19話
悪戯妖精パックの案内で、妖精たちに話しを聞いて回ったけど、特にそれらしい事はわからなかった。
そりゃ、閉じ込めている相手に結界の詳細を教えるわけがない。
でも、エルフ達は結界の範囲ギリギリまで、様子を見に来ることがあるらしい、それも頻繁に。
監視をしにきてるのか、結界を張りなおしてるかはわからないけど。
妖精たちは出して欲しいと、お願いしても『これも、君たちの為。エルフが大陸を必ず平和にする。それまでは、外は危険だからここで保護するしかない』との事。
それを人は拉致監禁というのだよ、エルフ諸君。
幸いにも妖精たちに手を出すような事はないらいしい。
それが唯一の救いだね。
森で自然発生した妖精たちは自由を好むものが多いから、ここでの生活は些か窮屈な思いをしてるだろうね。
僕も文句の一つでも言ってやりたい。
エルフ達がきたのは、それから二日後だった。
なんか、ぞろぞろと多くない?
あっ、あの時の隊長エルフがいる。
それと、服装の違う、豪華な服を着てるエルフが二人いる。
お偉いさんかな?
取りあえず、僕が代表してしゃべる事にした。
精霊たちはかなり敵意を剥き出しにしてるからね。
まずは、軽く皮肉から。
「こんにちは、隊長さん。もう二度と会えないのかと思ってた」
「そんなことはないよ。我々は定期的にここのみんなには会いに来ているよ」
「それは、監視ですか?それとも結界を張り直しに?」
「純粋に君達、妖精を心配してるんだよ。外は危険だからね」
よく言うよ。
誘拐犯のくせに。
でも敵意は感じられないんだよね。
自分たちの行いに自信を持ってるんだね。
狂信者ってこんな感じなのかも。
隊長エルフは優しく諭すようにしゃべるから。
「危険でも帰りたいんだ。森のみんなで力を合わせれば自分たちの身は守ってこれたんだ」
「今までは、大丈夫だったかもしれないけど、これからも大丈夫という保証はないだろ?」
「それは、このエルフの国も同じでは?」
「ははは。面白いことを言うね。例え他国が我らエルフに挑んできても負ける事はありえないよ」
負けは無くても、勝ちもないのでは?
心では思うけど口には出さないでおこう。
あんまり心証を悪くすのは、よくないだろうし。
後ろの精霊たちは敵意を剥き出しにしてるから、もう遅いかもしれないけど。
「今日は特に君と話しがしたくてね」
怪しすぎます、隊長さん。
取りあえず、無言で相手が話すのを待つ。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。紹介しよう、こちらの方がエルドラードの王であられる、マシウス・フォン・エルドラード陛下だ」
「初めまして、新種の妖精君。君の話を聞いてからぜひ会いたくなってね。この子は娘のエルリアだ」
「初めまして、妖精さん。あなた他の妖精と違って、珍しい能力を使えるみたいね」
エルフの王様はちょっと皺が入りだした40代のおじ様って感じだけど、イケメンだね。
お姫様の方は、まだ15,6といった所だろうか?綺麗な子なんだけど、油断はすまい。
僕が無言でいると、お姫様が話しかけてきた。
「あなた、お名前は?妖精や精霊は特に名前がないと聞いてるわ。なければつけてあげましょうか?」
「名前はあるので、結構です。それに、名前のある精霊や妖精は親しい者同士でしか呼び合いませんし、教えないのです」
そんな風習はない。
ただむかつくので、教えたくないだけです。
「そうなの?でも名前を聞いたり、聞かれたら答えるのが礼儀よ」
礼儀って、あんたら礼儀もなにもないじゃないか。
我慢が出来なくなったのかドーガが、本来の火蜥蜴の姿になった。
「エルフ共!礼儀がなってないのはお前たちだ!ここを焼き払われたくなければ、我らを解放しろ!」
ドーガの体からは炎が揺らめき始めた。
これには驚いたのか、護衛エルフ達が、王様とお姫様の前にでて武器を抜いた。
結界で、動けないけど、攻撃はできるのかな?
試してないからわかんないけど、エルフ達が武器を抜いてるからこちらからの攻撃もとおるのかも。
僕には攻撃手段ないけど。
いつかは、俺がみんなを守ってやる!ぐらい言ってみたい。
それぐらいの実力が欲しい。
しかし、ドーガがいきなりキレちゃうなんて、どうしたのかな?
やっぱり、荷馬車に乗ってる時に僕に偉そうに警戒がどうの言ってたのに、あっさり捕まったから、責任感じてるのかな?
それともただイライラしてるだけ?
