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292・想定外の事を想定しろってのは難しいよねって話

マレッサとパルカが仲良く言い合いをしているが、激しくなり続ける嵐のド真ん中に居続けるのはさすがのデイジー叔父さんでも、まぁ恐らくたぶんきついだろう、化粧落ちるとか髪が乱れるって言ってたし。

ただ、ふと気になる事があるのでパルカに尋ねる事にした。


「なぁ、パルカ。ちょっと聞きたい事があるんだけど」


『あら、なにかしら人間。魂籠に入りたいなら今すぐにでも納めるわよ? 黒と白と赤と青と緑と黄色と虹色があるわよ、何色がいい? 安心なさい、入り心地は最高に仕上げてあるわよ、まぁ魂状態だと感覚とかほぼないから、心地いいとか感じられないとは思うけど。それはそれ、これはこれ、あぁそうそう冥域になんか落とさせやしないからそこは心配しなくていいわよ。冥域に落ちると魂から自我が消えるまで浄化されて、目に見えないくらい細かい粒子されるのよ、そうなったらもう元には戻れないわ。その後は神域に上がって新しい魂となって地上に生れ落ちて、また地上種として生きて死ぬ、そして冥域に、魂はこの循環を延々と繰り返すの。で、どの色の魂籠がいいかしら?』


「うん、そうだな、提案ありがとうパルカ。それはまた今度にしてくれると助かる。俺が聞きたかった事は魔王躯体についてなんだ」


『あら、そうなの。まぁいいけれど、で何かしら?』


パルカから物凄い早口でなんか怖い事を提案された気がするが、そこはスルーして気になっている事だけ聞く。


「魔王躯体って魔王を倒した相手に引き継がれるって事でいいんだよな?」


『まぁ、そうね。概ねその理解であってるわ。ソロモンは魂核に七十二層の防御魔法を重ねる事で魔王躯体を魂核内に封じてたみたいだけれどね』


「じゃあさ、ついさっきソロモンを真っ二つにしたデイジー叔父さんに魔王躯体が引き継がれる事になるのか?」


『え……?』


パルカの動きがピタリと止まる、どうやら想定していなかった事態のようだ。


『いや、待って、でも、たぶん……。ねぇ、マレッサ、今まで魔王を倒せた人間っていたかしら?』


『あー、軍を率いて魔王を撃退したーって話なら聖王とか昔の勇者がやってのけてるもんけど、単独での討伐は覚えがないもんね、もしかしたら、もしかするんじゃないかもん?』


『魔王躯体がデイジーちゃんに引き継がれたら、いやでもデイジーちゃんの身体を魔王躯体に作りかえるとかできるのかしら……? もし今のデイジーちゃんの身体を魔王躯体に作りかえたら、逆に弱体化したりするんじゃ……?』


『いやいやいや、魔王をより強くする魔王躯体に置換されて、デイジーが弱くなるなんて……、いや、なんか弱くなりそうもん……。とはいえもん、いくら魔王躯体を引き継いだとしても、デイジーの身体を作り変えれるとは到底思えないもん。なにより、ソロモンはリリシュが一度は倒してるもん、そのリリシュもサタナスが倒して魔王を継いでるもんから、デイジーに引き継がれるとは限らないもんよ』


パルカとマレッサが何やらごにょごにょと話合っているが、どうなるかハッキリと判断できないようだ。

まぁもし仮に魔王躯体がデイジー叔父さんに引き継がれたとしても、デイジー叔父さんが魔王になる訳はないのだし、恐らく杞憂で終わるだろう、……たぶん。


「なんか姉母様っぽい感じが強くなってるー、こっちに来てる感じー」


『『「え?」』』


唐突にナルカがパルカっぽい感じが強くなっていると言い放った。

俺、マレッサ、パルカからマヌケな声が漏れる。

ナルカは魔王躯体に対してパルカっぽいと評していた、つまり今のパルカっぽい感じというのも魔王躯体で間違いないだろう、つまり、それがこちらに近づいてきているって事は――。


「あらぁん、確かにソロモンちゃんの魂核って言うのがわたくしの方に来てるわねぇん」


のんきなデイジー叔父さんの声に慌ててソロモンの魂核に目を向けると、少し離れた位置にあるソロモンの魂核がこちらにゆっくり近づいているのが見えた。


『もしかしたら、ソロモンを倒したリリシュ、リリシュを倒したサタナス、魔王躯体を隠し持っていたソロモンを倒したデイジー、その三人の中で一番近くにいるデイジーに引き寄せられてるもんか? 魔王を倒した判定がガバガバ過ぎじゃないかもん、パルカ!?』


『うるさいわね、こんな事になるなんて作った時に想定できる訳ないでしょ!! あーもー、ソロモンの魂核がこっちに来てるから、あの子たちも一緒に来てるわよ!! デイジーちゃん、人間をちゃんと守ってなさい、フィーニスも自分の身は自分で守りなさい!! バルディーニの冥域の炎やセヴェリーノやフランコの神性を帯びた攻撃は精霊王でも結構痛いわよ!!』


近づきつつあるソロモンの魂核に合わせて、バルディーニ、セヴェリーノ、フランコの三人の戦いの場も俺たちの方に近寄ってきている。


「邪魔をするな人間風情がぁあああああああああッッ!!」


「くたばれクソ兄貴ぃいいいいいいイイイイイッッ!!」


「セヴェリィイイイイノォオオオオオオオオオッッ!!」


絶叫にも似た声をあげる三人の眼に俺たちは映っていないようだ、デイジー叔父さんならこの三人の戦いに巻き込まれても問題ないし、止める事だって苦も無く出来るだろう。

だが、今のデイジー叔父さんは足手まといである俺を抱えている、高速移動も戦闘も制限がかけられていると言っていい、その上、勇者兵をデイジーディメンションに保護しており弱体化した状態だ。

さっきパルカやマレッサが言っていたが、魔王躯体を引き継いでしまって万が一更に弱体化したら、デイジー叔父さんと言えど大怪我してしまうかもしれない。

なんとかしなければと思い悩むが、状況は一秒たりとも待ってくれはしない。

バルディーニが溢れさせた闇色の冥域の炎が、セヴェリーノの雷を纏って、フランコの暴風に巻き込まれて黒い炎雷の竜巻を形作る。

並みの人間なら一瞬で蒸発しているだろう空間の中、ソロモンの魂核にヒビが入り、バキバキと音を立てて崩れていくのが見えた。

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