009「08 遠征中2」
「08 遠征中2」
入り組んだ木々に隠れた道を進み
やっとの事で、道らしき道まで出る事ができた
そこから更に進むと・・・
明らかに今までの道とは違う、人工物が見えて来る
今までとは違う、平坦な道を進み
やっとの事で、辿り着いた場所は・・・
こんな場所には、明らかに似つかわしくない
微妙に、近代的な街並みだった。
その、目的地らしき場所には・・・
服屋があった、蹄鉄まで売ってる靴屋もあった
家電量販店らしき店や、スーパーもある
御当地食材を売る店、民芸品を売る御土産屋さんまである
一見古そうな、昔ながらって感じの金物屋には・・・
「農具・鍋釜フライパン・鉄板・包丁等の刃物」
何故か「銃器類」も、当たり前の様に売られている
空き店舗の前では・・・
行商らしき者達が商品を並べて商いを行っている。
ソラが大きな声で突っ込みを入れた
『休憩所って・・・明らかに商店街じゃないっすか!』
到着前の道で、蛸らしき生き物に襲われ
もう少しで、食べられてしまう所だったソラは・・・
吸盤で、ちょっぴり生皮を剥がされかけただけで
思ったより、普通に元気だったりする
セレスは、レイブンの背中の襷掛けの鞄の上で・・・
『私は、此処が休憩所って言った憶えはないぞ?
休憩所は、この商店街の先の温泉にある』と、言って
ソラの反応に対し、満足気な態度で笑い飛ばした。
ソラとセレスのやり取りを、冷めた目で見ていたレイブンが
『あ・・・暫く来ない間にスーパー出来てる』と、呟き
『俺、天かすと紅生姜を調達しに行って来るよ』と・・・
触手2本と大根とネギを木の棒に紐で括り付けた物をソラに預けて
セレスを鞄と一緒に背負ったまま、スーパーに入って行く
スーパーの入口は・・・
ソラ的に見慣れた自動ドアよりも、目測4倍の大きさがあった。
街には、その大きさでも「小さい」と感じていそうな
鹿・猪・爬虫類系の者や・・・
鳥類・・・ソラの一番近くには、猛禽類系の者が歩いていた
『ソラ!足元には気を付けるんだよ
尾羽を踏んだら秒殺されても仕方が無いからね』
カリブーに注意され、目線を足元に向け・・・ソラは、肝を冷やす
もう少しで・・・ソラが自動ドアの大きさを確認する為
こっそり盗み見てた、大きな鷹の尾羽を踏んでしまう所だったのだ
鷹は眉間に皺を寄せ、舌打ちして歩き去った・・・
わざと踏ませてソラに何かするつもりだったらしい
ソラは、殺すつもりで狙われていた事に気付き恐怖に打ち震えた。
ソラは心底、冗談抜きで・・・
助けてくれるレイブンが留守で、不安だからって
御隣のブームや、近所の人が怖いからって、心細いからって
「レイブン達に付いてくるんじゃなかった」と、後悔し
現在、こんな事なら・・・
人間にしか見えないのに、機械だと言う
プリムラと一緒に、留守番しておけばよかったと思っていた。
天かすと紅生姜を手に入れ、スーパーから出てきたレイブンは・・・
顔色が凄く悪い、恐怖に凝り固まった表情のソラを見て
「何かあったんだろうな」と思いながら、大きく溜息を吐く
『何があったか、訊いた方がいいのかな?』
『えぇ~っとね、人相の悪い鳥系の当たり屋さんの罠にね
ソラが、引っ掛かる所だったんだよ
そうだ、ソラ!カリちゃんに御礼言わなきゃだぞ』
フィンに言われ・・・
ソラが消え入りそうな声でカリブーに御礼を言う
カリブーは、聞き取りにくいくらいの小さな声に耳を傾け
小さな子供を見る様な表情で、ソラを見ていた。
遠くで、12時だか24時だかの鐘が鳴った・・・
『大変!御飯の時間じゃない?御飯食べなきゃ!』
さっきまで、クッキーを食べていた筈のフィンが
カリブーの背中から降り、休憩所までの道を率先して急がせる
フィンに急かされた一行は、商店街を抜けて
無数のモーター音響く、湿度が高い場所に辿り着いた。
