第65話 これからも二人で
最終話です!
楽しんで頂けますように
では、どうぞー!
私がこの世界に来てから、はや数十年。
私もフォルも、召喚されたときからまったく見た目は変わっていない。
魔力量がもっとも増えた時点で見た目年齢は止まってしまうらしいから、私も、フォルと結婚して魔力量がドカンと増えたあの時点で、老化は止まっている。
子どもたちがどんどん大人になっていくのに自分たちはまったく老けないっていうのも最初こそ違和感があったけど、ルドルフさんの奥さんが大人になって成長が止まった程度で、周りのお友達も老けないので、今では自分の老化が止まっていることにも慣れた。
もちろん、フォルを通じて出会ったお友達の中には、高魔力保持者じゃない人もいたから、時間の経過は嫌でも感じた。
私は、なんだかんだ言って現段階で5人の子持ちだ。
男の子3人と、女の子2人。
なんていうか、私達の子供だけあって、全員高魔力保持者だ。
それぞれ、早い子で10代後半、遅い子でも20代後半で成長は止まった。
ただ。
子どもたちは不老不死ではない。
何百年かは一緒にいられるけれど、いつかは見送らなければいけない。
それは、他の高魔力保持者の人たちも同じ。
でも、それぞれにまた子供ができてその子達と過ごすようになる。
フォルも私も、とんでもないことが起きない限りは、そうやって、これから生きていく。
ちなみに、この不老不死、とんでもなくすごいもので、病気になっても何故かすぐに治るし、基本的に癌とか、血管系の病気とか、とにかくそういう重篤な病気には罹らない。
さすがに、心臓を狙われたらやばいんじゃないかと思っていたんだけど、修復されるらしい。
頭を切り落とされても、すぐにくっつければ元通り。
なんでもありだな!と思っていたんだけど、魔力が枯渇したら流石に死ぬらしい。
前世の私やフォルみたいに。
でも、相当どでかい魔法を一気に使ったりしない限りはそもそも枯渇すらしない。
うん、やっぱり何でもありだな。
でもって、身体が老化しないので、高齢出産もない。
年齢だけで見れば十分高齢出産なわけだけど、肉体的にはバリバリ現役。
そんなわけで、私のお腹には今、第6子と第7子がいる。
フォルのスキャンでも双子だと分かっていたけど、お医者様の診断でもやっぱり双子だった。
いやね?
何十年も一緒に暮らしていたら、さすがに倦怠期が来たり、来なかったとしても、夫婦っていうよりバディみたいな感じになるのかなって、思っていたわけよ、私も。
結果から言えば、全然そんなことなかった。
フォルの私への溺愛は留まることをしらないし、何だかんだで愛されてる私もフォルが大好きだ。
たぶん、あと数十年分老けたとしても、フォルはイケオジになると思うの。
そんな姿もちょっとみたいな、なんて。
ちょっと思っただけなの。
ほんのちょっと。
そうしたら、フォルは魔法で見た目を操作してしまって、イケオジな姿も見せてくれた。
ちょっと、いや、だいぶ惚れ直しちゃったよ。
テンション上がって、夜盛り上がっちゃったのは二人だけの秘密だ。
お腹にいる子たちは、たぶんその時宿ったんだと思う。
フォルもフォルで、楽しかったらしく、それから何回かイケオジ姿を見せてくれるようになった。
魔法バンザイ。
ちなみに、子どもたちはとっくに親元を離れて、それぞれ誰かの弟子になったり、独り立ちして世界を旅したり自由に生きてる。
娘たちは伴侶を見つけて子供も産んだりしているのに、息子たちにそういった浮いた話が少ないのはなんでかしら。
長男のリヒトは、メリッサさんに惚れて、これでもかと言うくらい粘った挙句、モノにした。
我が子ながらすごいガッツだった。
途中、メリッサさんが引いてたから心配したけど。
