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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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だから、言えよ、もう一度

長め、ですかね?

今回もよろしくお願いします。

魔族化、いや、この場合は神族化とでも言うべきか、兎に角、それを止めながら魔族因子を送り込み、半分を越えさせる。


差し当たってはこの忌々しい、純白ですよー、とか言ってそうな羽だ。


こいつを汚すイメージで、魔力をアナスタシアに流し込む。

送り込む因子は、サキュバス因子。何気に俺の中で一番多く使われている因子だ。


乱れる魔力、薄くだが色付き始める羽。

アナスタシア自身にも制御できないのだろう、無茶苦茶に暴れ出す。

それを全身で押さえ込みながら、現実では神の因子を取り込む。


どんどん飽和していく俺とアナスタシアの魔力。

ある一定を越えた辺りで、アナスタシアが無理やり俺の顔を引き剥がし、奇声を上げた。


馬鹿め、想像力豊かな現代人を舐めるなよ。

それくらい想定済みだ。


俺は現実世界で叫んだ。


「カミラ!グラン爺!」


アナスタシアの意識を抱き締めたまま、俺は現実に帰還する。


一糸纏わぬ姿に、白と黒が斑に染まった翼。

その姿は正に天使。


いざと言う時の為に、用意してもらっていた結界に閉じ込められたアナスタシアは、彫像のような無表情で、自分の体を確認していた。


「よくも、やってくれましたね。」


声すらも凍るようだ。

だが、俺はもう既に聞いている。

お前が助けを求めていることを。


「強がるなよアナスタシア、どんなに繕っても、今となっちゃ笑い話でしかないぜ。」


「オリジンさん、貴方がここで先手を打てるとは思って居ませんでした。素直に讃えます。

ですが、試練はここからです。

私を倒し、新たなる強さを得て下さい。それが、第一の試練です。」


「はいはい、すぐに助けてやるからな。

その格好が恥ずかしいって事も、すぐに思い出すぞ。」


結界を破り、シーツを纏って窓から飛び立つアナスタシア。

こういう熱いシチュエーションは嫌いじゃない。

操られたヒロインを救うなんて、そりゃヒーローの特権だろ。


「二人は全力で街を守ってくれ、アイツの攻撃は結構ヤバイ。

それと、正直一人じゃキツイからグロリアを呼んでほしい。後は…」


「エリーゼも連れて行きなさい、あの子も十分、君達に匹敵する強さを持っているよ。」


「おっけ、じゃあ頼むよ。さて、行ってくる。」


装備を身に着け、同じく窓から飛び出す。

お誂え向きに、雲が晴れて来てるじゃないか。


天使対悪魔。そんなフレーズが頭に浮かぶ。そこから見てるのか?

