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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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53/112

刺激が欲しい夜ほど、舌は疲れている

カラン。


「もう普通じゃ満足できない身体になってしまった!」


「店、間違えてるぞ」


「違う!!

辛味が足りなくて……!!」


真っ赤な顔の男が、懐から香辛料の小袋をじゃらじゃら出した。


「何にでもふりかけてたら……

彼女に“気持ち悪い”って振られそうになってる!!」


クリムが「きゅ……(過剰摂取)」、

ルゥが「わふ(胃が泣く)」と距離を取る。


俺は腕を組む。


「で、何のためにそんなに辛くしてる?」


男は一瞬、黙った。


「……普通の飯だと、

一日が終わった感じがしなくて……

刺激がないと、満たされないんだ」


なるほど。

舌の問題じゃない。余韻不足だ。


俺は小瓶を三つ並べる。



◆一本目

【舌と胃を休ませるポーション】


「まずこれ。

辛味は“快感”じゃなく“痛覚”だ。

使いすぎると、感覚が鈍る」


男がごくりと喉を鳴らす。


「休ませないと、

もっと強い刺激しか感じなくなるぞ」


クリムが「きゅ(下げると上がる)」。



◆二本目

【味覚リセット・ポーション】


「次。

辛味以外の“うまい”を思い出すやつだ」


瓶を軽く揺らす。


「甘い、旨い、香ばしい。

刺激だけが満足じゃないって、

舌に教え直す」


ルゥが「わふ(肉の旨味)」と鼻を鳴らす。



◆三本目

【一日の達成感を別ルートで満たすポーション】


「最後がこれだ」


男が身を乗り出す。


「“辛くしないと終われない”ってのは、

一日の締め方が他にないってことだ」


俺ははっきり言う。


「これは、

運動、入浴、音楽、静かな時間――

刺激以外で“今日はやった”って感覚を作る」


男はしばらく瓶を見つめ、肩の力を抜いた。


「……俺、

辛さで誤魔化してただけか」


「大体そうだ」


俺は付け加える。


「彼女が嫌がってるのはな、

辛さそのものじゃない。

“止まれなくなってるお前”だ」


男は深く頷いた。


「……全部ください。

彼女と、普通に飯食いたい」


「おう。

刺激は敵じゃない。

主役にするな」


男は軽く頭を下げて出ていった。


扉が閉まる。


俺は帳簿に書く。


【辛味依存:満足の代替行動不足】


肩を回して、ぼそっと。


「……次は来るな。

『山椒がないと眠れません』って」


クリム「きゅっ(来る)」

ルゥ「わふ……(確定)」


……やれやれ。

でもまぁ、舌も心も、

休ませればちゃんと戻るんだよな。




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