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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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序話 始まりと航海

《七本槍メンバー》

008 ナギト ♂(17) 武器:長剣

  魔法剣士(マナの剣士)資質  王下Eランク

  マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し

   開眼(マナ寄せ開眼)

011  ストナ♀(18)武器:大剣

  聖騎士資質 王下Bランク

  聖回復 聖流剣 遠投 他

015 オーウィズ王子♂(16)

探求者資質 

  探求

《付き添い》

000 ヒツメジ♂(72)

  収集家資質

  ※王の執事


 己が築き上げた物。誰に託し、誰が受け継ぐのか。財産は?地位は?はたまたそれが技術や伝統ならばどうなるのだろうか。

 先代が築き上げた全てを受け継げるなら、その力にどれだけの価値を見出すのだろうか。



『継承せよ。』

 その言葉が僕の脳裏に響く。

『継承せよ。』

 再び、継承の2文字が脳裏に響き渡る。

「誰なんだ。」

 僕の問いかけに何も帰って来ない。分かっている。これが残留思念の類だと言う事は。それでも、あまりに執拗な問い掛けにこう答える事しか出来なかった。

「分かった、継承でも、何でもしてやる!」

 大声で叫んだ次の瞬間、身体がにマナが巡り始める。全身がマナで満ちていく。

 これは!

 スキルを取得した時の感覚に似ていた。

 ………………。




 この世界で冒険者の強さを決める指標の一つ『資質』と『スキル』。『資質』は生まれながら持つその人固有の特質。僕ナギト・オウミの資質は魔法剣士だ。

 資質は時に変化していく。変化にも上位変化と並列変化と呼ばれるものがある。ただ、多くの一般人にとって資質とは変わることが無いもの、変わると言う事実も知らずに一生を過ごしている人が。『剣士資質』が必ずしも剣を持つとは限らない。『魔法使い資質』が魔法を駆使して戦うとも限らない。僕の両親は資質と関係無く、田舎で農家として普通に暮らしている。

 もう一つの指標は『スキル』。スキルは資質と行動によって得る特殊な力。冒険者にとって最も重要な力である。

 『スキル』が使えないと冒険者になれない。攻撃系、防御系、支援系など数々のスキルが存在する中、スキルが使えないと言う事は資質に合った行動が出来ていないと言う事になる。すなわち自分の資質を見極めていないのだ。そしてその結果として冒険者には不適格の烙印が押される。

 

 それ以外に『体力』や『腕力』『走力』と言った基本能力ももちろん重要となる。その基本能力と呼ばれる類の中でも重要視されているのが『マナ量』である。

 マナとはスキルなどを使う力。このマナ量が多ければ多いほど、スキルを長く多く使える。人によってはこのマナで体力や腕力の底上げすら出来る為、マナ量こそが冒険者にとって重要な基本能力とも言える。


 僕は生まれついて『マナ』を持っていない。理由は分からない。家系的には時よりマナを持たない者が生まれる事だけは知られている。

 マナの有無で生活に支障は出ない。(出ないと言うか出ても大きな差は無い。体力が多少あるか無いかくらいの差で困る程の事ではない。)

 しかし、その差は冒険者としては致命的となる。僅かな差が生死を分かつ世界に身を置く者にとって、その差を埋める気の無い者と共に戦う事は出来ないとされている。

 先ほどから話題に出ているが、冒険者となる為のルールにスキル使用可否の基準がある。冒険者になる為にはスキルが使える、敵と戦える(サポート出来る、身を守れる)。これが冒険者として生きていく上で重要な要素となっている。