俺らの人生は誰かの為になんて存在しない。分からせてやる、目に物見せてやる。


場所は街の遥かに上空。

そこで待っているアナスタシアの前まで飛び、止まる。


「来ましたね、この体は貴方よりも優れている、幼い頃から特別だと感じていましたが、ここまでとは自分でも思いませんでした。」


「ベラベラよく喋るな、本当の気持ちが漏れないように必死なのか?」


さっきからの俺の口の悪さだが、決して本気の悪口じゃない。


一つは、アナスタシアの感情に訴える作戦。

ほら、よくあるじゃないか、操られた女の子の感情が戻って大円団になるなんてさ。それに一応賭けてみる。


もう一つは時間稼ぎ、神の因子を取り込んだはいいが、使い方が正直わからん。スキル、魔法、普段なら何となく出来そうなことが頭に浮かぶんだが、今回は全く駄目だ。

だが、恐らくそれが何かの決め手になる予感がしている。

故に、その閃きを待ってみる。


「御託は結構です。構えて下さい、貴方は殺しませんが、貴方以外には保証できません。」


「まあ、そう焦るなよ。なんせ、」


「フレイムブレスっす!」


「他にも来る奴がいるしな。」


俺とアナスタシアの間に炎の帯が出来上がる。

言わずもがな、グロリアの吐いたブレスだ。

そのまま俺の横に付けたグロリアは普段着で、アナスタシアの法衣を抱えていた。


「いやー、アナちゃん、そんな格好じゃ男共に襲われるっすよ?既に襲った狼がいるみたいっすけど。」


「え…。」


ジト目で俺を見るグロリア。

いやホントもうね、シリアスさんにはご退場願おうと思ってんだわ。


実は、俺はアナスタシアと戦う気はない。アナスタシアの意識を引っ張り出す為に戦いはしたが、それ以外に戦う理由なんて無いもんな。

神の試練?よく分かんないですね。


「そうだよ!オリジンのバカ!エッチ!変態!節操なし!性欲男根魔人!」


「性欲男根魔人はやめろや!!」


エリーゼも到着する。

どうだ、このメンツで真面目な話になる訳無いだろうが。


「貴方への試練だと言うのに、貴方以外を巻き込むのですか?

それで犠牲が生まれようと、それが貴方の正義ですか?


