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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
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別録・勇者ガラルドの旅立ち〜始動編3〜

昼投稿出来ました。

今回もよろしくお願いします。

ガラルドにとって初の遠出となるボールドへの旅は、波乱に満ち溢れることもなく、極々順調に進み、ボールドまで後一日と少しと言う所に差し掛かっていた。


旅費を持たなくていいと言うのは、狩猟者にとって非常に楽で、何しろ町ごとに依頼を受ける必要が無く、予定よりも早い到着となりそうだった。


それでも道中に出るモンスターは、ガラルドのスキルアップの為に刈り取られていたのだが。


「絶対海路!海からの眺めが最高なんだから!」


「そうですね。ガラルドさんも一度見ておいて損は無いと思いますよ?」


現在白熱している会議の議題は、西の魔王領に着いた後、陸路で行くか海路で行くかである。


アリア、アナスタシアは海路希望。

フローラルージュの全景は、海路でこそ、最も美しく見えるというのが理由だった。


対して、ガラルドは陸路を希望している。

人間領よりも強く、大きいモンスター、それを倒せるか試さない事には、自分の実力も、百花城で待つ魔族の実力も見えて来ないと言う理由からだ。


「そうは言ってもなあ、相手が滅茶苦茶強くて、好敵手認定を受けてくれなかったらどうするのさ?

僕は正直、結構強い方だと思ってるけど、お祖父様達の時みたいに魔王の右腕的な人が出て来たら、はっきり言って自信ないよ?」


世の中には勇魔規約というものがある。

勇者は任命されてから一年以内にいずれかの魔王城に挑み、そこで戦った魔族と、好敵手同士として認めあい、生涯を掛けて高め合うと同時に、無二の友として互いを扱うと言う友好的規約だ。


そのとき、相手が実力を重視するような魔族だった場合、好敵手として認めて貰えないこともある。


ガラルドが心配しているのはまさにそこで、百花城魔王軍でも有名な『大竜牙』や『小竜牙』、『万物排す小鬼』、或いは『目覚め告げるおおとり』と、『貴人たる機人』の五人の幹部、その誰かが防衛に立っていた場合である。


勝ち目云々の話ではない、それぞれの種族の頂点が彼らなのだから。

ましてや、『美しき紅い華』本人なぞが出て来てしまったら、どうすれば良いのか。


世界の命運を決める訳でもなし、そこそこの魔族と、そこそこに戦って、そこそこいい感じの勇者で終わる。


それがガラルドの望みなのだから、道中に出来ることはしておきたいのだ。

故に、ここは折れない。


そういった強い意志こそが、勇者には必要なのだから。


「実力が足りなければ滞在して鍛えなさい!分かった?ガラルド。」


「すみませんガラルドさん。無理を言っているのは解ってはいるのですが…。」


ただ、時には折れた方が、人生とは上手く行くものなのだ。






一行がボールドの港に到着したのは、まだ朝煙が登る早朝だった。

先触れとして、ちまちまと書き溜めていた書状を竜便で出し、これから二十日間お世話になる船に向かう。


排気筒十二門、排水筒八門からなる超大型魔力船だ。


外海への進出に魔力船を使うようになって久しいが、これほどの大物は大陸広しと言えど、創世教会所有のこの船以外には無い。


「おおっ、この船に乗るのか!」


「今回は教会の正式な依頼ですので、魔族の皆様にも失礼のないよう、こちらをお借りしました。」


アナスタシアの説明を聞きながら、ガラルドは目を輝かせていた。


(これだよ!こういう冒険を僕はしたかったんだ!)


男心とは、常に少年だったあの日の夢を追っているのだ。




「じゃあ、これからフローラルージュに向かうんだ?良い時に行くわね、この時期からなら、着く頃には晩夏の花で一杯よ!」


「わあ、私、晩夏の花はドライフラワーでしか見たこと無いんです!

楽しみだなぁ〜。」


「うふふ、西の王都でマグマフィッシュの地獄焼きも是非食べて行って欲しいな。」


お喋りに興じる女性達。

一人はサキュバス、もう一人は炎の魔人、バルカン。

そして唯一の人族がアリアだった。


「と言うか、リーベンスの勇者が南に行くなんてね。

また北に行くのかと思ってたわ。」


既にアリアは、自分達が勇者の一行で有ることも告げていた。

代わりに二人からは現地のお薦め等を聞いていたのだが、話は盛り上がり、二人が魔界を立つ前の情報も仕入れていた。


「そういえば、次の侵攻戦って、南が西に来るって言ってなかったっけ?」


「そうそう、アグニ様のアプローチが凄くて、遂にユーリカ様が怒っちゃったんじゃないかって噂。

なんせユーリカ様って、ずっと離ればなれだった恋人に再会できたんだもん。

あー、私も恋愛したいなー。」


「あんたサキュバスなんだから、相手いくらでもいるでしょうが。」


「えー?せっかくだし、私もオリジン様と、とか想像しちゃうじゃない?」


遠い異国の地での謎の高揚感からか、聞いてもいない内情を語り、キャーキャーと盛り上がる魔族二人。

良いのかな、と思いながらも聞くのを止められないのは乙女心ゆえなのか。


「君もしっかりしなきゃダメよ?あんな美人が相手だと、まともにやられたら勝ち目薄いんだから。」


「が、ガンバリマス!」


その可能性を全く考えていなかったアリア、いや、あの二人そういう雰囲気じゃなかった、はず、たぶん。

と、思考は段々と下向きになり、居ても立ってもいられなくなったのか、二人にお礼を言うと、駆け足で仲間の元へと向かうのだった。


 


時は流れ夕刻。

出港を告げる鐘が、ボールドの街に鳴り響く。


ゆっくりと進み始める船体、ガラルド達三人は、離れていく港を眺めながら、これからの事に思いを馳せる。


魔界はどんな所なのか。

見たことの無い料理、植物、そして、モンスター。


様々な思いを乗せ、船は魔界に向かい、帆を進めるのだった。


人物紹介


○魔王ユーリカ…歴史では三百年程前に南の魔王に就任したサキュバス族。

明るく人当たりの良い性格だというのが一般的。

居城は、魔界で最も美しい都フローラルージュを王都に持つ、百花城。

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