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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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12/12

第三話 オツの港町と新女王下聖騎隊①

《七本槍メンバー》

008 ナギト ♂(17) 武器:長剣

  魔法剣士(マナの剣士)資質  王下Eランク

  マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し

   開眼(マナ寄せ開眼)

011  ストナ♀(18)武器:大剣

  聖騎士資質 王下Bランク

  聖回復 聖流剣 遠投 他

015 オーウィズ王子♂(16)

探求者資質 

  探求

《付き添い》

001 ラーナキュアル♀(35)武器:三叉の槍

 火炎防御士資質 王下Aランク

 炎槍、火壁、投炎槍

002 バキア♀(21)

 植物士資質 王下Dランク

 植物サーチ 調合 育成

 火山島上陸作戦が開始された。

 3日後にスルーニルから100名ずつ入島する。

 往復4日間掛かる旅程の為、当初100名の6回輸送を考えていたが、旅程が遅れる可能性を踏まえて、最初2回が100名残り2回が200名の4回での輸送する事になった。

 600名を超える2部隊を滞在させるべく僕達は火山島での準備に取り掛かった。

 炎英王からの許可は下り、マナ獣に尽くせとの命が下りた。僕なら少し心苦しい嘘だけど、たぶんこの人達は気にしたないのだろう。

 オーウィズは火山島の村長の家へ行き、旧市街地を利用する許可を取ってきた。そしてメンバーを引き連れて旧市街地に大きな宿営所を作ろうとしていた。

 メンバーとは七本槍の道化衆として僕、ストナ、オーウィズそしてバキアとラーナキュアルの5名。

 スルーニルからは総大将としてマトゥキ。補佐マリアン。更に聖都騎士団第7師団副師団長グリイ 聖都騎士団第8師団長のテルマー、補佐官カイポの5名である。

 第7師団は剣士部隊と言われる程剣に長けた者が集まっている。そして、第8師団は魔法部隊である。

 第8師団長のテルマーと補佐のカイポで旧市街地の瓦礫を一掃しているので、僕達はそれが終わるまで待っている状態だった。

 そして、七本槍の道化衆のメンバーのラーナキュアルはワルトの洞窟で負った傷が癒えた為、今回の戦いに参戦。バキアはと言うと……。



 ノルテから戻ってきた翌日。バキアが僕達の前にやって来た。

 彼女は珍しいサーチ系スキルの持ち主ではある。僕のマナ寄せ開眼には欠かせない人ではあるが、何分冒険者や戦いを好まない為、ノルテまで旅である程度の報酬を与えて裏方に戻る事となっていた。

「オーウィズ様、お願いがあります。」

 彼女はオーウィズ前に立ち頭を下げた。それに気づいたオーウィズは彼女に向って話し始めた。

「そうだった。報酬だな。どこに住みたい。ここか?それとも炎英離都か?半年から1年は聖京都へは戻らない方が賢明だ、それ以外でどこでも検討しよう。」

 彼女は再び頭を下げた。

「もう少しだけ、この七本槍の道化衆に同行させて下さい。」

 予想外の反応に僕達は言葉を失った。彼女が同行してくれる事は願ったり叶ったりだけど、なぜ?と疑問が生まれて僕はなんと言っ良いか分からず声を掛けられなかった。しかし、ストナは直ぐに彼女に近寄り声を掛けた。

「何かあったの?」

 彼女は暫く黙ってうつむいていた。

 何度か小さく頭を揺らした後で顔を上げて話しだした。

「もう嫌です。もう嫌なんです。私が何もしない間に人が死ぬのは耐えられません。私があの時、やることを放棄しなければ……、トロソム王女は死ななかったかもしれない……。私が……私が……。」

 彼女なりにトロソム王女の死に考える事があったのだろう。でも、誰のせいでもない。王女が生きていてもあの霊薬で回復したのかは分からない。責任は誰にもない。それでも、今回の事件は僕達の心に小さな影を落とした事実には間違いない。

