初めての戦国時代の食事
「まずは、ご飯にしましょう」
与四吉の妻にそう言われ、俺は小さく頭を下げた。
「……ありがとうございます」
目が覚めてから、何も食べていない。
それも、かなり腹が減っている。
現代にいた頃なら、コンビニでも牛丼屋でも、好きなものをすぐに食べられた。
だが、ここは戦国時代。
そんな便利な店は、どこにもない。
俺は与四吉たちの後について、家の中へ入った。
「お邪魔します」
「そんなにかしこまらんでいい」
与四吉が笑う。
「たいした家ではないからの」
家の中は、思っていたよりも質素だった。
土間があり、その奥に板張りの部屋がある。
壁は土壁。
柱は太い木でできている。
天井を見上げると、木の梁がむき出しになっていた。
部屋の隅には、薪が積まれている。
その横には、米や野菜を入れているらしい木箱。
鍋や木の器も置かれていた。
「ここが台所です」
与四吉の妻が教えてくれる。
土間の一角には、かまどがあった。
その中には、まだ火が残っている。
薪がパチパチと音を立てていた。
「……かまどか」
俺は思わず見入ってしまった。
「どうしたんじゃ?」
「いや……」
現代では、ガスコンロやIHコンロが当たり前だった。
ボタンを押せば火がつく。
温度も簡単に調整できる。
だが、目の前にあるのは土と石で作られたかまど。
その上に鍋が置かれている。
「本当に戦国時代なんだな……」
改めて実感した。
「戦国時代?」
「いや、何でもないです」
危ない。
うっかり余計なことを言いそうになる。
「お兄ちゃん、ここに座って」
あんこが俺を手招きする。
「ありがとう」
俺は、板の間に腰を下ろした。
すると、あんこが俺の隣にちょこんと座る。
「お兄ちゃんは、どこから来たの?」
「美濃からだよ」
「美濃って遠い?」
「そうだな……」
「少し遠いかな」
「お父ちゃんより強い?」
「おい、あんこ!」
与四吉が慌てる。
「何で、いきなり強さの話になるんじゃ」
あんこは笑っている。
俺も思わず笑った。
「どうだろうな」
「じゃあ、今度勝負してみる?」
「こら!」
家の中に笑い声が広がった。
なんだか、不思議な気分だった。
ほんの少し前まで、俺は現代の工場にいた。
それが今は――。
戦国時代の農家の家で、知らない家族と一緒に食事をしようとしている。
「できましたよ」
与四吉の妻が声をかける。
料理が並べられていく。
まず目に入ったのは、少し色のついた飯だった。
米だけではない。
雑穀が混ざっているようだった。
その横には、野菜の汁物。
それから、漬物らしきもの。
そして、焼いた魚が少し。
「……」
俺は思わず固まった。
「どうしたんじゃ?」
与四吉が尋ねる。
「いや……」
俺は目の前の食事を見つめた。
これが――。
俺にとって初めての戦国時代の食事だ。
「いただきます」
自然に手を合わせる。
「いただきます?」
あんこが首を傾げる。
「食べる前の挨拶だよ」
「へえ」
あんこも真似して手を合わせる。
「いただきます!」
与四吉も苦笑しながら手を合わせた。
「では、いただくとするかの」
俺は置かれていた箸を手に取った。
現代のものより、少し太く感じる。
「これも、当時のものなんだよな……」
そして、飯を一口。
「……」
噛む。
素朴な味だった。
現代の白米とは違う。
少し硬い。
雑穀の食感もある。
それでも――。
「うまい……」
思わず声が出た。
「そうか?」
与四吉が笑う。
「腹が減っておれば、何でもうまいじゃろ」
「それもありますけど……」
もう一口食べる。
「本当にうまいです」
汁物を飲む。
温かい。
体の中に染み込んでいくようだった。
「……うまい」
俺は何度も呟いていた。
食事なんて、当たり前のものだと思っていた。
コンビニ。
スーパー。
外食。
冷蔵庫。
電子レンジ。
そんなものが、ここにはない。
それなのに――。
目の前の食事が、妙にありがたかった。
「お兄ちゃん、魚も食べていいよ」
あんこが魚を指差す。
「いいのか?」
「うん。あんこ、もうお腹いっぱい」
「そうか」
俺は魚を一口食べる。
焼いた魚の香ばしさが口に広がった。
「……これも、うまいな」
「でしょう?」
与四吉の妻が嬉しそうに笑った。
俺は箸を動かし続けた。
気がつけば、あっという間に飯を食べ終えていた。
「ふう……」
腹がいっぱいになる。
「こんなに食べるとは思わなんだ」
与四吉が笑う。
「すみません……」
「謝ることじゃない」
与四吉の妻が笑った。
「お腹が空いていたんでしょう?」
「……はい」
俺は素直に頷いた。
そして、もう一度家の中を見回した。
広くはない。
決して裕福な家でもない。
だが――。
暖かい。
家族がいて。
食事があって。
火があって。
安心して眠れる場所がある。
「……いい家だな」
思わず口に出ていた。
「そうか?」
与四吉が周囲を見る。
「古い家じゃぞ」
「でも、落ち着きます」
「変なやつじゃのう」
与四吉は笑った。
そのとき、俺はふと思った。
俺には帰る家がない。
家族もいない。
知り合いもいない。
身分もない。
金もない。
本当に、何もない。
そんな俺を――。
この家族は食事まで食べさせてくれた。
「与四吉さん」
「なんじゃ?」
「ありがとうございます」
「何を今さら」
「……助かりました」
与四吉は少し黙ったあと、笑った。
「困ったときは、お互い様じゃ」
その言葉が、胸に残った。
何も分からない。
これからどうなるのかも分からない。
それでも――。
「まずは、生きていかないとな」
俺はそう呟いた。
そして、頭の中に昨日の荷車が浮かぶ。
「……荷車も直さないとな」
俺は荷車のことを考えながら、腹をさすった。
「明日から、やることができたな」
戦国時代での最初の一歩。
それは、天下取りでもなければ、仕官でもない。
一台の荷車を、少しだけ良くすることだった。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:不明
石高:0石
統率:72
武勇:28
知略:83
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
立身出世
【経験】
危険回避:20
【現在の改善対象】
荷車
【改善状況】
未着手
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