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295・正真正銘の神様って話

セヴェリーノの雷がまだ空気中にパリパリと電気の残滓を残している。

どこからか漂ってくるツンと鼻をつく臭いに顔しかめつつ、俺は信じがたい物を目にしていた。

セヴェリーノの桁違いの雷の一撃、あの雷はマレッサやパルカが使う神位魔法と似ている感じがした、あんなのを食らったら並みの存在どころか、かなり上位の強さを持つ存在でも無事では済まないはずだ。

だが、その一撃が直撃したはずのフランコが、パルカの魔法で既にボロボロだったフランコが、悠然と何事もなかったかのように空中に浮かんでいた。

しかも、その体は傷一つなく完全に元に戻っていた。


「なッ!? あれが効いてない!?」


『まったくもう!! 私様が止めたでしょ、魔王躯体の特性は主に魔力の分配だけど、収奪も可能なのよ、あいつはそれを利用して異神の力を収奪して、回復したのよ!! 魔王国の者はコイツとは相性が悪すぎるわ、どいてなさい、私様が――ッ!?』


驚きの声をあげるセヴェリーノにパルカが怒り混じりに声をかけ、再び神位魔法を使おうとした所でふらりと体勢を崩してしまった。

落下しそうになったパルカを受け止めると、いつもより身体が軽い事に気付く。


『ヒイロの信仰も無しに分神体の姿で神位魔法を連続で使うおうなんて無茶しようとするからもん。当分は身動きできないはずもん、ヒイロ、ちょっとその馬鹿を持っとくもん』


『誰が馬鹿よ、死なすわよマレッサ……。ちょっとくらっとしただけ、人間、離しなさい。まだあの異神は完全には復活してない、今ならまだ間に合うわ。だから――むぎゅ!?』


無理矢理に羽ばたこうとしたパルカをどこにも行かないようにギュッと抱き留める。

さっき、マレッサはパルカの分神体だけじゃなく本体にも影響が出ていると言っていた、ならばこれ以上無理をさせる訳にはいかない。


「悪い、パルカ。パルカがあの魔王躯体に思い入れが強いのは分かったけど、パルカがどうにかなるなんてのは、凄く嫌なんだ。だから、しばらくこのまま動かないでくれ、頼む」


『……はぁ。あーあ、無理に神位魔法使っちゃったから凄く疲れたわ、しばらく動けそうにもないわね。人間、このまま私様を抱きかかえている事を許します、光栄に思いなさいね。マレッサ、デイジーちゃん、悪いけどあとはお願い、ちょっと眠るわ』


そう言ってパルカは目を閉じて眠ってしまった。

俺はパルカがちゃんと呼吸をしているのを確認し、ホッと胸を撫でおろす。


『さて、パルカも寝たもんから、目の前の事に対処するもんよ。パルカには気の毒もんけど、あの魔王躯体に残ってた歴代魔王の魔力や魂の欠片はさっきのセヴェリーノの一撃と併せて丸ごと喰われたと思っていいもん。つまりは今そこに居るのは魔王躯体を再構築した神体に異神が宿っている存在、正真正銘掛け値なしの神もん』


神、マレッサはそう言った、正真正銘掛け値なしの神であると。

それは分神体とかではなく実体としての身体を持つ神様って事だ、受肉した神と言えば、セルバ様を思い出す。

以前、マレッサやパルカが言っていた、受肉した神セルバがいるから魔王はセルバブラッソには攻め込まないのだと。

国の大地その物であったセルバ様と今のフランコが同じだとするならば、国一つがこの小さな身体に凝縮されていると思っていいのかもしれない。


『ふむ、新しき身体、新しき権能、悪くはなし。遥か昔に五つに枝分かれし、個別の神格として伝わった我らが、異世界でまた一つに回帰するというのはなんとも奇妙な事。しかし、まだ足りぬ、な』


新たな神としての身体を手に入れたフランコが自分の身体を確認するかのように身体のあちこちを動かしている。

ただそれだけの事で魔力が圧となって襲ってくるのを感じた、手足を軽く動かすだけで突風レベルなのだから、もはや動く災害と言っても過言じゃあない。

普段ならともかく、今の弱っているデイジー叔父さんでは大怪我をしてしまうかもしれない……いや、考えたくもないが最悪の場合だってあり得るんじゃあないか、そんな思いが脳裏をよぎる。


「大丈夫よぉん、ヒイロちゃん。あたくしはいつだってラブリープリティーマキシマムな最強な愛に満ちたアナタの叔父さんよぉん。色々と考えてたけど、もう乗りかかった舟ってやつねぇん、ちょっと無理してでもこの子もこの戦争もねじ伏せて終わらちゃいわぁん、それで、みんなでお茶会でもしちゃいましょ」


「デイジー叔父さん……」


俺の不安を見抜いたのかデイジー叔父さんがウィンクしながらそう言った。

ウィンクの風圧を感じながら、俺は胸に抱くパルカをより強く抱きしめる。


『ふひ……もっと、ふひひ』


ん? パルカが何かを喋っているがよく聞き取れない、たぶん寝言だろう、ゆっくり寝て休んでほしい。

そう思った時、急に強烈な熱波が襲いかかってきた。

何事かと思い見回すと、炎を全身から迸らせているバルディーニの姿が目に入る、その顔は怒りに満ちており、そしてその対象はどうやらフランコのようだった。


「異神の末裔、貴様らの事情は把握しているが、こちらにも事情がある、事情が出来た。先程の絶大なる死を纏った魔法はパルカ様の御業に違いなく、それが放たれたと言う事はあれはパルカ様の敵である事は疑いようがない。なにより奴はサタナス様の物である魔王躯体を奪っている。ならば、アレは魔王国に仇なす敵だ、滅ぼさねばならぬ敵だッ!! この獄炎のバルディーニが焼き尽くさねばならぬ敵だッ!!」


闇色の炎を両手から激しく噴出させながら、バルディーニがフランコ目がけて突撃する。

バルディーニにはパルカが見えてない、だから声も聞こえてない、今のフランコが魔王国の者と相性が悪いと言う事も知らないのだ。

その無謀な突撃をセヴェリーノが止めようとしたが闇色の炎に阻まれ、止める事は出来なかった。

死者すら殺す冥域の炎、ナルカやフィーニスにすら危険な炎が迫る中、フランコは微動だにせずただ一点を見ていた。

その視線はセヴェリーノに向けられている。

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