1話 出立
春です。新しいことを始めるにはちょうどいい季節です。
ということで、書きためていたお話を投稿していきたいと思います。
個人での活動は初めてなので至らない点はたくさんあると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
十数年前、とある異世界のとある国「エラーシ王国」にて、とある少女が生まれた。生まれた時に村の神官から与えられた名前は「イレイシア」。周りの人からは、専らレーシャと呼ばれ、慈しまれて育った。
そして今、14歳になった少女ーーイレイシアは、麻の衣服の上に少し高価な法衣を羽織り、生まれ育った村を出ようとしていた。肩からは、野営に使える道具の入った袋を提げ、腰には金など細々したものの入ったポーチ、脇には一冊の分厚い本を抱えている。
「お父さん、お母さん、それに村のみんな、今までありがとう。私、ちゃんと期待通りに頑張ってくる。だから、待ってて。もっと大きくなって、戻ってくるから。」
イレイシアは、村一番の才女として、王国のそれぞれの村に与えられる「王立学園」への入学試験受験枠として、入学試験を受けに行くのだ。イレイシア本人は自らの合格を疑っていないが、当然、試験として順当な難易度はあるため、イレイシアの両親や村人たちは少しばかり不安を抱く。もし、学園で優秀な成績であれば、王都やその周辺の町の有力な人物とも繋がりを持てるし、村へ監督官として帰って来れば、村の生活がより安定する。そのため、彼らにとって3年に1回の受験枠は非常に大事なのだ。
「レーシャ。お父さんたちは村から応援することしかできないが、いつでも見守っている。頑張ってくるんだぞ。お前は我が家の、そして村の希望なんだ。」
「そうね。お母さんも応援して報告を待っているわ。レーシャちゃん、頑張ってくるのよ。」
両親を筆頭として、村人たちから口々に応援の言葉をもらいながら、イレイシアは自信を持った顔で頷き返し、決意を表す。
「じゃあ、いってきます!」
こうして、イレイシアは14年間過ごした村を出た。
今回イレイシアが参加するのは、3年に1回受験枠が与えられる「王立学園」の入学試験。
王国内で村の数が多く、1回に全ての村の受験者や、それぞれの町の裕福な家庭の子供、貴族子女を受け入れることは難しいため、富裕層を優先して、各村には3年でローテーションする形で受験枠が与えられる。
村では、6年前の受験は凶作が重なり、物資も人手も足りずに受験者を出せず、また3年前は惜しくも合格できなかったため、イレイシアは実に9年ぶりの受験となる。約10年ぶりともなると、村人たちからの期待も当然大きい。
また、王立学園のある王都「ベル・エラシュ」までは、途中の街からは乗り合いの馬車が出るが、村から街までは徒歩で2週間程度、馬では10日前後の距離があり、道中には野生の動物も出たりして危ない。そのため、品物の販売・買取に来ている隊商に町まで連れて行ってもらう運びとなった。商人としても、将来有望な子に恩を売ることができるため、少しばかりの金で動向を許された。
イレイシアは、先に村の外に出て、出発の準備をしている隊商のもとへと向かう。
「おはようございます。改めまして、イレイシアです。今日から数日間よろしくお願いします!」
「あぁ、イレイシアちゃん。こちらこそよろしく頼むよぉ。では私も一応改めて、商人をしているグラハだ。それから、こっちは護衛頭のカルネルだ。」
イレイシアに応えたのは、恰幅のいい朗らかな顔つきの中年男性「グラハ」。そして、横で軽く頭を下げたのは、よく鍛えられ引き締まった体の青年「カルネル」。すでに3人とも顔合わせは済んでおり、社交辞令のようなものである。
今回の旅では、イレイシアは厄介になる側のため、基本的には自分のことは全て自分でやらなければならない。護衛や食事といった部分のみ、隊商とともに過ごす。地方の村で育っただけあって、イレイシアは野営等の技術はしっかりと身につけているし、万が一の際の護身術も少しはできるので、なんら問題はないだろう。
隊商のメンバーから準備ができた旨を伝えられ、イレイシアはグラハや、他の非戦闘員とともに馬車へと乗り込む。全員が乗り込むと、隊商は程なくして動き出した。
イレイシアの旅の始まりである。
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本文中での、徒歩で2週間、馬で10日というのは、馬では通れない道があるため、実際の速度より遅くなるということです。
今日は、夕方と夜で4話投稿し、明日以降は夜に1〜2話投稿していく予定です。




