33/33
第三節
銀霊シャドウは、暗闇を歩いていた。
旅が終わり、彼は帰路に着く。
だが、彼が戻る場所は暖かい光の場所ではない。
絶望、悲劇、嘆き、苦行。
混沌とした悪と黒の世界で生きてきた彼にとってこの旅は、ほんのひと時の白だったのだろう。
多くを殺して、多くを切り捨ててきた男は、また絶望のレールに戻る。
救いなどもとよりない。
誰も彼を救わない。
でも。
だけど。
あの瞬間の白を、忘れることはないだろう……。
それは、彼が忘れもしない、その人生の中で唯一無二である、幸せな過去を思い出す、ほんの一瞬の、そう。
―――〝白の物語〟だったのだから。