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死んだ幼馴染が異世界で魔王やってた  作者: ないんなんばー
20/79

ワシは天才だからな

書きながら値落ちぃ。

朝投稿になりましたが、よろしくお願いします。

「んっ、いいよ。そこ、あっ、凄ぉい!」


「頼むから集中させてくんないかなぁ!」


新しい体の使い心地はどうだいボブ?

ああ、最高さマイク!


てなぐらいかなりテンションが上がった俺は、早速ユーリカ相手に模擬戦を申し込んだ。


実際、片手間で相手にされる位の実力差は有るのだが、それでも、ようやくユーリカに軽く防御魔法を使わせるに至った。

頑張ったと自分を褒めてやりたい。


「すっげえ、魔族の体スゲエ!

そらテツローさんも機械の体を欲しがりますわ!」


まあとにかく良く動くんだこの体は。

今までは、自分の体が動く範囲でしか考えられず、思考を制限していたのだが、思い通りに動く体は、その限界をアッサリと突破し、同時に2つ位の事ならこなせる様になった。


種族チートしゅごい。


「頑張ったかいがあったね、お猿さんのオリ君?」


「突然悪意の塊を投げつけるのやめろよ!」


ユーリカが攻勢に移る。

いつか見た、カミラの動き、グロリアに教わった技術、より早く、鋭くなった思考能力、空間把握能力。


それらを駆使し、茨の鞭を受け、流し、払い、斬る。


「ぐっ!くそっ!ぬん!ふっ!あちょ、まっ、ぐえっ!」


が、そこまでが限界。

しかし大きく前進した事を感じる。


まだ一ヶ月は経っていない。

これならきっと、勇者とだって戦える。


「お疲れ様、大分良くなったね。後はどんどん詰めていって、今後は対人戦に切り替える感じかな。

さ、朝ご飯行こっか?」


「いててて…、おう、サンキュな。

よし、肉食いに行こう肉。」


朝からガッツリ、肉を食うぞ!




朝食が終わり訓練に入るのだが、今日は体の慣らしと性能確認が先と、基礎訓練のやり直しをすることになった。


体力、持久力、今までの倍は走れる。

魔力、倍率は解らないが、強くなった。

頭、変わらず。

羽、え、羽生えた!?


「いやー、人間が魔族に変わるって言う話は昔からあったらしいっすけど、本物は初めて見たっす。」


「俺もそれは聞いてたんだけどさ、その話じゃ何十年も掛けて魔族になったって言ってたが、俺の場合はまだ来てから一月位しか経ってないんだよな。

よっぽど魔族と相性が良かったのか、はたまたとんでもない無茶をしてたのか。」


「まあ無茶には変わりないと思うっすけどねー。」


知ってる。急速な変化に耐えられずに寝込んだの俺だから。



大して疲れることもなく、午前の訓練を終え、飯に向かう。

道すがら、そういえば、と、グロリアが声を上げた。


「そういえば、午後から赤岩工房の店主が来るらしいっすけど、オリジン殿の注文じゃ無かったっすか?」


「おお!もう完成したのか!」


赤岩工房とは、城下にある鍛冶屋兼武具店で、何日か前、モンスターの素材を預けられるだけ預けた工房だ。


ドワーフの親方と、その奥さん、息子さんの三人で営んでいて、ゴーフィに腕の良い職人だと聞いて依頼した。

ちなみに俺の剣も赤岩工房製のミスリル剣だ。


とにかく厨二心を潤す見た目の装備が多く、決め手はそこだったりもするが、まあファンタジーだし良いよね、と思い、存分に趣味に走って下さい、と言ってある。


それが進化まぞくかした今日届くとなると、さらに感無量げきあつである。


グロリアに礼を言ってから飯を食い、急いで正門に向かう事に。

移動はさっき練習したばかりの飛行移動。

むん!って感じで羽を出し、一度羽ばたかせ、魔力を纏い、飛ぶ。

カラスのような真っ黒な羽が舞い、一瞬で城壁の上まで飛び上がった俺は、暫くそこでホバリングする。


人の夢の一つ、空を飛ぶ事。

野球漫画の主人公のように、俺は今、猛烈に感動している!


