異世界転生したけどなんかおもてたんとちゃう 序章1
初めて小説を書きました。
拙い文章ですが読んで頂けたら幸いです。
どこにでもいる普通の高校生。 それが俺、山田太郎だった。 だからこそ、この日に何か起こるなんて思いもしなかった。
カチ。 カチ。 カチ。 暗闇の中で電子音が鳴り響く。 『計画進行率二十六・三パーセント』 『観測対象転送完了』 『個体識別番号――Y-001』 『再構築ヲ開始シマス』
勇ましい軍歌が夜の静寂を破る。 兵士たちは整然とした隊列で行進し、その後ろを重厚な化学戦車が続く。 街路を埋め尽くす市民たちは歓声を上げ、建物に掲げられた赤い旗は風を受けて誇らしげにはためいていた。
その光景を、鉄条網の向こうから見つめる者たちがいた。 ホモ・アルカヌス。 通称――魔人。 収容所の子供たちは、目を輝かせながら超大国の軍事パレードを眺めている。 「すごいなぁ……」 少年が呟く。
その目に映るのは鋼鉄の怪物。
全長十メートルを超える化学戦車だった。 魔法を使わず、燃料と化学反応だけで動く東側陣営の象徴。 サピエス連合が誇る最強の陸戦兵器。 「おい」 隣にいた監視兵が怒鳴った。 「鉄条網に近づくな」 子供たちは慌てて後ずさる。 監視兵は忌々しそうに舌打ちした。 「魔人風情が」 その言葉に子供たちは何も言わない。 言い返せば殴られる。 最悪、収容所の労働区域へ送られる。 それを知っていた。
「でも……」 少年は小さく呟く。 「僕もいつか兵隊になりたいな」 監視兵は鼻で笑った。 「馬鹿なことを言うな」 「軍隊は人類のものだ」 「お前たちの席は工場だけだ」 少年は黙り込んだ。 しかしその瞳から憧れは消えなかった。
ここはサピエス社会主義人類連合共和国。 通称、サピエス連合。 人類による平等な楽園の建設を掲げる超大国である。 その思想は『小社会主義』。 ホモ・サピエンスのみを真の人民と定義し、その団結による発展を目指す理念だった。
かつて東方大陸は魔人国家によって支配されていた。 魔法を操る支配者。 搾取される人類。 その長き支配を終わらせたのが人類革命である。 少なくともサピエス連合ではそう教えられていた。
革命の結果、人類は自由を得た。 そして魔人は鎖を得た。 「歴史を忘れるな」 それが学校で最初に教えられる言葉だった。
サピエス連合を盟主とする東側陣営。 タメリカ合人国を中心とする西側陣営。 世界は二つに分断されていた。 東は化学技術を重視し、魔法を補助的に使用する。 西は魔法技術を中心に発展した。 東は小社会主義。 西は魔人と人間の共存。合人主義を掲げている。
互いを滅ぼせる兵器を持ちながら、互いを恐れている。 だから戦争は起きない。 だが平和でもない。
誰もが知っていた。 世界は今、火薬庫の上に立っていることを。 そしてその均衡は、もう長くは続かないことを。
一方、サピエス連合首都郊外、第126開発区。 廃工場の瓦礫の中で目を覚ました山田太郎は言葉を失った。 赤旗。 コンクリートの団地群。 遠くを走る化学戦車。 そして空に描かれた巨大なスローガン。
『人類に栄光あれ』 それは数十分前まで教科書で見ていた景色そのものだった。 「……は?」 山田太郎はまだ知らない。 自分がこの世界の均衡を崩す存在であることを。 そして、世界中の国家が彼を奪い合うことになることを。
To be continued…