…後、さっきグロリアさんが言っていたの、本当ですか?」


更に目つきを鋭くして、何処からとも無く剣を取り出す。

夢の中じゃ出来なかった鑑定を今する。

ビンゴだ。あれはこの世の物じゃねえ。


最終目的はアナスタシアの解放。それは変わらない。

その手段の、最後の一つ。

そう、それはあの剣を奪う事、そして、俺の支配下に置くこと。


ここ最近、アナスタシアの症状を調べる傍ら、いくつかの英雄の記録を垣間見た。


彼、彼女らは、一様にして目玉が飛び出るような偉業を成し遂げた。

その偉業には、常に何らかの武器が付いて回る。


ファンタジー脳全開で考え、グラン爺にも相談した結果、恐らく神の試練を起こすには、ツールとしての武器が必須なんじゃないかと言う結論に達した。


これは、グラン爺がその類の武器を持っていない事、大規模なアクションは起こしていない事からの推察で、グラン爺の件でやり方を改めたのではないかと、まあそういう事だ。


「正義もクソもねーよ、お前を助けるのが俺らのやりたい事だ。」


「それは不可能です。私の体は既に神に捧げました、私を殺す以外に道はありません。」


「実際は俺が先に食ったけどな。まあいいや、とにかく、神の試練とかくだらない事はやめて、さっさと戻ってこいよ。」


「貴方は!」


顔を赤くして怒るアナスタシア、やっと感情が出たな、いい傾向だ。


「もう、良いです。そっちが来ないのなら私から!」


「よっしゃお前ら!逃げるぞ!」


エリーゼと共に、グロリアと逆方向へ飛ぶ、エリーゼに耳打ちし、二人で同時に振り向く。


「「『止まれ!!』」」


魅了による強制命令、アナスタシアは一瞬だがピタリと止まり、小さく叫んで硬直を解く。

その間に俺エリーゼも別れている。


とりあえず、アナスタシアは俺を追うだろう。

それで埒が明かなくなったら、二人のどちらかを追って、俺を焦らせる作戦に出る筈。真面目な奴だから、その作戦は取らないかもしれないが。


「どうして逃げるんですか!戦いなさい!後、責任取ってください!」


「責任ならいくらでも取ってやるから武器置けや!」


当然追ってくるだけじゃない、放たれる光線や剣から飛ぶ斬撃、それらは地上に向かうこともあるが問題ない。


地上には幾つもの巨大な腕と、それに備えられた光る大盾。

合体魔法かよ、イカスぜ。


「貴方が世界を変えるんです!貴方に世界を託すんです!だから、だから私は!」


悲痛な叫びを聞いて、溜息が溢れる。どこまで自分に正直になれないやつなんだ、と。


「グロリア!カバー!」


「任せるっす!ドラゴンスキン!フォートレス!ハイディフェンス!」


上方から降りてきたグロリアが、両腕をクロスさせ、剣を止める。


その間にアナスタシアに近付き、強引に両手を掴んだ。


「それさ、お前がやんなくちゃいけないのか?お前、自分が本当にその程度だと思ってやってんのか?」


「分かったような事を言わないで!私の心を見たんでしょう!?だったらわかる筈です!誰かを傷付ける前に、私がどうなりたいのかを!」


「ホントそれ、おんなじ事言ってたよ、お前の心も。」


「だったら!」


「でもさ、その後お前、なんて言ったと思う?」


目が泳ぐ、もう既にコイツは認めているんだと気付く。

自分の心がなんて言ったかも、薄々勘付いているんだろう。


でも、も、だって、も必要ない。然らば聞け、俺の叫びを。


「いいか!地上の奴らもよく聞いとけ!」


これは俺の失敗談だ、俺が唾棄すべき過去だ、そして、俺のルーツでもある。


「何も見ずに!何も考えずに!何もせずに!

何がこういう物だ!仕方ないだ!諦めてるだけじゃねえか!


俺は諦める奴が嫌いだ!それは俺が無気力だったからだ!

俺は何も変えずに納得する奴が嫌いだ!それは俺が何も変えなかったからだ!


無意味に生きて!死んで!悲しんで!後悔ばかりして!


本当にお前らってその程度なのかよ!そんな価値しか自分に与えられねえのかよ!


俺は変わる!変わった!変えてもらった!

頼れよ!誰かを!引っ張ってやれよ!隣の奴を!


何かを待つんじゃねえ!お前が決めるんだ!

それがお前の人生だろうが!


…だから、言えよ、もう一度。本当の気持ちを。」


最後はアナスタシアの目を見て言う。

震える瞼から、一筋の涙が溢れる。


「………助けて。」


「おう。ほれ、その剣をよこしな。」


力の抜けたアナスタシアから、剣を受け取る。


瞬間、襲いかかるような猛烈な侵食。

こんなもん持ってたら、そら後ろ向きにもなるわな。


「ぐっ、エリーゼ!頼む!」


「じゃーん!任せてよ!『制御して、頑張れオリジン!』」


魅了の力すら借りて、剣の侵食を抑え込む。

黙れ、邪魔だ、その意志はいらない。

お前は俺に使われていれば良いんだ。


そして、遂に閃きが産まれた。


「分かったぜ、お前の使い方が。」


魔法は適応力、その意味をこんなに早く理解できるとはな。


「我が身に宿るは神の力、然してこの身は混沌の器、汝の宿り木は光に非ず、闇に非ず、故に汝も、その身は混沌の渦中。」


俺の魔力が剣を侵食していく。

美しかった刀身は斑に乱れ、まるで苦悶の声を上げているようだ。


ずっと欲しかった魔剣の類が、こんな所で手に入るとはラッキーだ、とほんの少し感謝も混ぜてやる。


「『顕現せよ、混沌乃災禍カオスオブオリジン』」


強い光、まるで光の柱が立っているかのような光景だったと、後で聞いた。


長めの刀身は黒く、流れるような模様が浮かぶ。

僅かに反りの入った薄めの片刃は、日本刀を思わせる程に鋭利だ。

そして剣全体から、見るものを魅了するかのような、妖しい光が僅かに浮かんでいる。


俺は振り返り、アナスタシアに笑いかける。


「どうだ?誰も傷付けない上に、悲しまない結末になっただろ?」


アナスタシアは俺達三人に抱きついて、ありがとう、と涙を流した。


人物、武器などなど


○アナスタシア…神魔族。諦めない事を教えられた。責任は取ってもらえたのかは不明。


○混沌乃災禍…漆黒の片刃剣。読みはカオスオブオリジン。厨二全開で付けた名前。


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