 ストナがバキアの横に寄り添った。

「バキア、あなたの所為ではない。それを言うなら私達だって同じよ。あの時、モンスターをもっと早く倒せていたのなら……。」

 ストナがそう言うと、バキアは顔を横に何度も振るった。

「違うの、違うの、私はルイーゼ様の事を心配しているの。私が何もしないでルイーゼ様が……ルイーゼ様が……。」

 そこまで言うと号泣してしまった。彼女は数十分泣いていた。

 未だにルイーゼ王女の消息は分かっていない。聖京都にいるのか?既に……。全く分からない。このまま戦い続ければ、ルイーゼ王女まで辿り着けるのか?分からない。

 


 それでも、僕達は進むしかないのだ。



 僕とストナは少し小高い丘の上から旧市街地の瓦礫の撤去作業を眺めていた。テルマーとカイポが魔法で瓦礫の束を魔法で飛ばす様に消し去っていた。

「すごいね。あの魔法。」

「そうかな。」

 ストナは僕の方を眺める様に見つめてきた。

「ふーん、彼女達よりセアリー王女の方が強いって思うんでしょ。セアリー王女は強いわよ。確かに。」

「セアリー王女だけではないよ。マトゥキさんや、ライガさん、それに……、ユームさん……。皆自分の極める道を突き進む人達だと思う。」

 僕がそこまで言うとストナは僕の方へ顔を近づけてきた。

「それに比べて……?」

「あの人達は強力なスキルを使っていると言う感じかな。弱くない、僕よりははるかに強いと思うけど……。あの人達が強すぎるんだよ。」

「そうよね。私もそう思う。私自身まだまだだから、マトゥキさんの足元にも及ばない。スキルでごまかしている強さ。鍛錬が必要だね。ユームさんも言ってたっけ。」

「そうだよ。ストナも明日から朝の鍛錬やる?」

 ストナは少し頭を傾げたてから「やらない。」と答えたのだった。なんだよその展開は!

 僕とストナが話していると、後ろに人の気配を感じた。振り向くとそこに村長が立っていた。村長は僕達と言うより、オーウィズ達の旧市街地の瓦礫の撤去作業を眺めている様だった。ふと、視線が合ったので僕はお辞儀をした。向こうもこちらに軽く頭を下げてから近づいてきた。

「なかなか派手にやっているようじゃな。」

「うるさかったですか?」

 村長は頭を左右に振り、更に数歩前に進み出た。

「そうではない、ただ……。」

 そこまで言うと村長は言葉を濁した。

「ただ、なんですか?」

「気を付けなされ、最近この旧市街地に火のゴーレムが出るともっぱらの噂が流れている。儂は見たことがないが、村民の中にはこの市街地に現れるゴーレムを間近で見ている者たちも少なくない。」

 ストナがその話に乗ってきた。

「村長はゴーレムってどんな生き物だと思ってますか?」

「儂か?そうだな、ゴーレムと言っても色々な伝説があるが儂はオークリアの伝説が一番好きじゃな。」

「オークリア?」

「呆れた、オークリアも知らないの?」

 知らないよ何なんだ?

「オークリアとは150年前の学者よ。今から3000年位前にマナ獣同士の戦いがあったと言う事を提唱した人。現在残るロストテクノロジーはその時作られたものだとその本の中では言っている。」

「本当?」

「さあ?」

「それなら、マナ獣に聞けば良くない?」

「聞いて教えてくれると思う?さっき会った時でも、これからの事や今の聖京都の状況ですら、自分で調べろ的な言い方しかしなかったでしょ。聞けるなら聞きたいけどあの様子では無理よ。無理。」

 村長は僕達の会話を遮るように入って来た。

「オーウィズ王子殿下へお伝えくだされ、火のゴーレムには手を出すなと。」

 そこまで言うと村長は去っていった。



 その日の夜、夕食の時に村長の話をオーウィズに伝えた。すると、反応したのはオーウィズではなく、聖都騎士団第7師団副師団長グリイだった。

「ゴーレムなんているかよ。火系熊か火系狼の類だ。きっと、俺だってさっき数匹の熊をぶち殺した。おぼっちゃまは何でも人の話を受け入れる。いいか、この時代にそんな技術があれば、世界が変わっているだよ。熊でないのなら傀儡資質系や操作術士資質系のスキルを使って裏で動かしているんだろよ。自動で動く機械系モンスターなんてウヨウヨしていている?世の末だ。バカバカしいんだよ。」

