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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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何が起こるか解らぬでな

よろしくお願いします

結局、事態が進展したのは、俺が教会から続く大街道の、最後の一枚の石畳を敷いた後だった。


沸き立つ歓声の中、やや深刻そうな顔のグロリアを見て、ああ、何か話があるんだな、と思った。


監督的な立ち位置に居たので少し遅くなったが、グロリアを伴って教会に向かう。

グロリア曰く、状態事態は悪くなっていないのだが、過去の例には当て嵌まらないので、目を覚まさせる方法は自体は怪しい状態だと言う。


「それで、どうして俺を呼んだんだ?」


「オリジン殿の体を調べたいらしいっす。それで分かることがあれば、一気に進むって言ってたっす。」


毎日見舞いには行っていたが、俺の体云々と言う話は初めて出た。

アナスタシアの容態に急変もないと言うなら、考えられるのは。


「まさか、魔族化…?」


言ってから、いや、おかしい、と思った。

アナスタシアは純粋な人間界育ちだ。いくら幼い頃にユーリカと会ったとはいえ、人間が魔族化するという話は、人間界では伝説の類になっていると聞いている。

それになにより、期間が短すぎる。


「ありえないだろ、流石に。」


想像を追い出すように首を振り、教会に急ぐ。

何か、俺に出来ることと思い、頭の中に覚えている限りのスキルを思い浮かべながら、俺は更に足を速めた。



教会に着くと、何時もは人の多い広場に、全く人が居ないことに気が付く。

グロリアに目配せすると、一つ頷く。

ゆっくりと開く扉に少し苛つきながら、捩るように体をねじ込む。


「グラン爺、カミラ、いるか!?」


「きおったか、そう焦らんでも良い、今しがた用意を終えた所じゃ。」


中にはカミラが一人で待っていた。

奥を見ると、特別に置かれたような台の上で、二人のドライアドが脂汗を流しながらアナスタシアに掛ける魔法の維持をしているように見える。


「…ヤバイのか?グロリアはそんな事は」


「いや、特に危ない事にはなっておらん。あの結界は進行を食い止める為の様なものじゃ。」


「進行…?」


促され、アナスタシアの前まで進む。

なんというか、混ざり合って、それでいて澄み切ったような魔力の流れ。

病気か呪い、そういう物を想像したが、先んじるように後ろから声がかかる。


「今すぐの心配はいらないよオリジン君、とにかく、君を見せて貰えるかな?

そうしないとこれがそうなのか分からないんだよ。」


グラン爺は何時もとは違う法衣で、錫杖のような物を持って歩いて来ていた。

纏う雰囲気はどこかピリピリとしていて、声にも僅かな怒りが混じっているように聞こえた。


「それがアナスタシアの為になるならいくらでもやってくれ。」


二つ返事で了承し、俺はグラン爺に向き直る。


「では、アナライズ。そして、センスイロード。」


いくつか魔法を唱えた後、全身を貫くような魔力の束が突き刺さる。

見られている、なんてもんじゃない。何もかもを晒されている、侵食されている。そんな感覚を受ける。


「どうじゃ?」


カミラの声に、体が軽くなる、魔法が終わったようだ。

顎に手を当てて考えるのは仕草をした後、溜息を着くグラン爺。


「ほぼ、人魔半分。これなら、行けると判断するよ。」


「二人でわかってないで、ちゃんと説明してくれ。」


少し悩んだようだが、頷き合い説明を始める二人。


アナスタシアはやはり、魔族化が進んでいるようだ。

だが、魔族化に必要な因子が全く感じられない。

それが、どこからの、どんなもの由来なのかは分からないが、魔族因子以外のなにかが、体を魔族(らしき何か)に変えている。二人は、それが目覚めない元凶だろうと判断した。

今、アナスタシアの体が、およそ半分ほど侵食されている、だから残りの半分に魔族の因子を無理やりにでも捩じ込めば、正しく魔族化が進み、目覚めるだろうと。


俺はハッと気が付き、グラン爺を見る。

グラン爺は、カミラに分からないように、ゆっくりと頷いた。


「直ぐにでもやろう。方法は分かってるのか?」


そう言うと、二人は少し気不味そうに顔を見合わせた。

何だ?


「えーと、そうだね。ちょっと、一旦落ち着いて、ね?」


「こんな所で始める訳にもいくまい。そういうのは、場所を弁えてじゃな。」


「何でだよ、お前ら、真剣に考えてんのか!?」


煮え切らない態度に思わずカッとなり、怒鳴る。

このままアナスタシアが目覚めないなんて事になれば、俺は俺が許せないし、ユーリカや、ガラルド、アリアにもどんな顔をして会えばいいのか分からなくなる。


「早く教えてくれ、俺は何をすれば良いんだよ!」


「あーもう!分かった分かった!サキュバス因子を使えば良いのじゃ!どデカいのを打ち込んでやれと言っとるんじゃ!」


「………は?」


目が点とは、こう言う事を言うのだろうか?

カミラはジトっとした目を向けてくるし、グラン爺は知らん顔で音の出ない口笛(歯笛)を吹いているし。


「それは、あれか。」


「うむ、あれじゃ。」


暫くの沈黙、先に口を開いたのはカミラだった。


「サキュバスには、相手の夢に潜り込む能力がある。勿論、異性に対してのみじゃが。

で、この世界で唯一の男のサキュバス、つまりダーリンのみが、あやつの意識に潜ることが出来る。

そこでその娘を見つけ出し、連れ帰る、それと同時に因子を送り込み、強制的に魔族化を進める。

仮にこのまま進行して魔族化してしまえば、何か起こるか解らぬのでな。」


カミラは真剣に言った。そうだ、ふざけている訳がないんだ。

多少の罪悪感はある、だが、もしもこれが神の試練だと仮定するなら、アナスタシアにとっても良い事が起こる訳はないからな。


「分かった、どこか部屋を貸してくれ。そこで潜る。」


決意を込めてカミラを見返す。


待っていろアナスタシア、俺に助けられるなら、俺が全力で助けてやる。


それが、俺という生き方だ。


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