2 脱出、そして消えない絆
催淫剤の熱に全身を苛まれながらも、二人は無言の連携を見せた。義満がナイフの鋭利な刃先でダクトの補強ボルトを正確に弾き飛ばし、圭が銃のグリップエンドで歪んだ金属板を力任せに打ち落とす。
ドスンと音をたてて二人が飛び降りたのは、会場の裏手に位置する暗い搬入口だった。
夜風が火照った身体を徐々に冷やしていく。泥のように疲弊し、壁に背を持たせかけた二人は、暫く荒い息を整えていた。
「……チクショウ……ダメだ……ターゲット逃がしちまった」
圭が壁に頭を預けたまま吐き捨てる。警戒態勢が敷かれた今、強行突破するのはプロの仕事とは言えない。
「……まさか……催淫剤とはな。緊急ロックダウンだ、仕方ねえよ」
「今日の勝負は『引き分け』……だな」
義満はそう言うとナイフを素早く鞘へと収めた。
「……あーあ、……おい圭、次はどこで仕掛けるんだ?」
「あ?……ボスの指令待ちだろ?……チクショウ、あのオッサンに今回の成功報酬をもっとふっかけてやる」
「ふん、横取りすんなよ」
「お前もな……また組むなら……連絡しろ」
義満は振り返ることもなく、ひらひらと手を振りながら夜の暗がりの中へと姿を消していく。
圭は銃をホルダーに納め、胸ポケットに強引に差し込まれた小さな袋を指先で確かめると、不敵に口元を歪めた。
「……いわれなくても、お前を放す気なんてさらさらないさ……」
ターゲットは逃がした。仕事としては完全な失敗だ。
けれど、もう二人の関係が単なる「足を引っ張り合う単なるライバル同士」へと戻ることはない。
切っても切れない相棒であり、永遠の執着の対象として、二人は同じ夜の別々の方向へと溶けていった。
これが序章になるといいなぁ……。




