はじめまして、陛下
今回からオリジンサイドに戻ります。
今回もよろしくお願いします。
その知らせが届いたのは、グロリアとの模擬戦で、初めて接戦と言える出来を残せた、奇跡の一戦の直後だった。
勇者、フローラルージュに到着す。
詳しい話を聞くと、今回の勇者は三人組で、勇者、魔法使い、神官と言う、ごくオーソドックスな組み合わせらしい。
いよいよ、明日か。
この日までにしっかりとした手応えを残せた両手を、グッと握る。
自分の仕上がりに、自信はある。
拭い切れない不安も、緊張感を保ついいスパイスだ。
何となく、城下の方向の空を見上げた。
きっと、忘れられない一日になるな。
そんな予感が、渦巻いていた。
さて、万全の体制を整えろ、と、急遽休みになってしまったわけだが、やることなんて特になく、取り敢えずユーリカの顔でも見ておこうと執務室へ。
ノックをして扉を開けると、真剣な表情で指を組み、目を閉じ、まるで何かに祈っているようなユーリカがいた。
「ユーリカ。」
声を掛けると、目を開き、いつも通りの笑顔で俺を迎えるが。
そりゃそうだよなぁ、ユーリカだって不安だろうさ。
「どうした、不安か?」
「ちょっとだけ、オリ君が死んじゃったらどうしよう、とか考えちゃった。」
勇魔規約に基づく戦闘は、基本全力だ。
そこにはあらゆる外的要素はなく、互いに認めさせると言う意志があるのみ。
ユーリカは経験がないそうだが、城にいる何人かは、その戦いを経験している。
それを間近で見てきたユーリカだからこそ、感じる不安もあるんだろう。
だから、俺は笑ってやる。
「死なねぇよ。それか、もし死んだら、何百年か掛けて生き返らせる方法を探してくれ。」
「簡単に言うけど、オリ君…」
流石に少しムッとしたのか、強めの口調で言いかけるユーリカを、強制的に黙らせる。
まあマウストゥーマウスってやつだな。
「俺的にはこれが無くなるとか、もうあり得ないんだわ。勝つよ、とは言わない。
でも、お前を泣かせるような事にはしないし、させないさ。」
ちょっとクサイかな、と思いながらも、中々に効果はバツグンだったらしく、今度はユーリカからガッツリいかれた。
「じゃあそれ、ちゃんと証明してね!」
……明日に差し支えない程度でお願いします。
クークーの声がする。
俺はそれを、訓練所で聞いていた。
睡眠はバッチリとった、ゲンを担いで朝からカツ丼とステーキを食った。
装備の点検も念入りに行った。
軽く解そうと、ランニングをしていたのだが、高まる緊張は期待へと変わり、深まる不安は高揚へと変わり、俺は一種のランナーズハイな状態になっているのを感じていた。
水を頭から被り、風魔法で体を乾かし、戦闘用に気持ちを切り替えながら装備を身に纏う。
うん、今日の俺は、最高だ。
今ならどんな厨二的振る舞いも出来そうな気がする。
キッチリと高め終わった丁度その時、伝令の兵士が俺を呼びに来る。
勇者が来たので玉座の間に集合せよ、と。
玉座の間に入ると、既に他のメンツは集合していて、いつもより立派な格好をしていた。
「今、マキナが案内してるって。大丈夫?行けそう?」
「イケイケだぜ、今日の俺は。」
ユーリカの問いかけに、調子のいい言葉を返しつつ、玉座の少し後ろに立つ。
一応近衛だからな。
それから少しの時間をおいて、玉座の間に響くノックの音。
「勇者様御一行が入室されます。」
いつも通りのマキナの冷静な声に、俺は背筋を伸ばす。
独特の緊張感が張り詰めた頃、両開きの扉が、ゆっくりと開いた。
先頭は、茶髪で薄緑のブレストプレートを付けた剣士、恐らくこの青年が勇者だろう。
いかにも好青年らしい出で立ちに、緩く笑みを浮かべている。
剣は…結構なシロモノだということだけはわかった。
次に女魔法使い。
赤い長髪に魔女帽子、これぞ魔法使いって格好をしている。
若く見えるが、油断はしまい。
最後は、すっげぇ美人が現れたもんだ。
金色の髪と青い瞳、マキナと並ぶと姉妹みたいだ、そんくらい完成されてる美貌。
女神官なのだろうが、手には盾、腰にはメイス。
実力的には相当なものだと思う、オーラが一番強い。
三人は、玉座から少しの離れた所で膝を付き、頭を下げる。
一連の動きを確認して、ユーリカは魔王としての威厳を持って口を開いた。
「あまり固くならなくていいよ、もう少し、フランクに話そう。」
開いて欲しかった。
内心ズコーである。
それを聞いた三人は、女神官がクスリと笑い、魔法使いはホッと息を吐き、勇者は人懐こそうな笑顔を浮かべる。
「伺っていた通りの方で安心しました。
はじめまして、陛下、リーベンスより参りました、勇者ガラルド=ルイ=ヤードと申します。」
「は、はじめまして!私はアリアと申します!」
「私はフローラルージュ支部教会の司祭として派遣されました、創世教会所属、司祭アナスタシアと申します。」
「丁寧にありがとね、私はユーリカ、『美しき紅い華』、南の魔王ユーリカ、宜しくね。」
この辺りは前もって聞かされていた流れ、ぶっちゃけ、聞いてたよりだいぶ軽い感じなんだけど、大丈夫?
「それで、勇者ガラルド。今日は百花城にどのような要件があって来たのかな?」
「はい、勇者認定を飾りたいと、勇魔規約に則りまかり越させていただきました。つきましては、我が誉れと人魔対合の為、我々の実力を示させて頂けたら、と思います。」
うーむ、完璧だ。
スキがないぞこの勇者。
いかん、戦闘までじっと立ってるだけだからか、いらん事を考えてるな、集中せねば。
「そっか、じゃあ、こちらで相手は選ばせてもらうね。」
ユーリカがチラリとこちらを見る。
俺は頷いて、準備できてる事を伝える。
「オリジン。」
「はっ!」
前に出る。勇者ガラルドと顔を合わせる。イケメンだなこんちくしょう。
「紹介するね、私の近衛、私の半身、『性欲男根魔神』オリジンだよ!」
「もはや悪意しかねえ!!」
はっ!思わずツッコんでしまった。
流れ出す微妙な空気、ドラグとグロリアは笑いを堪えてるし、マキナは赤い顔。
クークーに至っては大変ケッコーといつもの調子。
尚、今回もゴーフィはお休みです。
せっかく格好良く登場したのに、割と台無しである、辛い。
これが、後の鉄板ネタとなった、俺の初陣、その直前であった。
人物などなど
○勇者ガラルド…イケメン。いい人そう。
○魔法使いアリア…最年少。気が強そう。
○僧侶アナスタシア…凄い美人。実力派お淑やか。




