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鋼(はがね)の檻と甘い毒  作者: AKIRA


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1 鋼(はがね)の檻と甘い罠

政治家たちが裏社会で欲望を貪る秘密のパーティー会場。その絢爛豪華な大広間の丁度真上、薄暗く狭い空調ダクトの中で、二人の影が衝突した。


「この野郎……遅いぞ、圭(けい)。よくも俺を待たせやがったな」


ダクトの奥から滑り出してきた義満(よしみつ)が、手のひらで鈍く光るナイフを弄びながら不敵に笑う。


「勝手に待ってろ。……ここは俺のテリトリーだ。お前には関係ない」


圭は愛用の拳銃のサイレンサーに手をかけ、低い声で威嚇した。だが、大人が二人すれ違うのがやっとの金属の狭所。銃口を向けるにも自由が利かず狙いが定まらない。その時、無機質な機械音がダクト内に響き渡った。


ガンッ!!


前後を遮断する鉄製の防火シャッターが一斉に落下する。ターゲット側のセキュリティが侵入者を察知し、館内の緊急ロックダウンを起動させたのだ。


直後、下層の会場から空調設備を通じて、甘ったるい香りを孕(はら)んだ温風が勢いよく噴き出してきた。パーティーの興奮をより高めるために循環させていた催淫時入りのガスが、密閉されたダクトの内部へ急速に充満していく。


「くっ……やっべ……これ、空調経由で撒かれてやがる……!」

「息を止めろ、義満……と言いたいが、この狭さじゃそう長くは持たないな」


数分のうちに二人の呼吸が荒くなり、肌は焼けるように熱を帯びていく。荒い息遣いと脈打つ鼓動がダクトの金属壁に反響するなか、圭は荒い息をはきながらポケット探り、銀色のシートを取り出した。普段から自身の身体を守るために欠かさず携帯しているPrEPの錠剤だ。


「……義満、これを飲んどけ」

「あ?なんだ……それは?」

「予防薬(PrEP)だ……!催淫剤がどんな成分か分からない以上、体調管理の足しには少しはなるはずだ」


圭は一錠を手渡し、自分も一錠を飲み込んだ。義満は怪しみもせずそれを口に放り込むと自身のポケットから防護・防水用として携帯していたコンドームの袋を取り出した。


「なら、俺のこれも持っておけよ。万一の防護用だ」


義満は躊躇なく距離を詰めると、圭の胸ポケットへ強引にその袋をねじ込んだ。

指先が胸元に触れ、熱を含んだ息が首筋にかかる。ノンケである義満にとっては単なる「備品の共有」でしかない。だが、密かに義満へ惹かれ始めている圭にとっては、その無防備な近さと体温、そして胸元に残る袋の感触は二重の拷問だった。


「おいっ……、触るな。近すぎんだよッ‼」


ほんの少しでも油断すれば、理性が飛ぶ。

熱の侵された脳の隅で継承が鳴り響く。圭は冷や汗を流しながら、義満の胸元へ銃口を突き付けた。冷たい金属の感触だけが、弾け飛びそうな理性をどうにか繋ぎ止める鎖だった。


「ふっ……おいおい……こんなんで理性を飛ばして倒れたら、ライバル失格だぞ」


義満もまた不敵に笑い、ナイフの冷たい刃先を圭の首元にピタッと添える。

銃口と刃。互いに視線を突きつけあいことこそが、この極限状態における二人の正気の保ち方だった。意識が途切れかける頭で、二人は即座に脱出の計算を始めた。



とりあえず、短編投下。

そのうちシリーズになるかもです。

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