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010「09 遠征中3」

「09遠征中えんせいちゅう3」


何時いつもは、楽しげにからかう様な口調くちょうで話しているセレスが

とっても、機嫌きげん悪そうに話しているのが聞こえてきた

と、同時に・・・普段ふだんあまり聞く事が無い

機嫌の好さそうなレイブンの声も、聞こえてくる


そして、耳馴染みみなじみの薄い言葉遣ことばづかいの

ソラにとって、聞きおぼえない男の声も聞こえてきていた。


多分、セレスとレイブンは

ソラの知らない相手と話しているのだろう・・・

「それにしても、セレスさん・・・何故なぜに機嫌悪いんすかね?」

ソラは、セレスの機嫌の悪さを不思議に思い

重いまぶたじ開けて、声のする方向へ視線を向ける。


ソラは一瞬、この世界の今いる場所で

自分とレイブン以外の「人間の男」を「見た」と、思い・・・

「他にも仲間がいた」のだと大喜びし、現状げんじょうに少し安心したのだが


テーブルしに楽しそうにレイブンと話す

「その男」を見れば見るほど微妙びみょう違和感いわかんを感じ・・・

その男に対し生まれる「あらたな不安感」をきんず・・・


ソラの中で一瞬、生まれた安心は・・・

生まれた時と同じく、簡単かんたん即効そっこうで消し飛んでしまった。


ズキズキと頭痛ずつうのする頭と、言い知れぬ不安感を抱え

ソラは一応・・・

安全確保と安心感を得るために、自分の直感にしたがって

「その男」と自分との間に、大きな違いが無いかを

体を少し起こして、目で探した。


まず、違和感の正体は・・・

彼のはだの色が、ソラとは違って浅黒あさぐろいからではない事はたしかだった


ソラが「黒人こくじんの人」を見るのは、生まれて初めての出来事なのだが

「黒人の人はみな、肌が黒くて当たり前なのだ」と、言う

一般常識いっぱんじょうしきくらい、ソラだって持ち合わせている


そこまで、ソラは世間知せけんしらずではない


だが、しかし・・・此処ここは、薄暗い建物の中

さらにソラの寝かされていた

天蓋てんがい付きの豪華ごうかで大きなベットの上からでは・・・

ベットの外の様子ようすを完全に読み取る事はできない

どんなに頑張がんばっても、できる気がしない


「俺の思いすごしで、あの人が人間なら・・・

食べられたりする方向の心配だけでも減って、ほんの少しでも

安心できるんすけどねぇ・・・」

ソラはだれにも気づかれない様に、もう少し起き上がり

まだ、寝ぼけまなこな状態で・・・

レイブンと楽しげに会話する「男」を凝視ぎょうしした。


その男が、男であるソラから見ても

「男なのに美人」だなんて事は、男の肌の色同様

今回は、無視する事にする・・・


レイブンですら、それなりに「イケメンさん」なのをふく

この世界には、「無駄むだ綺麗きれいな顔立ちの者が多過ぎる」と

つね々ソラは思い、実感していたからだ


ちなみに、これは・・・

「ソラが、嫉妬しっととかしてしまわない為のいいわけではない」って事を

一応、此処にしるして置く


基礎体力きそたいりょく&運動能力が化け物級なレイブン含め

この世界の住人が「綺麗」なのはきっと・・・


世界の住人が、ソラの知る「普通の人間じゃない」から

その分だけ「平等びょうどう」にと、多分「神様的な何か」が

特別にサプライズとして、「美麗びれい」に作っているのだろう・・・

なんて事を・・・ソラが思っているなんて事は

勿論もちろん公然こうぜんの秘密ですよ?