 マナが無いと言う事はスキルが使えないに近いハンディとなる。スキルの中にはマナを使用しないスキルもある……。しかし、その数は数多あるスキルの中でもわずかだろう。

 (魔法)剣士を目指していた僕は……剣術の中に存在するマナを使わないスキルの習得を求めて探求していた。苦悶の末ようやく手に入れたスキルは『マナ寄せ』だった。

 『マナ寄せ』はマナの力を一方から一方へ寄せる、言い換えれば、付与系スキルである。このスキルを使えば火のマナ鉱石のマナを剣に寄せて火の剣とする事が可能である。

 このスキルの習得で僕は冒険としての道を進める事となった。


 それ以外にもう一つ生まれ持った不思議な力がある。『開眼』と自分で名付けている力である。眼に集中力を高める事で、ほんの一瞬先を見る事が出来る(目の錯覚程度だけど)。その為なのかは不明だけど、スキル認定はされず、スキルとは別質の特技か何かだろうと言う事になっている。この『開眼』にマナ寄せでサーチ系のマナ寄せると(『マナ寄せ開眼』と命名)、マナの動きを見る事が出来る様になり、相手のスキル攻撃やスキルの軌道を読むことが可能となった。(このスキルの軌道を読む力は格上くらいなら問題無いが、次元の違う相手には意味は無い事が前回の冒険で証明された。もっと精進しないといけない。)

 僕はこの力を使って様々な戦いを乗り越えてきた。もちろん、仲間の支えがあったからと言う事は言うまでもないけど。



 ここアリシア大陸(通称サンフィッシュ大陸)。マンボウの形をした陸形状から、この愛称でも呼ばれている。

 大陸の尻尾の部分を昔からテイルエンドと呼んでいる。ここは昔魔王バンパイアロードの住む土地であった。魔王討伐から100年が経った。討伐の最大功績者は4英雄と4従者と呼ばれている人物達だ。(一人の英雄は戻って来なかった為3英雄と呼ぶ場合もある。)

 その一人である聖の英雄ウリエルはこのテイルエンドに聖京都を築いた。

 テイルエンドにはまだまだ魔王の遺した遺産やダンジョンが残っており、大陸全土から多くの冒険者で賑わいを見せていた。

 

 今から1年半程前に彼女達は再び姿を現した。

 3魔女と呼ばれた魔王直下のバンパイア3体。長女リリラ、次女バーブル、3女ミリアン。

 僕は冒険者になっての初めての任務で次女バーブルと相対する事となった。その後、バーブルを倒し、更にはミリアンまでは倒した。

 しかし、ここに来て完全な敗北感に包まれていた。長女リリラは既に聖京都を支配下に置いていたのであった。


 リリラは第四王子(王位継承2位)の妻として王宮へ潜り込んでいた。俗に言う嫁入りは今から約10年前、最初からリリラ自身だったのか?途中で入れ替わったかは不明。

 ここ数年、第四王子夫婦は観察対象に挙げられていた。しかし、城の一角にある部屋から滅多に顔を出さない代わりに、魔物的なマナはその一角からは一切感じられない事から単なる奥手な妻と言う印象を持つ人もいたと言う。しかし、それは完全な誤算であった。

 3魔女は魔王バンパイアロード直下のバンパイア。彼女達の特徴は魔王が所有する力の一部を受け継いでいる事だった。

 次女 バーブルは『飛翔』、空を飛ぶ能力。バンパイア自体軽く宙を浮く能力はあるらしいが、彼女の能力はそれとは違うらしい。

 末っ子 ミリアンは『眷族化』、人をバンパイア化させ手足の様に使役する能力。現在、バンパイアロードもミリアンもいなくなったからバンパイアさせる力を持った者はいなくなったと考えていいのだろう。

 長女リリラの能力が『蠱惑』。いわゆるテンプテーション、誘惑能力である。この能力の存在をここに来るまで誰も知らなかった。僕達がその情報を手にするとほぼ同時刻にリリラは行動を開始した。

 蠱惑の力で現王と第一王子を殺害した。それも自害と言う形で。それによって王家は第四王子の手に渡った。(正式にはまだ王位は就いていないけど。)

 それはリリラが王妃となったと言う事だ。蠱惑を使って第四王子を操っているのなら、実質リリラに王権が渡った度言っても過言ではない。


 3魔女との最後の1人との戦いの時は近い。まさかその彼女が聖京都の王妃となる事を誰が想像できただろうか。

 闇の大きな渦は僕の片足を既に飲み込み始めている様だった。

 