勿論・・・
此処に火山は無いので、温泉と言っても硫黄の臭いはしないが
地下から水を吸い上げるポンプのモーターを冷やす水が
お湯となり、湯気を水蒸気の柱を上げている
そこは今まで登ってきた中で、一番平らな場所が広く
大きな露天風呂と無数の小さな露天風呂
何箇所かに足湯もあった。
その場所を注意深く観察すると・・・
レンガ色の光沢の無い瓦屋根の下にも露天風呂がある
湯に入りながら崖下を見下ろし酒を楽しんでいる集団が見える
大きく長い足湯には・・・
カリブーと同じトナカイ系の人は勿論、鹿・猪・鳥・爬虫類系の
この地に住んでいるであろう住人達が
思い思いに雑談しながら、足を浸けている
『これは確かに、ある意味で休憩所っすね』
ソラが腕を組み、一人納得していた。
レイブンは、此処に到着する前の道で現地調達した
タコ焼き用の食材のぶら下がった棒をソラから引き取り
スーパーで購入した天かすと紅生姜の入った紙袋に
カリブーの背中の掛けてある荷物から取り出した
「小麦粉・粉末の出汁・現地調達の卵」を入れ
『暫く待ってろ』とだけ言い残して
温泉と温泉、足湯と足湯に囲まれた「休憩所」と書かれた建物に
一人で入って行ってしまった。
セレスは、レイブンの背中から離れ飛び立ち
所定の居場所がなくなったので
カリブーの背中に固定された荷物の上に、降り立っている
カリブーは、真中に「足湯」と書かれた立て看板のある
浅いお湯の池に入って行っていた・・・
その足湯では、いつの間にか水着に着替えたフィンが
楽しそうに走り回り・・・
友達であろう娘とビーチバレーを楽しんでいる。
ソラは手持無沙汰になり、仕方無しに裸足になって
自分の常識範囲から逸脱した、足湯に足を入れる
足湯の底は、湯垢でぬるぬるしている様だった・・・
『どうやったら・・・
こんな場所で、激しいボールの応戦できるんすかね?』
返事を期待せずにソラが呟いた言葉には、誰も答えなかった。
少女にしか見えない、自称「子持ちの人妻」フィンと
耳と尻尾が似た雰囲気の少女達が真剣に遊ぶ姿を見て
ソラは一人、物思いに耽る
「いつの間にか俺も、動物的な耳とか尻尾に慣れたっすなぁ
もふもふな耳と尻尾があっても、気にならなくなってきったすよ」
なぁ~んて思ってたら、フィン達が遊ぶ
大きなボールがソラの座る足湯の縁に飛んできた。
ソラが手を伸ばし、ボールを受け止めようとすると
『ソラ!避けろ!』と、セレスが叫んだ・・・
カリブーが落胆する様に俯き
手を自分の額に当てて何か言うのを見て、ソラの意識は途絶えた
「何が起きたか」と、言うのを簡単に説明すると・・・
ソラが、ビーチボールだと勘違いしていたボールが
巨大な胡桃で、硬くてそれなりに重くて
フィン達が密かに白熱し、真剣勝負モードで打ち出した胡桃には
高速回転が加わっていて・・・
受け止めようとした、ソラの腕を巻き込み
その反動で胡桃が・・・
ソラの顔面を直撃してしまったのである。
ソラ・・・本日2度目の失神
レイブンが入って行った建物からは・・・
盛り上がりを見せる女子達の話声が聞こえてきていて
まだ当分、レイブンが帰って来そうにはない
セレスはカリブーと視線を合わせ
フィンを見てから、同時に溜息を吐いた。
『フィン!危ないから、もう少し離れて大人しく遊べよ』
セレスは、そう言い・・・
ソラを介抱する為の冷たい水を調達する為に
レイブンの入って行った建物へと向かう
カリブーは、ソラを拾い上げ
介抱しやすい場所へと、ソラを運ぶ事にした。
少し離れた場所から観ていて
楽しそうで、気軽に参加できそうなスポーツだとしても・・・
モノによっては、気軽に参加しない方が良くて
やってる人は、真剣勝負してて
下手に参加すると・・・大怪我する場合があったりしますよね?