」と時空神を称えてるのか馬鹿にしてるのかよく判らない奇行をしていて話にならない。

なんでデモンズコロッセオにこんなコミュニケーションが取れない人間が来るのよ、4対4人のチーム戦だよ?連携と構成が命でしょ?ああもう、せめて『一人で殺れるもん』さんさえ居てくれればなあ、と頼れるコビットの表情が思考に浮かび消える。


<戦闘開始まで後20秒です>

「少年。」とハッチマンは俺に声を掛けてきた、この人は廃人ギルドノーザンライツのサブマスだが、あのギルド内ではまともな部類の人だ、この勝ち確定だろうという構成で話しかけてくるという事は何か懸念があるのだろう。

「敵のバードは凡庸だがアサシンのダークエルフが弱くは無い、それとあのゴリラはめっちゃ強い、変なエルフも南方では有名な強さだ、連携は大した事はないだろうが格下だと思ってナメ無いほうがいい。」


<戦闘開始まで後10秒です>

味方の獣人まろい略がそれに補足を加える「まずは盾持ちでライトアーマーだがバードを先に落とせ、次にアサシンだ、装備やスペックよりも中の人が重要になるからな、ゴリラは格闘持ちを警戒してCCあしどめ重点で後回しにしろ。」

その忠告に俺は「了解。」と短く答える、隣のコラーダに目を向けると彼女も軽く頷いた。


<戦闘開始まで後3.2.1.戦闘開始>

開幕直後の行動、愛微笑は音楽スキルの開始、ナイトウィンドは暗闘スキルのファストハイディングで視界から消え、ゴリラは俺に向かい弓スキルのCCクロスアロウを発射、変なエルフは一瞬光った後にその場で詠唱開始、何のスキルキャンセルから詠唱だあれ。


こちらの行動、俺はまず自己強化魔法を使用、コラーダも自己強化魔法、バードのハッチマンは、え?開幕チャージスキルで愛微笑に殴りかかりに行った、演奏しないのぉ?まろい略は魔操スキルの生命探知を使い敵アサシンのステルスを看破、ナイトウィンドの突進があらわになる、ステルス看破系は開幕使うか悩んだがこれは嬉しいサポートだ。


2秒後の2手目、愛微笑は「ヒィ!」と短い悲鳴を上げて緊急回避ダッジ、ナイトウィンドは俺とコラーダとまろい略の間に走りより夜の神信仰スキル『日食域』を発動、周囲が闇に包まれ視界が奪われる。ゴリラは「ウッホホイ!」と叫びながら挑発スキルをハッチマンへ使用、変なエルフは詠唱継続中。


こちらの行動、ハッチマンは演奏開始、まろい略は暗闇に視界を奪われているだろうが位置の動いていないゴリラへ元素魔法ライトニングスピアを投げノックダウンを狙う。しかし、ゴリラは被弾直後に打破パージ。コラーダと俺は愛微笑が逃げたと思われる位置に同時にチャージ系スキルを発動しアサシンの闇と攻撃範囲から脱出。


4秒後の3手目、愛微笑は咄嗟に盾スキル逸らすを使用し俺のシールドチャージを軽減。ナイトウィンドは二刀流チャージスキルを繰り出しハッチマンへ殴りかかるがハッチマンはそれをバックラーで逸らす、ゴリラは2回目の挑発を「ウッホウ!」と叫びながらコラーダへ向ける、変なエルフ詠唱継続。


こちら側は俺がゴリラの挑発を受けていない状態なので戦術ウルティメットスキルの『カミカゼアタック』(次の攻撃大UP被ダメージ大UP)を発動直後に二刀流スキル『鎧通し』(物理防御一定値貫通)を使用し、その強力な一撃で愛微笑のモチベPを一気に5割を削る、コラーダとハッチマンは挑発の影響を受けない両手武器範囲スキルの『ぶん回し』をキャンセルアタックで愛微笑に連打、そこへまろい略から弓スキルの『猛毒の矢』が愛微笑へ突き刺さり瀕死にまで追い込む、まろい略が暗闇魔法の中から狙撃できたという事は暗闇に耐性のある吸血鬼か人狼か夜の神か運命神信仰を所持しているからだろう、恐らく吸血鬼かな。


6秒後の4手目、愛微笑はもう一度緊急回避、ゴリラは天然スキル縮地でコラーダに接近後に格闘スキルジュードースルーでノックダウンを与えようとする、めっちゃ動き速いぞこいつ。しかし、コラーダはジュードースルーの弱点である『投げ技接地時にジャンプコマンドを入れればノックダウン無効』というジャストリバーサルシステムを使いノックダウンを無効化、ナイトウィンドはその場で二刀流ウルティメットスキルの『トーネード』を使用しその強力な回転コマと化した範囲攻撃で俺とコラーダとハッチマンのモチベを3-4割削る、これは逸らすと時間の無駄なので受ける事にする、一番装甲の薄いコラーダが少しピンチだ。俺もカミカゼアタック使用後なので重装備にしては大きなダメージを受ける。