「サラマンダーだの精霊よ、落ち着いてくれ。今の境遇に不満があるのはわかる。だが、これはあなた方を守るのに必要な処置なのだ。どうか怒りを収めて欲しい」
イケメンの王様が護衛に囲まれてる中、頭を下げる。
護衛達は王が頭を下げる必要はないとか、なんとか言ってるけど。
そこは護衛の武器を下げさせて、護衛達の前にたち、謝るからカッコイイんじゃないか。
まぁ、あくまで、僕のイメージだけど。
現実はそんなもんなのかな?
それと、姫さんは謝らないの?
この流れで行けば、エルリア姫の印象が悪くなりますよ。
「お父様、申し訳ありません。私の言葉のせいで」
えっ!?謝るのそっち!?
僕たちにじゃなくて、王様なの?
さすがにイラッとするよ。
他の精霊もイライラしてるし。
ここは、僕しかいないよね。
「ドーガの気持ちは僕が受け取った。この場は僕の顔に免じて収めて!あと、そちらも武器を収めてください。ここで争っても双方になんの益ももたらしません!」
僕がそういうと、ドーガも炎を止めて、人型になってくれた。
エルフ側も武器を収めた。
「この中では、君がリーダーのようだね?」
「そうなりますね。エルフのあなた達に礼儀があるように、僕たちにも風習はあるのです。エルフのみなさんは妖精の末裔のようですが、僕たちを保護するというのであれば、歩みよる事も必要だと思いますよ」
「ふむ、そのようだね。今日はこれで失礼しよう」
そう言って王様は、娘と護衛を連れて帰って行った。
その際に姫さんは、なぜか僕を睨んでた。
何で?仲裁したのに。
その日は、妖精たちに集まってもらい、この結界の詳細な広さを調べてもらった。
なぜかみんな王様、王様としか言わなくなった。
親しげにみんなユキって名前で呼んでたのに。
もしかして、僕が言った、風習を真に受けてる?
誤解を解くために走り回りました。
口は災いの元。
僕は、妖精たちとは親しいよね?
その日の夜。
しばらくは来ないだろうと思って、精霊達と妖精牧場を作りかえようと、相談していたら、お姫様がきました。
しかも一人で。
何事?
「昼間は申し訳ありませんでした」
そう言って、深く頭を下げられた。
ドーガも嫌な顔してたのに、急に謝罪されて困惑してた。
僕も困惑してますけどね。
「えーっと、なにようですか?いくら自分の国と言っても姫様がお一人でくるとは普通の事とは思えませんが」
「ご心配に及びません。信用における配下がおりますので」
そういうと、暗闇の中から、武装した女性エルフが5人出てきた。
どうやらお姫さまの親衛隊らしい。
「父もその臣下も妖精を保護する目的は同じですが、最初は閉じ込めるような真似はしなかったのです。ですが、元来妖精たちは、気ままに暮らすものが多い。それが300年まえからできた岩山の森に集まりだしたらしいのです。もともと、エルドラードにも多くの妖精が居ましたが、だんだん数を減らしていきました」
いきなり、語りだしたお姫様に僕はぽかーんとしていた。
知らんがな。
「数が減る妖精達にみんな頭を悩ませ、それならばと出ていけなくしてしまえと」
その発想が怖いわ!
「妖精たちが居なくなることは、我々エルフの間では、良くない事だと認識があるのです」
「妖精がいなくなったら、国が衰退でもするとでも?」
「その通りです。エルフには古い言い伝えがあります。その古事記によれば、あらたな世界の秩序がうまれ、古きは滅びをたどる、と」
あー、それは、世界樹の僕のことですかね?
滅びって、大げさな。
別に世界征服なんか、望んでませんけど。
むしろ戦争がいやだから、平和を望んでます。
そして、ファンタジーな世界を旅行したい。
旅先での出会いとか、ないとは思うけど、妄想に夢を膨らませながら出発したい。
「お父様や臣下たちがいる前では、昼行灯を演じているのですが、本当は妖精さんには自由でいてほしいのです」
自分で昼行灯とか言っていいの?
エルフのお姫様って痛い子なのかな。
かわいいのに、残念だ。
妖精を心配しているぐらいだから、いい子なのかな、わざわざ夜に会いにくるぐらいだし。
エルフに騙さればかりだし、昼間に睨んでたのはこの子だし、あれも演技?じゃあ、今も演技なのでは?
だめだ、疑い深くなってる気がする。
心のゆとりを取り戻さねばいけない。
心のゆとり、オアシス。
やっぱり、僕の心のオアシスはミントだね。
ミントのニーソとスカートの素敵な領域をチラ見するのが幸せだ。
チラ見した後に目があっても、にっこり笑顔で許してくれるミントさん、最高です。
「あの、大丈夫ですか?」
あ、顔に出てましか?
ここに来てから、なんだか本来の自分から遠のいている気がする。
僕は変態ではない。
僕は紳士です、そう自分に言い聞かします。
ええ、紳士ですとも。
だから、なるべく早く帰れるように頑張ろう。
ミントのまぶしい、領域の為に。