 僕達七本槍の道化衆はボルケーノ地方の炎英離都にいた。ここは旧サウスフィンと呼ばれた地域でサンフィッシュ大陸を魚な例えるなら、腹から腹ビレに当たる。4英雄の一人、火炎の英雄マリーナが治めた地域である。紆余曲折あり、この炎英離都には炎英魔宝学院と言うマナ研究機関ができた。

 ここは学術都市としても有名であるが、更に有名なのがリゾート都市である。常夏の地に年間多くの人が訪れる。聖京都側のオツから帝国まで航海の中心港町としても栄えている。

 港町は荷物を抱えて船に乗ろうとする旅人と大勢の部下を引き連れて荷物を運び出す行商人で溢れていた。

 罵声や泣き声、ざわめき、汽笛、木を叩く音。そして、波の音。様々な音は不思議と入り混じり、時より一つとなって何かの音楽の様な心地よい音色を僕に届けてくれた。

 僕はその音を楽しみながら足を少し南方へと向けた。そこにはどの船よりひときわ大きい船が停留していた。巨大帆船タイタンフールだ。


 巨大帆船タイタンフールは炎帝離都から大陸の南側の縁を沿って帝国までを運航している。

 帝国資金が莫大に使われている船だけに、他の船を大きさも豪華さも頭ひとつ飛び出ていた。

 乗る人も軍人らしき人が目立つ。

 帝国海軍船の民間払い下げ船とも言われるこの船は船員も帝国海兵下がりの者も多いと言う。帝国、スルーニル、炎帝離都の3都市を航海する為、全ての規模が大きく、船員の数も多い。

 この3国は特殊な条約を結んでおり、寄港のみ軍人の出入りが許されている。

 


 出港の時間が刻一刻と近づいていた。

 後方から聞き慣れた声が聞こえ始めた。声は次第に大きくなり、肩で息をする音までも大きく聞こえ始めた。

「待ってくださーい。殿下、もう少し、もう少しこの老いぼれの気を使ってくだされ。」

 若い男性と初老の男性の2名がこっちに歩いてきた。

 若い男性はオーウィズ。聖京都元王?(正式には死亡は伝わっていない)の孫、第一王子の息子にあたる人物。ただ、王位継承権は無いと言われている。聖京都では代々『聖』の資質を受け継ぐ者のみ王位継承権かあるとされる。オーウィズの資質は『探求者』。スキルは『探求』完全な補助資質で戦闘には不向き。資質なのか?個人的なのかは分からないけど、好奇心旺盛で何にでも首を突っ込む性格。王位継承権はないが聖京都の未来をバンパイアに渡すことは許せず、僕達七本槍の道化衆と一緒に行動している。むしろ僕達をうまく動かしている様にも思える。

 初老の男性はヒツメジ。オーウィズの父に仕えていた執事。今回、王および第一王子であるオーウィズの父の自害を真っ先に知らせて来た人物。暫く七本槍に同行することとなった。

 

 そして、最後にゆっくり歩いて来たのがストナだ。誰もが一度は振り向く美貌と気高さを持っている。が、性格は微妙。何事にも単刀直入に言う性格と怒ると手が付けられない性格から、思った程男性人気は高くない。

 資質は『聖騎士』、聖京都では歓迎される『聖』の資質持ちである。

 聖京都は聖英雄ウリエルが建てた国である。ウリエルには数人兄弟がおり、その一人は8勇士、聖の英雄の従者ローゼル。彼以外にも兄弟は存在した。ウリエルは結婚をせず、子孫を残さずにこの世を去った。その為、現聖京都はローゼルの血筋が王家となっている。ストナはローゼル以外の兄弟の血筋に当たるらしく、両親を失った彼女を不憫に思い、王家へと迎えられた。その為、王位継承権を持っている人物である。

 

 今回旅には参加しないが七本槍の道化衆メンバーにライガがいる。現在、聖京都の動向を確認する為に聖京都へ向っている。ライガの資質は『雷帝』元々槍突騎士からの上位変化と呼ばれる資質変化が起き、攻撃に雷すなわち光を纏った。

 資質には先天性説と後天性説がある。先天性説は生まれ持った資質が決まっている説。ライガで言うと『雷帝』である資質。その雷帝資質は生まれた持った雷帝資質に身体が追いつかないので、それまで別の資質となっている説。受け継ぐ準備が整うと資質が変化するというもの。