俺はゴリラに向かって挑発を使用しターゲット引き付ける、ゴリラギルドの弱点は範囲攻撃スキルが薄い事だから挑発が有効だ、ハッチマンは突然召喚魔法ウルティメットの英霊召喚を使用、青白い顔の戦士が虚空より生まれ出る、あんた等のスキル構成は本当に訳わからん、ハッチマンはその英霊を愛微笑にぶつける。コラーダは相変わらずぶん回しでナイトウィンドと愛微笑を巻き込みながらモチベの削りにかかる。そこへまろいサザザンクロスからのアローレインが愛微笑の回避点へ降り注ぐ、これで愛微笑がスタミナ切れでダッジがもう一度出来なければ戦闘不能はほぼ確実。


8秒後の5手目、愛微笑は時空信仰ウルティメットスキル『タイムエスケープ』により自身ステータスを10秒巻き戻し全快を果たす、やっぱ時空神つええよ、そういえばあんた時空信仰だったね。ゴリラは3回目の挑発を俺に使用しターゲットを一身に背負おうとする、でもお前タンクじゃないよね。変なエルフは相変わらず詠唱中、あの詠唱時間はまずいスキルだ、最初にあいつを潰すべきだったか?


俺は愛微笑へ容赦ない二刀流の範囲攻撃を開始する、コラーダはアクアビッテを使用しリソースの全回復を果たす、ハッチマンも愛微笑とナイトウィンドを全力でぶん回しによる殴りにかかる、演奏はどうした。

まろい略はここにきて変なエルフに対しCCスキルを発動。しかし無効化される。あれ、もしかしてあいつ開幕から耐性100ウルティメットスキルのトレインマン(状態変化無効+受け流しボーナス+3効果20秒)を発動していたのか、ってことはあいつが一番やばい奴だったのかもしれない。


10秒後の6手目、変なエルフの詠唱完了、それは戦術スキルの60の塹壕作成(詠唱10秒で自身から周囲4m以内の味方に塹壕状態を与える。塹壕状態、味方自然回復+10%と味方から5m以外の攻撃無効、移動速度-70%)であった、一部では死にスキルと呼ばれているがこいつは罠と元素魔法特化でもあるのを俺は知っている、相性は完璧だ。詠唱完了直後に変なエルフはいそいそと罠を近場に設置し始めた。それを見た愛微笑とナイトウィンドとゴリラはその塹壕へ全力で逃げ込んだ。


「やべえな。」とまろい略が呟いた、「蛸壺で殴りあうしかあるまい、スコップが必要だな。」とハッチマンは突入を決意した。その前進に皆がポーションを飲みながら続く。


12秒後の7手目、愛微笑は時空魔法でこちらにDebuffステータスダウンを乱打、ゴリラは弓スキルの散射を使用し一方的な範囲攻撃を加えてきて、ナイトウィンドは投擲による攻撃を仕掛けてくるが投擲は皆対策してあるので無効、変なエルフは元素魔法でコラーダを狙撃開始、賢いな。

こちらの四人は敵の要塞と化した塹壕へ正面から突っ込む、罠に落ちる、俺だけ。他の三人は天然90スキルの高飛びや吸血スキルの血霧化ブラッドフォッグで罠をスルーし敵中へ突入後範囲攻撃スキルで敵を削りにかかる。


14秒後の8手目、零距離の弓撃応酬、クルクル回転し範囲攻撃を連打するアサシン、両手武器を振り回しまくる戦士達、地獄の最中で演奏をやり直し始めるデビル、罠から這い出ようとする俺。畜生、普通は罠対策用のスキルなんて持たねえよ。あ、この距離でチャージスキル使えばすぐ登れるんじゃね、俺は迷う事なく頭上でチラッと見えるナイトウィンドへシールドチャージで突進、一番火力の高い範囲攻撃持ちへ2.5秒のスタンを与える、やったぜ。


16秒後の9手目、範囲攻撃祭りの中でまろいサザンクロスがここに来て盾スキルウルティメットの『グレートウォール』(10m範囲内の自身と味方の被ダメージを5秒半減)を発動しそれに併せて俺は戦術スキルの方陣(8m範囲内の自身と味方の被ダメージ10秒間15%カット移動速度-50%)を発動、これで味方はしばらくほぼ無敵の硬さになる。後はゴリラのウルティメットスキルが何かで勝敗は決まるが、ゴリラ構成でまともな範囲ウルティメットスキルは無いはずだ、だってあいつら基本的にゲリラ兵だ。後、弓と盾ってどういうスキル構成だよまろいさん。