「ゴーレムが自由意思を持ったモンスターなんて誰が決めたの?オークリアの伝説でしょ。単なる岩の人形でもゴーレムはゴーレムでしょ。」

 ストナが一言発したけど、グリイは僕達をバカにした様な目で見てきた。

「これだから知識のない奴らは嫌なんだ。それはゴーレムではない。ゴーレムはオークリアの伝説の描かれている様に意思のある機械系モンスターだ。これだから知識なない奴と話したくないんだ。この世界バカばっかりだ。それに、お前。俺はお前が気に入らない。」

 そう言ってグリイは僕の方に一歩近寄り、顔を近づけてきた。

「僕が何かしましたか?」

 少し棘のある言い方にこちらも少しきつめで答えてしまう。

「お前のその顔!セアリー王女に気に入られて良い気になるなよ。彼女に勝ったくらいで天狗になるなよ。俺様だってな、だってな……。」

 そこまで言うと後ろからテルマーが現れてグリイの頭を思いっきり引っ叩いた。僕とストナは一瞬止まってしまった。

「やめろ!グリイ!いい加減にしろ!」

 グリイが後ろを振り向き声をどたけた。

「何するんだ!このアマ!」

 テルマーは何も言わずに再びグリイの頭をどついた。

「誰に向かって言っている。副師団長が師団長に向かって声を上げるとはどう言う事だ。」

 テルマーがそう言うとグリイは黙ってしまった。

「セアリー王女のお気に入りに向かって何を言っているんだ。お前が2年前に親善試合で負けた腹いせか?どんなに腹がたっても声に上げるな!口に出すな。聖都騎士団とは何かもう一度考えろ。」

 そこまで言うとテルマーは去って行った。そのあと笑顔のカイポが笑いながらやってきた。


 このテルマーとグリイは30代。

 テルマーは風系魔法使い。第8師団長。女性ではあるが、髪は短く刈り上げており、上背もあるので、後ろから見ると男性に見えてしまう。更に先ほどの性格から、男性部隊員達に恐れられていると言う。スキルの威力が桁違いで竜巻や暴風と言った災害級のスキルを使える上に噂ではそのスキルに付加効果が付いているとまで言う。付加効果とは竜巻のスキルを受けると追加で毒を受けると言った類のものだ。瞬殺とは違うけど、滅殺スキルと言っても過言ではない。

 グリイは火系剣士。第7副師団長。2年前に副師団長へと上がった際に、記念親善試合でセアリー王女にぼこられたと言うのだ。その為か僕に向けて殺気のある視線を送ってくる。更に時より先ほどの様な暴言でこちらの感情を煽ってくる。ただし、剣士としての能力はこちらも高い。火系剣士が得意とする強力なスキルを使いこなす。

 そして、今回同行メンバーのもう一人がカイポである。

 カイポは第8師団補佐。既に65歳を超えており、若い頃は師団長をしていたと言う人物。今は補佐として若者育成をメインで働いている。しかし、土系魔法使いの為、こう言った土台作りの仕事が入ってくると駆り出されると嘆いていた。気さくな感じで親しみやすい性格。テルマーとグリイの事を教えてくれたのも彼である。現スルーニル王とも若き時には腕を磨きあった仲とか。本当かどうかは疑わしい噂話を織り交ぜて笑いを入れて話してくる。


 そのカイポが僕とグリイの横に立った。

「どうじゃ、親善試合をしてみては。次の船が来るのは後2日。出迎えの準備も大方完了している。それなら、明日は休みにして、私が審判をつとめてやる。ここは剣を交えて親交を深めるのも悪くはないと思うぞ。どうじゃ、テルマーよ。」