と、言う事で・・・


ソラは、この世界で「数少ない男」である新たな登場人物が・・・

自分の天敵、自分を「食糧しょくりょう」として見る

肉食系の生き物でない事をいのりながら

更に注意深く、細かく観察していた。


ソラの目線が、顔から咽喉のどと下にさがっていく

ガタイが良く、開けたシャツの間から見える筋肉や

長身で綺麗な均整きんせいのとれたイデタチって言うのは

サプライズがなせるわざかもしれない・・・とは、思いつつ


最初の段階で、除外じょがいして考える事にしているので

一旦いったん、それも置いておく・・・

それからソラは、彼を頭の先からじょじょ々に見て行って

最終「足」付近ふきんでやっと、違和感を感じた原因げんいんに気付く事ができた。


黒系のカーゴパンツのすそに、毛足の長い黒いファーが付いている

なんて事は、デザイン的に不自然でオカシイ

そう考えると、そでにもファーが付いているのも変だ

そもそも、気温と湿度しつどの高い場所で

足やうでにファーが付いたデザインの服を着る事自体が

普通、無いだろう・・・


ソラは、裾と袖からのぞく体毛が

おどろく程、アリエナイくらいに毛深い事を確認し・・・

その男が足を組みかえ、そこにかくされていた男の素足すあしを見て

彼が、自分と同じ人間ではない事を理解した。


『ソラ、起きたのなら挨拶あいさつしろよ』

セレスが・・・

意識の戻ったソラに気付き、テーブルの上から飛び立って

ソラのいるベットの上につばさばたかせ降りてきた


『この「黒いの」は、此処の御偉おえらいさんだ!

オランウータン人種の「山都(やまと)」と、言う

間違まちがっても、ゴリラ人種と間違えるなよ?ミンチにされるからな』

セレスが、意地の悪い笑みを浮かべ

ケタケタ笑いながら、ふわりと天蓋の上に舞い上がると同時に

突風と振動しんどうが、ソラをおそった


色々な物が突風で飛ばされ、振動でれ・・・

ベットの横にあった、サイドテーブルの上の花瓶かびんが落ち

ガシャンと音を立ててくだる。


レイブンが溜息ためいきを軽くき、にこやかに

肌も服装も黒い男「山都」のそばに歩み寄って行った

『落ち着け、山都・・・

セレスは、無智むちな子供に「そう言う種類」の人種があるって事を

教えようとしただけだ・・・多分!

半分は、お前をカラカウつもりで言っただろうけど・・・

取敢とりあえず、挑発ちょうはつに乗ったらセレスをよろこばせるだけだからやめとけ

初対面の少年の心証しんしょう悪くするのは、不本意ふほんいだろ?』


レイブンと山都の足元には、突風と揺れの震源地・・・

山都がゆかこぶしで殴って作ったのだろう、クレーターができている


ソラは事情じじょうが理解できないが、何となく事態じたいを理解し・・・

山都の近くで「ゴリラ」と言う単語だけは

絶対に使わないと、心に決めた。


山都がソラの横までやってくる

『寝起きに驚かせたか?悪い事したな

アカンとは思うんやけど、あのからすの言動・・・腹立つねん』

ソラが思っていたより

大きくて毛深い山都の手が、ソラの頭を乱暴らんぼうでる


『そや、腹減はらへってないか?

レイブンが作った「イカ焼き」あるぞ

今日は特別に、此処で食ってえぇ~から食え!』

ソラは、冷めてかたくなった「イカ焼き」を食べる事になった

ただし・・・

ベットではなくて、ソラはちゃんとテーブルで食べた。


余談よだんで、今更ながらの話だが・・・

イカ焼きを食べながら、ソラが気になっていた話では

ソラを襲ったたこみたいな生き物は、烏賊いかだったらしい・・・


確かに・・・

足の数は8本より沢山たくさんあった様な気が、しない事も無い


そして烏賊は、怒ったりおびえたりすると

白から、蛸みたいな色に変化するらしい・・・無駄知識が増えた。


後、ソラの知る常識・・・

水中でないと生きていけないはず軟体なんたい動物の

この世界での常識は・・・

水中では無いのに、元気に生きて捕食活動しているのが

当たり前なそうな


この世界での常識をソラは一つ覚えた・・・

ソラの常識で、水の中に生息している筈の生き物達は

水の中に生息していないらしい


ソラが運び込まれた山都の家と言うか、総合施設そうごうしせつ的な建物の中

魚の人が、ソラの目の前を横切る

たいか金魚みたいなのに、かえるの様な手足が生えた不気味な生き物

この世界の「魚」の生息域は、湿気しっけの多い場所だと言う事だ


イカ焼きを食べる一つ前、美味しく食事で食べた

「白身魚のフライ」を思い出し、ソラは一人、うめいた

「白身魚の正体って、これっすか・・・マジッすか・・・」

受け入れなければイケナイ常識の多さに、ソラは絶望し


前に居た世界も、幸せな世界ではなかったけれど

そっとのがマシな気がした・・・

前にいた世界に「帰りたい」と、あらためてソラは思う様になった。

料理された物の正体を知らずに食べるのと、知って食べるのとでは

時折・・・

料理された物の正体によって、感想が変わってくる

なぁ~んて事、体験した事はあるだろうか?


私は今の所、無いのだが・・・

海外旅行に行った知人が、思い出話として

「食べた物の正体を知りたくなかった」と言っていた気がする。

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