睡魔は敵じゃなく、合図だ
昼下がり。
陽が一番ぬるくて、世界が少しぼやける時間。
クリムは棚の上で完全に溶け、
ルゥは入口で「今なら寝落ちしても許される顔」をしている。
カラン。
「ご飯食べたら、
めっちゃ眠くて……
睡魔に勝てないんですよね」
「昼か?」
「昼です」
「正常だな」
客は即、食い下がる。
「いやでも!
仕事あるし!
会議あるし!
やる気はあるのに!!」
クリムが「きゅ……(身体は正直)」、
ルゥが「わふ……(抵抗無意味)」と首を振る。
俺は腕を組む。
「で、本音は?」
客は少し黙ってから言った。
「……怠けてる気がして、
自己嫌悪になります」
あー。
眠気より、罪悪感だな。
俺は小瓶を三つ並べた。
⸻
◆一本目
【食後の血流偏りを整えるポーション】
「まずこれ」
瓶を指で軽く叩く。
「飯食うと、
血は消化に集中する」
客が頷く。
「これは、
“眠くなるほど持ってかれない”程度に
分配を整える」
クリムが「きゅ(やりすぎ防止)」。
⸻
◆二本目
【短時間で頭を再起動するポーション】
「次」
俺は即言う。
「眠気と戦うな。
一回落とせ」
ルゥが「わふ(仮眠推奨)」。
「これはな、
10分で頭を“起動し直す”やつだ」
⸻
◆三本目
【眠気を“怠惰”に変換しないポーション】
客が一番反応した。
「それ……欲しいです」
「だろ」
俺は静かに言う。
「食後に眠くなるのは、
サボりじゃない」
瓶を押し出す。
「身体が
“今は回復フェーズだ”って
教えてるだけだ」
⸻
客は三本を見つめ、ふっと息を吐いた。
「……眠くなる自分、
責めすぎてました」
「多い」
俺は肩をすくめる。
「効率悪いのはな、
眠気じゃなく、
無理して続けることだ」
客は小さく笑った。
「……ください。
ちゃんと午後を乗り切りたいです」
「おう」
瓶を渡す。
「勝とうとするな。
付き合え」
客は軽く会釈して店を出ていった。
扉が閉まる。
俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。
「……睡魔と戦う話、
ほんと多いよな」
クリム「きゅ(敗北確定)」
ルゥ「わふ……(受け入れろ)」
まったく。
次はどうせ「休日に寝てばかりで自己嫌悪です」系が来るんだろうな。
……やれやれ。
でも来たら来たで、ちゃんと向き合うけどさ。