慣れることも兼ねて、城の周りをゆっくりと飛んで見る。


本城を中心に、東西南北に4つの支城があり、それぞれが庭や回廊で繋がっている。

念願の城の全景を見たことで取り敢えず満足し、正門に向かおうと方向転換すると、


「そこの人!どいてどいてー!

キャー!」


正面から凄いスピードで女の子が飛んで来ていた。

躱す?いや、ここで止める!


謎の使命感に受け止める体制をとる、が、女の子は頭から俺の腹にぶっ刺さり、二人仲良くきりもみしながら地面に落ちる。


「ああ!ごめんね!アタシ石頭だから!ごめんね!急いでるから!また後で謝るからぁ!」


と、ダメージも無かったようで、城の中に駆け込んでいく。

そりゃね、思いっきり下敷きになったからね、俺。


まったく、とんでもない目に合った。疼く腹を抑えながら、俺は徒歩で正門に向かうのだった。






「おう坊主!届けに来てやったぞ!」


「オッスおやっさん!いい感じに格好良く出来てる?」


「ったりめーよ!実用性と見た目をキッチリ両立させてやったわ!ガッハッハ!」


リアカーを引いたドワーフのおやっさん、ベルグと、互いの肩をバシバシ叩き合う。


ベルグとは装備の見た目の事で意気投合し、熱いパッションをぶつけ合った仲である。


その完成品が積まれたリアカーの荷台は俺にとって、まさに宝の山に等しかった。


三つ目獣の灰色の毛皮で作った剣帯と鞘。

黒色硬化虫の甲殻で仕立てた軽鎧と、それに補強として付けられた、色々なモンスターの爪と火吹き鼠の赤い革。

牙は加工してチャームに、それと同じデザインのストラップもどき。

刃羽猫の堅くて白い羽は、ミスリルと組み合わされ小手と具足に。

最後にお情けで城のアルケニーに分けてもらった糸は薄灰色に染色され、フード付きのコートになっていた。


「おいおいおいおい、カッコ良すぎるだろコレは!おやっさん、付けてみていいか?」


「直しもいるかも知れんからな、一式やってみてくれ。」


いそいそと鎧を付け始める。この手順にも慣れたものだ。

一つ一つ身に着けていくたび、俺自身には変化があるわけないのに、強くなっていく気がするのだから不思議だ。


剣帯を締め、鞘の留め具で剣を固定し、コートを纏えば、それは一人前の戦士の姿。


「やっべぇ、完璧すぎるだろこれ。」


「ワシは天才だからな!ガハハ!」


バカみたいに大声出して会話してるもんだから、あちこちから人が見に来る。

俺もその度に剣を抜いて構えたり、カッコイイポーズをとったりして応えていく。


ええ年して何やっとんねんとかは言ってはいけない。男は常に少年なのだ。


「お前さん、陛下の近衛なんだってな?ホレ、これはワシからの奢りだ!」


と言って最後に渡されたのは、百合と茨の意匠が刺繍された、真っ白なマントだった。


「おやっさん…」


「ここまで趣味全開でやらせてもらったのも久しぶりでな、ワシも楽しかったそ!ガッハッハ!」


「サンキューな、今度、酒でも持ってくよ。」


戦いの準備は着々と進んでいる。


決戦は、もう直ぐそこだ。



人物、モンスターなどなど


○ベルグ…ドワーフの天才鍛冶職人。異世界でも厨二系はカッコイイのだ。

ちなみにドワーフの体型に関してはテンプレート通り。


○黒色硬化虫…現地民からは「カブトムシ」と呼ばれている黒くてデカくて堅い虫。奥地に行けば、割とのそのそ歩いている。


○刃羽猫…読みは「じんばねこ」。

全身真っ白な豹に鳥のような羽が生えたモンスター。

動きが素早い。


○火吹き鼠…見た目はイタチに近い。前足の鉤爪を擦り合わせて火花を起し、可燃性のガスを吹き出してバーナーの様に火を吹く。

ライバルは電気鼠。


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