次の改善
翌朝。
俺は、与四吉の家の前に立っていた。
目の前には、昨日改善した荷車がある。
昨日までとは、少し違って見えた。
車輪のガタつきは減り、車軸もまっすぐになっている。
荷台には、簡単な仕切りも作った。
「鈴木さん」
後ろから与四吉の声がした。
「昨日は、本当にありがとう」
「いや。俺もいい経験になったよ」
「経験?」
「ああ」
俺は荷車を見ながら答えた。
「今日、この荷車を使ってみるんですよね?」
「ああ」
与四吉は荷物を積み始めた。
昨日作った仕切りを使い、重い荷物と軽い荷物を分けている。
「こうやって分ければいいのか?」
「そう。重い物はなるべく中央に近づけるんだ」
「なるほど」
与四吉が荷車を押す。
「……おお」
昨日よりも軽そうだ。
「本当に楽になった」
「それならよかった」
俺も荷車の後ろから押してみる。
確かに、昨日より安定している。
あんこも隣で嬉しそうに見ていた。
「お父ちゃん、昨日より楽そう!」
「ああ。鈴木さんのおかげだ」
「正男おじちゃん、すごいね!」
「いやいや。まだ始まったばかりだ」
俺は笑った。
荷車一台を改善しただけだ。
だが、これで分かった。
この時代でも、俺の知識は使える。
だったら、次は何を改善するか。
俺は村の中を見渡した。
家、道、農具、水を運ぶ桶、薪を割る道具。
そして、畑。
「なあ、与四吉さん」
「うん?」
「この村で、一番大変な仕事って何だ?」
「一番大変?」
与四吉は少し考えた。
「やっぱり、畑仕事か」
「畑仕事?」
「ああ。朝から晩まで働くからな」
「農具は?」
「鍬や鎌ですか?」
「ああ」
「みんな自分の物を使ってる」
俺は畑の方を見る。
何人かの村人が作業をしている。
鍬を振り下ろし、土を掘り返している。
その動作をしばらく眺めた。
「……なるほど」
荷車と同じだ。
毎日使う道具だからこそ、少しの改善でも積み重なれば大きな違いになる。
「与四吉さん」
「うん?」
「農具を見せてもらうことはできるか?」
「農具?」
「ああ。鍬とか鎌とか」
「もちろんだとも。村の庄助さんなら、いろいろ知っているな」
「庄助さん?」
「農具を作ったり、直したりしている人だ」
なるほど。
なら、話は早い。
俺は立ち上がった。
「その人のところへ行ってみよう」
「今からか?」
「ああ」
すると、あんこが元気よく手を挙げた。
「私も行く!」
「お前は遊びに行くんじゃないぞ」
「分かってる!」
本当に分かっているのか怪しい。
俺は苦笑した。
そして、与四吉とあんこと一緒に村の中を歩き始めた。
しばらくすると、畑の近くで一人の男が鍬を直しているのが見えた。
四十代くらいだろうか。
日に焼けた顔。
太い腕。
その手には、使い込まれた鍬が握られている。
「庄助さん!」
与四吉が声をかけた。
男が顔を上げる。
「おう、与四吉か」
「こちら、鈴木さん」
「鈴木?」
庄助が俺を見る。
「昨日、荷車を直してくれた人だ」
「ほう」
庄助は俺を上から下まで見る。
「荷車を直した?」
「ああ」
「鍛冶屋か?」
「いや、違う」
「大工か?」
「それも違う」
「じゃあ、何者だ?」
俺は少し考えてから答えた。
「物を作ったり、仕事のやり方を良くしたりする仕事をしていた」
「仕事のやり方を良くする?」
庄助が首をかしげる。
俺は鍬を指差した。
「その鍬も、もっと使いやすくできるかもしれない」
庄助の目が変わった。
「……ほう」
俺は鍬を手に取った。
鍬をじっくり見る。
すると、頭の中に無機質な声が響いた。
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【改善対象:鍬】
問題点:
・柄の長さ
・柄の角度
・握り位置
・刃の重量
・刃の形状
改善難易度:低
改善による効果:
・作業負担の軽減
・作業効率の向上
・疲労の軽減
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「……やっぱり」
