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291・自分の守護する子はカワイイよねって話

「で、パルカ。パルカに似たなにかの正体がソロモンの魂核だった訳だが、どういう事なんだ? まぁ、その様子からしてあまり言いたくない事なんだろうけど」


『そ、それは、その……、言いたくないというか、言いにくいというか……』


ごにょごにょと口ごもり、声が小さくなるパルカ。

そんなパルカの横で、手を筒状にして覗き込むような恰好をしていたマレッサが、何かに気付いたのか声をあげた。


『ん? ちょっと待つもん、あの時、あの丸顔魔族が空けた防御魔法の穴が少し残ってるもんけど、なんか、中に見えるもんよ……』


『ちょ、ちょっと待ちなさいマレッサ!! ちゃんと言うから、自分の口から言うから、見ないで、見るな!!』


慌てた様子のパルカがマレッサを止める為か、クチバシを突き出したがマレッサはサッと身をかわし、パルカのクチバシは俺のこめかみに直撃、凄く痛い。

激痛に苦しむ俺を無視して、マレッサが困惑した声でパルカに話しかけた。


『――は? なんであれがあんな所にあるもん? おい、パルカ、前に魔王はあれに置換されるとか言ってなかったかもん? なんで魔王のサタナスじゃなくて先々代のソロモンの魂核の中にあるもん?』


『分かんないわよ、そんなの!! ちゃんと魔王になったら勝手に置換されるように加工してたのよ!? でも、私様の手を離れてそこそこ経つし、もうアレとは完全に接続切れてるし、わざわざ引継ぎ確認なんてしないわよ!!』


魔王になったら勝手に置換されるように加工、もうアレとは接続を切ってる……。

はて、最近そんな感じの事を聞いたような。

魔王とパルカの関係で最近聞いた話、そこまで考えてここに来る前に乗っていた竜車の中での話を思い出した。


「もしかして、ソロモンの魂核の中にあるのって魔王躯体ってやつ? パルカの前の身体だったっていう」

 

『う……』


押し黙るパルカ、どうやら俺の言った事は当たっていたと思っていいようだ。

マレッサも同意するように頷いている。


『そうもん。パルカの言ってた事が本当なら今の魔王であるサタナスの身体になってるはずの物もんね。魔王躯体がソロモンの魂核の中にあったって事は、つまりは先代魔王リリシュと今の魔王であるサタナスは魔王躯体に置換されてなかったって事もんよね』


『まぁ、そうなるわね……』


『魔王が強いのは私様の神体を加工した魔王躯体が使われてるから、なーんて言ってたもんけど、リリシュとサタナスの身体が魔王躯体に置換されてない事に気付いてなかったなんてマヌケな話もん。そりゃあ恥ずかしくて誤魔化そうとするはずもん』


『う、うるさいわね!! さっきも言ったでしょ、とっくに接続切れてるし、今とは規格の違う身体なんだから探知とか追跡とかほぼ不可能でしょ!! だいたいリリシュもサタナスも魔王になった時に力を増してたから、魔王躯体に置換されたと思ってたのよ!!』


呆れた様子のマレッサにパルカが食って掛かるが、マレッサはやれやれといった様子で肩をすくめるようなポーズをしている。


『神体は地上においては超々高純度の魔力光と似てるもんから、リリシュの時はソロモンが何らかの方法でごまかしたんじゃないかもん? 上手く魔力を加工して魔王躯体が移ったと誤認させて、分裂した時のどさくさに紛れて魂核に隠したんだろうもん。サタナスの時はたぶんリリシュの角じゃないかもん? サタナスはへし折ったリリシュの角を取り込んでたはずもん、あの二人は双子もんからね、リリシュの角が馴染んでサタナスの力が増しても不思議じゃないもん』


『ぐぬぬ、も、もし仮にマレッサの言う通りだとしたら、それに気づいてなかった私様がとんだおマヌケって事に……ぐぬぬ、み、認めたくない……』


頭を抱えて身をよじるパルカ、何とも複雑そうな表情をしている。

まぁ、本来なら魔王躯体ってのに置換されるはずのリリシュとサタナスが置換されてなくて、パルカ自身がそれに気づいてなかったって事だから、まぁソロモンに出し抜かれた、みたいな感じなのだろうか。


「パルカ、大丈夫か? 神様だって完璧じゃあないって事だろ、失敗やミスは誰にだってある、これから気を付けて行けばいいんじゃないか?」


『そうね!! 人間がそこまで言うなら、これから気を付ける事にするわ!! 今回はソロモンが神たる私様の眼を欺いていたという、その成長ぶりを喜ぶ事にするわ!! さすが私様の守護する国の子ね!!』


「わぁ、切り替え早」


さっきまでの様子が嘘かのようにパルカが喜々としてソロモンを褒め始めた。

まぁ、なにはともあれパルカが元気になって、パルカに似た何かの正体がはっきりしたのだから、よしとしよう。


「さて、ナルカが感じとってたのはパルカの前の身体を加工した魔王躯体だって事は分かったけど、もしかしたらバルディーニが執拗にソロモンの魂核を狙ってるのって魔王躯体を確保する為だったりするのかな」


俺の言葉にマレッサは腕を組んでうーむと唸る。

マレッサの様子からして、バルディーニが魔王躯体を狙っている訳ではないと言う事だろうか?


『微妙な所もん、ソロモンの魂を回収して再生させるつもりかもしれないもん、もしくはその魂核に内包された膨大な魔力が狙いかもしれないもん。もしそうだったとしても、バルディーニがソロモンの魂核を手に入れれば、その中に魔王躯体があるって事にすぐに気付くはずもん』


なるほど、パルカが気づいていなかったようにバルディーニも魔王躯体に気付いてない可能性があるのか。

ここで、ふと今更な疑問が湧いて来た、そもそもの話としてなんでパルカは魔王躯体ってのを作ったんだ?


「根本的な事を聞くんだけど、なんでパルカは自分の神体を魔王の身体にしたんだ? 前は確か古い神体の廃棄方法に決まりがなかったから、みたいな事言ってたけど」


『あーそれ聞いちゃうんだ。まぁ、いいけど。初代の魔王があんまりに弱すぎたから、憐れに思ったのよ。まぁあの子は結局、戦いなんてものに興味は一切示さなかったけれどね。魔法の才能はあったから、そこを伸ばせば、歴史に名を残す魔王になったでしょうに。魔王の座を追われてから姿を消したから、その後は私様も知らないけれど、生きてたらどこかで料理でもしてるんじゃないかしらね、あの子は料理好きだったから』


そうか、そんな理由があったのか。

パルカの優しさから魔王に自分の廃棄した神体を加工してまで魔王躯体っていう強靭な身体を与えたのか。


『だからって自分の神体を地上種に与えるとか何考えてるもんかね、今やったら神権剥奪ものもんよ。そういえば、自分の権能を剣に転写して魔剣にしてたもん、他にもやらかしてるんじゃないもんか?』


『何を言うのかしらね、この毛玉は!! 昔の話で今はやってないわよ、たぶん!!』


『そこは完全に否定しろもん!!』

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