18秒後の10手目、ゴリラが格闘スキル100のウルティメット『飛び十字固め』をコラーダへ発動、そこへ周囲の敵はダウン時ボーナス攻撃をコラーダに集中攻撃して加える始める。飛び十字固めは発動者も受けた方も長いノックダウンを受ける荒技なのでゴリラもダウンする、そこに俺はスタンから回復したナイトウィンドへ挑発を使用し最大のダメージソースをはがす、ハッチマンとまろい略は暗闘追い討ちスキルの『急所狙い』できっちりゴリラを削りにかかる。


20秒後の11手目、ゴリラとコラーダがノックダウン中にそのまま戦闘不能。コラーダは「ゴリラこん畜生!」と叫び、ゴリラは「畜生で申し訳ないウホ。」と返事をし低みの観戦モードに入った。

見学なんてさせるかよ、お前もまだ戦うんだよ。

お互い強力な手札を失うが戦闘不能復帰スキルは時間がかかるのでまず放置されるのが定石だ。しかし、自分は錬金スキルの『まずい良薬』をコラーダに使用し蘇生を試みる、復帰直後のMPは少なくなるがそこは我慢してもらおう、そして自分に掛けた補助魔法が20秒経ったのでもう切れる、まずい良薬を飲ませる時間は4秒、敵は後3人も残っているが味方の変人二人で完封出来る気がする。


22秒後の12手目、愛微笑が音楽スキル『励ましの歌』でゴリラの蘇生を狙うもあっさりまろい略の詠唱妨害に合い無駄手間、ナイトウィンドは相変わらず二刀の武器を持ちくるくると回転攻撃を続け、変なエルフもそれに合わせて元素魔法の範囲攻撃スキルを連打するがハッチマンの音楽スキル『テンポ崩し』の前にあえなく範囲スタンを食らう、こいつが真面目に音楽スキル使うの初めて見た。俺は蘇生を継続中。


24秒後の13手目、敵3人スタン中、愛微笑と変なエルフ打破成功、ナイトウィンドはスタミナ切れで打破失敗。コラーダ復活、その直後にコラーダは戦術スキルの乾坤一擲から両手武器ウルティメットスキル『遠心回転撃』を「私の仇!」と叫びながら愛微笑へぶつける。「ちょ、私じゃない。」という最後の言葉を残して愛微笑も戦闘不能、これで勝敗は決した。その後ナイトウィンドはあっさり沈んだが変なエルフはしぶとくもちゃんと撃沈した。



「果たし状の人達とノーザンのチームって階級おかしくないですか?」地面に伏しながら愛微笑は尋ねてきたが俺は正直に説明する。「俺とコラーダはデモンズコロッセオをまだプレイし始めた所なんだよ。ほら、階級の所が駆け出し剣闘士ですらない『猛獣の餌』マークだろ?」

「じゃあノーザンライツがペアでいる理由はなんですかあ…」

「うむ、少女よ。我々はもうコロッセオではチャンピオン階級の最大勝率になっているのでノーザン4人で組むとマッチングされる敵チームが無くて戦えないのだ、戦えたと思ったら敵もノーザンライツだったりする泥仕合だ、そこで本当にマイッチングしてるからこうやって半野良で活動をしているのだ。」

「不条理です。」「運ゲーにも本気で挑め、それが戦いだ、愛微笑。」とナイトウィンドが倒れながらカッコいい台詞を口にする。


まろい略が呟く「まったく当初の作戦通りにならなかったなあ。」

俺は廃人でも計算狂うもんだなと思いながらもう一人の変人に話しかける。

「所でハッチさん、今回は割りと長期戦でしたけど、もしかしてデモンズコロッセオって音楽スキルいらないんじゃないですかね。」

と言われたハッチマンは感傷的な声で「そりゃー少年、楽器はこうやって勝った時に相手の屍の山で一曲奏でる為に持つもんさ。」と言いながらハッチマンはここ悪魔の国の闘技場で物悲しい曲を奏で始めた。

設定

・悪魔の国

西方王国連合所属のデビルやデーモン種が支配するワールドマップ南西にある島。

市街地である魔界町には区域ごとに旗が立っており、その旗の数を巡って3国が競い合うPvPフィールドである。市街地のはずれにはデモンズコロッセオという闘技場があり、そこでは4vs4のチーム戦が国を問わずに楽しめる、ソロで参加すると地獄を見るのでお友達と一緒に行こう。

この二つのコンテンツで一番の成績をリアル一週間以内で出したキャラクターは称号『魔王』を手に入れれるが、特にメリットはない。

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