#38
「みんな、こんなところだとなんだから、教室に入ってきなよ」
「工藤さんも顔を上げてさ」
柚葉は彼女らを教室に入るよう促す。
白鳥さんは早紀に声をかけた。
彼女はゆっくりと頭を上げ、凪達と一緒に教室に入ろうとしている。
「お邪魔します」
「失礼します」
3人は礼儀正しく、私達の教室に入ってきた。
松井くんが「そんなこと言わなくてもここには僕達しかいないから大丈夫だよ」と肩をすくめながら言う。
*
「早紀、話してごらん?」
凪に促され、早紀「うん」と答えた。
「……あのね……友梨奈ちゃんと秋桜寺くんがつき合い始めた頃の話なんだけど……」
「うんうん」
「それで?」
早紀は重い口を開くと、松井くんと聡が相槌を打つ。
えっ!?
私と聡がつき合い始めた頃の話なの!?
私は表面上では少し驚いているが、心の中でおろおろしていた。
そんな中、早紀の話は続く。
「さっき、お昼の時にきたメンバーで話してたみたいだよ。もし、来年のクラス替えで誰かが友梨奈ちゃんと同じクラスになったら……ハメようとか言ってたみたいだから……」
早紀は最後の方に言葉を詰まらせながら私達に話す。
「そ、その頃から友梨奈さんはいじめのターゲットにされていたということかしら?」
「結衣ちゃん、そういうことになるね」
「………………」
早紀が私の質問に答えると、私は黙り込む。
もしかして、篠田さん達の中で聡を狙っていた人はいたのだろうか?
彼女ら以外にも彼を狙っていた人はいたと思うし……。
私は頭が混乱している。
少し考える時間がほしい……。
「そういえば、その頃はエリカも秋桜寺くん狙ってたんだよね」
「そうだったの!?」
私が悶絶している時に、白鳥さんがふと思い出したようにそう言うと、凪が少し驚いたようだ。
「そうだよ。僕は友梨奈と篠田から告白されたのは事実だよ」
聡が衝撃的な言葉を私達に告げる。
やはり、篠田さんも聡に告白していたんだ……。
「まぁ、僕は友梨奈が放っておけなくてね」
「篠田さんを断ったのですね?」
「野澤さん、そういうこと」
そうだったんだ……。
そして、早紀も――。
「話を戻すけど……まさか、本当に実行するとは思ってなかった。ボクが……早く……友梨奈ちゃんに……言っていれば……こんなことが……起きずに……済んだのに……!」
彼女は最後の方は泣き叫んでいた。
早紀、言いたいことは分かるよ。
でも、彼女は私が「木野 友梨奈」として生きていた時にこのことを言いたかったんだよね。
言えなくて、後悔したんだよね。
「……友梨奈……ちゃん……ごめんなさい……。結衣……ちゃん……も……みんな、みんな、ごめんなさい……」
涙で顔をぐしゃぐしゃになった早紀が私に縋りつく。
私は彼女をそっと抱きしめた。
「さ……早紀さん……」
「ボクが……悪いんだ……」
「工藤……」
「ボクの……責任だ……!」
私の胸の中で子供のようにわんわん泣いている早紀。
教室という名の静寂の中で彼女は泣き続けていた。
次の瞬間、教室のドアが少し開く。
「その話、最後まで聞いてたよ?」
1人の女子生徒の声が私達の耳に入ってきた。
2016/08/01 本投稿
2016/08/17 修正
2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除