俺は鍬を見つめた。
荷車だけじゃない。
この時代には、まだ改善できる道具がいくらでもある。
俺は鍬を握り直した。
「庄助さん」
「なんだ?」
「この鍬、少し改良してみてもいいか?」
庄助はしばらく鍬を見つめたあと、ニヤリと笑った。
「面白そうだ。やってみなされ」
「庄助さん、工具お借りしていいですか」
「ああ、いいよ」
庄助は納屋の奥から、いくつかの道具を持ってきた。
古いノコギリ、木槌、小刀、そして、ヤスリ。
俺は一つずつ手に取って確認する。
「これなら、なんとかできそうだ」
「ここを少し変えれば、もっと楽になる」
庄助が興味深そうに見ている。
「何を変えるんだ?」
「まずは柄の長さです」
俺は鍬の柄を指差した。
「少し短くします」
「短く?」
「ああ。ただ短くするだけじゃない」
俺は鍬を持つ位置を変えてみる。
「握る場所も決めたほうがいい」
庄助が首をかしげる。
「握る場所を?」
「そうです。毎回同じ場所を握れるようにすれば、力を入れやすくなります」
俺は小刀を手に取った。
「よし」
俺は鍬を作業台の上に置いた。
「では、始めます」
まず、古い柄を取り外す。
木槌で軽く叩く。
コン、コン。
少しずつ柄が緩んでいく。
「丁寧にやるんだな」
庄助が感心したように言う。
「ああ。道具は壊してしまったら使えませんから」
ようやく柄が外れた。
俺は新しい木材を手に取り、長さを測る。
必要な長さに印をつける。
そして、ノコギリを入れた。
ギコ、ギコ。
木材が少しずつ切れていく。
「この長さでいい」
次に、握る部分を削る。
手に触れる場所は、できるだけ滑らかにする。
角が残っていれば、長時間使ったときに手が痛くなる。
「ここも重要だ」
ヤスリをかける。
表面を滑らかにする。
そして、鍬の刃を取り付ける。
柄の角度を調整する。
「これで……」
俺は完成した鍬を持ち上げた。
以前のものより、少しだけ短い。
そして、握る位置も分かりやすくなっている。
「庄助さん、少し使ってみてもらえますか?」
「ああ」
庄助は鍬を受け取った。
畑へ向かう。
そして、鍬を振り下ろした。
ザクッ。
土に刃が入る。
もう一度。
ザクッ。
「……ほう」
庄助が何度か鍬を振る。
「前より、力が入りやすい」
「本当ですか?」
「ああ。それに、腰が楽だ」
俺も鍬を持ってみる。
確かに、以前よりも扱いやすい。
その瞬間。
頭の中に、あの無機質な声が響いた。
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【改善が完了しました】
【鍬の改善に成功しました】
【改善効果を確認】
【作業負担:低下】
【作業効率:向上】
【疲労:低下】
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「……成功したか」
俺は小さく呟いた。
庄助は改良された鍬を見つめている。
「たったこれだけで、こんなに変わるものなのか……」
「ああ」
俺は頷いた。
「道具そのものを大きく変えなくても、使う人に合わせて少し変えるだけで、仕事は楽になります」
庄助は鍬を握り直した。
「なるほどな……」
俺は改良された鍬を見ながら思った。
荷車の次は、鍬。
一つ改善すれば、また次の改善が見えてくる。
――この時代には、まだまだ改善できるものがある。
俺は、少しだけ笑った。
「次は何を改善しようか……」
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:不明
石高:0石
統率:72
武勇:28
知略:83
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
立身出世
【経験】
危険回避:20
【実績】
現場改善:2回達成
【現在の改善対象】
鍬
【改善状況】
完了
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