第40話 エピローグ
三ヶ月後。
郵便受けを開けた。
チラシが二枚と、電気代の明細と、白い封筒が入っていた。
封筒は厚かった。A4より少し大きい。宛名は自炊研究会。差出人はYouTubeだった。
部屋に持って帰った。テーブルの上に置いた。
開けなかった。
チラシを捨てた。電気代の明細を開けた。いつもの金額だった。冷蔵庫の横に貼った。
白い封筒はテーブルの上にあった。
夕飯を作った。焼きそば。キャベツと豚バラともやし。ソースをかけて、紅生姜を載せた。食べた。皿を洗った。
白い封筒はテーブルの上にあった。
風呂に入った。歯を磨いた。布団に入った。
白い封筒はテーブルの上にあった。
*
翌朝。
はなれに行った。
さつきがもう来ていた。撮影の準備をしていた。カメラの位置を合わせている。
澪が来た。食材の袋を二つ持っていた。カウンターの上に置いた。
「これ、昨日届いた」
俺は封筒をカウンターの上に置いた。
さつきがカメラから手を離した。澪が食材の袋を置いた。
三人でカウンターの前に立った。
俺が開けた。
中に、銀色のプレートが入っていた。
YouTubeのロゴと、チャンネル名が刻まれていた。自炊研究会。
三人が何も言わない時間が、少しだけあった。
さつきが手を伸ばして、プレートの表面を指で触った。冷たかったと思う。
澪が一歩下がって、プレートを見ていた。角度を変えて、もう一度見た。
俺は持っていた。両手で持っていた。重さがあった。数字の重さとは違う、物の重さだった。
窓から光が入っていた。冬の光だった。低くて、白くて、カウンターの上を横切っていた。銀色のプレートが光を受けて、少しだけ光った。
さつきが笑った。
「撮影しよう」
澪が頷いた。
俺はプレートをカウンターの端に立てかけた。
米を研いだ。冷たい水の中で、白く濁った。流して、もう一回研いだ。
撮影が始まった。