 後天性は逆で身体やマナを鍛える事、様々な経験から肉体が変化してその際に資質も変化していく。

 ライガを見ていると先天性説を推してしまう。そのくらい身体能力が高い人だ。



 僕達は今、ノーズアンダーの南西国スルーニルに向けて出航を待っている。この聖京都が一大事に時期になぜスルーニルへ行くのか。理由は2つある。

 ひとつはスルーニルから兵力を借りる事。今から始まる聖京都の内戦。最大の問題は3魔女リリラの能力が蠱惑であると言うこと。テンプテーション系の能力を持っているのでうかつに近寄るのは危険である。どのくらいの威力かは不明であるが、聖京都都市全体を操る力を持っていると考え動く必要がある。最悪の場合も考えると聖京都の全員がリリラの術中にあると考えなくてはならない。その為にも、スルーニルからの応援は不可欠となる。また、スルーニルは聖の英雄ウリエル、従者ローゼルの出身国。姉妹国、同盟国であるスルーニルに頼むのが妥当でもある。

 もうひとつ、スルーニルに行く理由はルイーゼ王女である。オーウィズの姉にして第一王子の長女。正式に第四王子が王位についていない為、ルイーゼ王女は現在王位継承3位を持っている事になる。第四王子の王位に反対して抗議権を駆使する事が出来る人物。その上、『聖回復士』の資質を持ち、美貌品性知性を全て兼ね備えている。聖の英雄ウリエルの再来、未来の二人目の女性国王とまで言われている。

 彼女が反旗を掲げてリリラに対抗する事で第四王子側についている人達をこちらに取り込む事が出来る。もちろん、蠱惑におちいっていない事が条件だけど。

 聖京都の城内は蠱惑に呑まれている可能性は高いが、それ以外の町々は正常な判断が出来ると踏んでいる。

 オーウィズの狙いは戦いを聖京都と他の町々と言う縮図にして、聖京都を取り囲み、最小限の被害でリリラを倒すのが目的である。

 どこまで出来るかは分からないけど……。

 

 今、ライガが聖京都へ赴き仲間を探している。聖騎隊のマーロン達が蠱惑に呑まれていなければ、こちら側に付いてくれると思っている。

 出来れば戦いたくない。情もあるけど、敵にするとやばいと思う。

 でも、ここであれこれ考えてもしょうがない。もう賽は投げられたんだ。やるしかない。

 

 今から1年後に開かれる王位継承の式典、それまでにリリラを倒す。

 その為には、半年後に出来上がるマナの剣を受け取る必要がある。マナの剣は崩壊の一撃を使っても壊れない唯一の剣である。3魔女のバンパイアの核(心臓)は魔王のマナが込められている為、通常の攻撃では倒せない。

 この世界には外属性(火水風土)と内属性(光聖闇邪)の8属性があると言われている。

 魔王のマナは闇と邪に通じている。この属性に残りの6属性を加えた武器で核を刺すと、マナ自体が反発する事で内部崩壊が始まる。この攻撃が崩壊の一撃である。『マナ寄せ』のスキルを使えば、それが可能となる。

 しかし、崩壊の一撃は両刃の武器である。崩壊はこちら側の腕や身体すらも崩壊させてしまう。そのリスクを無くす剣がマナの剣である。

 マナの剣は全てのマナを受け付けない特殊な剣である。その為、崩壊の一撃の反動を受けない。

 (ただし、魔王の核などマナの源流と繋がっているとそれなりのリスクはある。)

 この剣を手に入れてリリラに戦いを挑んむ。

 それは内戦の始まりを意味している。


 不安を掲げて空を見あげた。

 カモメが青空に行き来していた。

 その時、ラッパの音が鳴り響いた。出航の合図だ。


 ふと、隣にいたストナが僕の手を握って来た。

「ナギト、もう少し看板の前に行こう。」

 その声はいつもと変わらなかったけど、握って来たその手は、何時もより弱々しく感じた。

 


 再び僕達の新しい旅がこの航海から始まろうとしていた。

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