 カイポが最後に大声でテルマーに語りかけると、テルマーは少し頭を下げていたが、やがて頭を上げた。

「マトゥキさんが了解してもらえるのであれば、明日は休みとしましょう。私はやる事があるから、カイポ殿が責任を持って取り合ってくれれば、これ以上は口を出さない。」

 テルマーがそう言うとマトゥキも軽く頷いた。

「よし、それなら明日。親善試合をしよう。どうかなお二人さん。」

「僕は構いませんが……。」

「…………。断る。そんなに暇ではない。」

 そう言うとグリイは部屋から出ていった。それを見送るとカイポはこっちを向いた。

「では、親善試合の打ち合わせだ。やるぞ。」

「ちょ、ちょっと待って下さい。さっき断るって言いましたよ。」

 カイポは笑いながら紙を取り出した。

「なーに。あいつはあまのじゃくだから、必ず乗って来る。まずはナギト君の使用スキルを書いてくれ。この前と同じで帝国式で執り行わせてほしい。あいつは必ずスキルをAとBで固めてくる。本来なら反則だが、それは認めてあげてほしい。」

 ABクラスのスキルと言えば、即死系攻撃も含まれるそんな事を認めるの?と僕が答え様とした時、僕より先にストナが文句を言った。

「何それ、おかしくない?ナギトは強力スキルを使えないのよ。それなのに相手は強力スキル可能って、そっちに有利すぎるでしょ。それに大事な上陸作戦前なの。ナギトにケガをさせられないわよ。こっちから却下させてもらうわ。」

 ストナがそこまで言うとカイポは更に大笑いした。

「本当に、そのとおりじゃな。」

 この人バカなのか?と一瞬思えてしまった。

 カイポは僕の腕を指差した。

「その腕輪があれば、むしろ分が悪いのはグリイのほうじゃないかな?圧倒的なパワーを最小限の力で叩きのめしてほしい。それがあいつの為じゃ。」

「カイポさん、この腕輪が何か知っているんですか?」

「分からんわ。それが本物の炎帝御輪なのか?偽物なのか?はたまた別の腕輪なのかは。しかし、この歳になると過去の経験からその腕輪の持つ力が分かる。火のマナを完全無効化する強力なマナが詰まっている。私があいつならお前さんに喧嘩を売るような事はせん。あいつに少し灸をすえる必要があるからな。セアリー殿下もその為に叩きのめしただが、全く思いが伝わっておらん。これは私からのお願いだ。あのバカを叩きのめしてほしい。」

 そこまで言われて断れず、僕は親善試合を了解した。




 火山島に上陸して20日が過ぎた。

 スルーニルからの応援部隊も当初の予定メンバーは既に火山島へ上陸て、準備を整えていた。

 そして、今夜僕達は決行日同様に手漕ぎカヌーでオツ近くの街道まで海を渡る事になっていた。

 新月の夜にこの海域を600名近くのメンバーが手漕ぎカヌーで渡る事前演習も兼ねていた。

 しかし、真の目的は渡ったメンバーでオツの港の制圧である。

 

 今から4日後に新月の日を迎える。その翌日スルーニルの帆船がオツの港に入港する。

 前日に海域を渡った600名の応援部隊が街道制圧後にオツの港を占拠する。僕達先発部隊は先にオツの港へ入り込み、内側から港を占拠する事にある。

 そしてこの港に物資を搬入して反乱軍が抵抗しているセタ村までの街道を確保し、供給網を確立する。

 その上でオーウィズが王位継承権を主張して第四王子キンデルダルと全面対決する姿勢を誇示する。それによって賛同者を多く集める。

 セタ村から周囲の村々を味方に付けて聖京都を孤立させる。

 その間に僕達はクラスタルへ行きマナの剣の入手して、応援を引き連れて北側街道を封鎖する。北側から聖京都へ攻め登る。そしてオーウィズ達と合流してリリラ退治に向かうと言うシナリオ。

 うまくいくのかは分からない。とりあえず、その長い作戦の最初の一歩を今踏み出すのである。

 


