キマらないのは、だいたい張りすぎ
カラン。
筋肉の主張が激しい冒険者が、両腕をぶんぶん振りながら入ってきた。
「店主! 元気にやってるか」
「まぁぼちぼちだな」
「最近、キマらなくて困ってるんだ……助けてくれ」
「危ない薬は出さない」
「違う!!
筋肉の張りだ!!」
クリムが棚の上で「きゅっ(早合点)」、
ルゥが入口で「わふ(落ち着け)」と首を振る。
冒険者は真顔だ。
「剣振るときも!
ポーズ決めるときも!
全部ガチガチでよ……
本来のキレが出ないんだ……」
俺は腕を組む。
「……誰のためにキメたい?」
「俺自身のためだ!!
“あ、今日の俺仕上がってる”って感覚が欲しい!!」
「なら話は早い」
俺は小瓶を三つ並べた。
⸻
◆一本目
【筋肉ゆるめるポーション】
「まずこれ。
張りすぎた筋肉は、
力を出す邪魔になる」
冒険者が目を見開く。
「ゆるめてから締める。
基本だ」
クリムが「きゅ(基本)」。
⸻
◆二本目
【可動域を思い出すポーション】
「次。
お前、力入れっぱなしだろ」
「……はい」
「“動ける筋肉”は、
休めてる筋肉だ」
ルゥが「わふ(動け)」と床に伏せる。
⸻
◆三本目
【自分の仕上がりを感じ取るポーション】
「最後。
他人の目じゃなく、
“今日の自分”をちゃんと感じるやつだ」
冒険者は瓶を見つめて、深く息を吐いた。
「……俺、
追い込みすぎてたか」
「筋肉も心も、
張りすぎはキマらん」
冒険者は豪快に笑った。
「はは!
さすが店主だ!」
扉を出る前、振り返って言う。
「次は“休み方”も教えてくれ!」
「それも専門だ」
扉が閉まる。
俺は帳簿に書く。
【キマらない原因:張りすぎ】
肩を回して、ぼそっと。
「……次は来るな。
『パンプしすぎて眠れません』って」
クリム「きゅっ(来る)」
ルゥ「わふ……(確定)」
……やれやれ。