 カヌーは2艇。4乗りに合計8名が乗り込んだ。先の舟にオーウィズ、マトゥキ、バキア、ラーナキュアル。次の舟に僕、ストナ、マリアン、グリイであった。

 こちらの舟はグリイが漕ぎ手を買って出てくれた。真夜中の海を僕達は小さなカヌーで陸地を目指した。

「変わりましょうか?」

 1時間位漕いで半分位まで来た。グリイも疲れていると思い僕が交代を買って出た。しかし、何も答えがなかった。

「大丈夫よ。彼なら。一人でやらしてあげて。」

 後ろからのマリアンの声が飛んできた。それと同時にグリイも答える。

「要らん。お前の力など借りない。俺様一人で十分だ。」

 そう言うと無口で少し速度を上げるように漕ぎ始めた。暫くパドルがきしむ音と水が跳ねる音だけが響いていた。

「漕がしてあげて。ごめんね。彼バカだから、負けましたの言葉をうまく伝えられないの。」

 マリアンが僕の方に顔を近づけてあえてグリイに聞こえる様に話し始めた。

「マリアン黙れ。」

「あら、私の方があなたより階級は上よ。何その言い方。誰に向って口をきいているの?」

 マリアンがそう言うとそれ以上何を声を発っしなくなった。

「そうそう聞いて!この人達、ロトアルでのナギト君との交流試合の後、クックとルートバーンになんて言ったと思う?スルーニルの恥って言ったのよ。特にクック分団長には反則負けなんて、聖都騎士団辞めろだって。や・め・ろ。だって。ねえ。」

 マリアンは楽しそうにそう言いながらストナの方を見た。ストナもいつもの悪い癖が出てきてそれに乗っかる。

「私の知ってる人にもう一人いますよ。ナギトと戦って数回スキルを使ったかと思ったら、全く効かなくて登録外のスキル使って反則負けになった人。秒殺って感じでしたね。まだ、クックさんの方が強かった印象ですね。」

「そうでしょう。ホントに聖都騎士団と思えない。ストナちゃん、その人聖都騎士団の副師団長って噂よ。」 

「えー、うそ!副師団長って分団長より下ですか?」

「ねー。私もかつて副師団長まで経験したけど、最近はレベルが低いというレベルを超えてるわね。秒殺って、ナギトくんのランクは?」

「王下Eですよ。」

「王下E!に反則負け?それって王下G位に格下げしてもらった方がいいかしら。」

 マリアンやストナの会話に聞こえない振りをしてひたすらグリイは漕ぎ続けていた。ただ明らかにスピードが増している。パドルを漕ぐ速さも力も増して、もう一艇を軽く超えて陸地に向けて進んでいた。

 マリアンとストナはその後も内容を変えてはグリイをなじっていた。

 陸地か近づけて来た時、グリイは僕を睨見つけてきた。

「ナギト、いいか、この戦いが終わった後、スルーニルにもう一度来い!再戦を申し込む。」

 えー、こっちは嫌なんですけど……。それに炎帝御輪とグリイのスキルは相性が悪いから、あなたが不利ですよ。と言おうとしたが、声には出さなかったが、マリアンが代弁するように答えてくれた。

「ナギトくんは忙しいの!それにもうセアリー様の一番弟子なんだから、申し込むならセアリー様を通すのが筋だと思うわよ。でも、彼とは相性が悪いから止める事をお勧めするわよ。」

「炎帝なんたらが、なんだ!火炎系マナを無効化?上等だ!そっちが100%防ぐなら、こっち200%で攻撃するだけだ。忘れるな!俺様は負けない!」

「はいはい、100%の意味を知らない人はもう一度人生やり直しなさい!」

 新月直前のかすかな月明かりに照らされたグリイの目は真剣そのものだった。僕はバカの壁を越える足台を彼に与えてしまったのかもしれない。こう言う人が越えられない壁を越えるのかもしれない。ライガさん達の様に。

 ただ、それ以上は考えるのをやめた。そもそも僕はセアリーの弟子ではないし、スルーニルに行くつもりないですから。

 

 まだ夜半過ぎに僕達は大陸側へ到着した。テイルエンドへ再び足を踏み入れたのだ。

 オツの港町は静まり返ってはいたが、明かりがところどころに灯っていた。この灯りは僕達を受け入れる為の灯りだろうか、それとも、敵対する者への火矢となる灯りだろうか。

 未だに経験していない大戦が目の前に迫っているよう気がして、僕はその灯りに睨めつける様に立ち尽くしていた。

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