次男と三男がまったく女の子に興味がないので、もしかしてBでLな性癖なのかとワクワク、いや、心配したこともあったけど、フォルに言わせると、高魔力保持者は好きになるただ一人の相手に出会うまで時間がかかるのが普通らしい。
チラッと二人に聞いてみたら、理想の女の子は長女のアルマみたいな子らしい。
シスコンだったのね。
お腹にいる子たちは、二卵性らしくて、男の子と女の子。
私もフォルも、別に子供の性別にこだわりはない。
ないんだけど。
女の子だと、お嫁に出すときにフォルが情緒不安定になってしまうので、悩ましいところ。
「……ん?」
「どしたの?フォル」
「いや、今からラズロが来るらしい」
「泊まっていくかな」
「だろうな。お前は飲むなよ」
「わかってますー」
ラズロさんは、スプールに来てから、オネエ言葉をスパッとやめた。
元々、ゴツい見た目を緩和するためにオネエ言葉を使ってたわけだけど、なんのことはない。
スプールには、ゴツい男性がうじゃうじゃいて、ラズロさんの見た目でも全然怖がられなかったのだ。
お国柄、スプールではゴツい男性がモテるらしい。
それも、実用的な筋肉がついた男性が。
ラズロさんみたいに、背が高くて尚且つ筋肉質な男性は高物件なのだ。
うちの旦那様も程よく筋肉はついているけど、見た目はそれほどゴツくないので、少しそういう対象からは外れる。
いや、むしろ外れてくれててよかった。
世紀の大魔法使い様で、イケメンで、お金持ちでなんて、それだけでも女性が寄ってくる条件を満たしてるのに、その上さらになんて、私が心配で暮らせない。
そりゃね。
高魔力保持者は一生のうちに好きになる相手は一人だけってわかってるけど、やっぱり女の子が寄ってくるのは嬉しくない。
まあ、基本的に私たちはヒッキーなので、そこらの女の子に出会うことなんてないんだけど。
チリリリリン!
玄関のドアベルがけたたましく鳴る。
この鳴り方はラズロさんだ。
「いらっしゃい、ラズロさん」
「ラピスちゃん、この間ぶり。お腹の子は元気?」
「うん。元気に育ってる。あ、中へどうぞー」
さすがにお腹が大きくなってきているので、昔みたいにメイドさんごっこはできない。
出迎えのときは。
そう。
食事のときは未だに萌え萌えキュンをやっている。
だって、精神年齢幼児のアミュにおねだりされるし、子どもたちが小さい頃は、子どもたちもやってほしがったから。
なんなら、フォルは今でもたまに私にやらせる。
ラズロさんに至っては、うちに来ると必ず、食事のときにおねだりするのだ。
精神年齢だけでいうなら、かなりいい歳の私としてはものすごく恥ずかしい。
フォルに言っても、
「羞恥心?ポイしろよ、そんなもの」
とか言われてしまう。
ポイしちゃだめだと思うの。
羞恥心、大事。
それはともかく。
スプールに来てから、度々うちを訪れてくれるラズロさんは、今日も今日とて慣れた様子で談話室のソファに腰掛けて、ルージュさんの用意したお茶に口をつける。
「そういや、この間街でノアが女の子に追い回されてたぜ」
「ああ。ノア、いい筋肉ついてるものね」
「魔法はまだまだだがな」
遅れてやってきたフォルが容赦なくノアをこき下ろす。
まだまだ、とはいっても、もう高ランクの魔法使いレベルにはなっているんだけど。
ちなみに、ノアと言うのは次男だ。
ノアはラズロさんに憧れていて、魔法以外にも鍛錬を重ねた結果、ゴツい筋肉を手に入れた。
たまにラズロさんと一緒にうちに寄ることがあるけど、ラズロさんとノアが一緒に談話室にいると、失礼ながらすごく暑苦しい。
ママはそんなに筋肉にはこだわりはないのよ。
ほどほどでよかったのに。
三男のヴェリタスは、魔法研究大好きっ子。
筋肉には興味ない。
発動のための最低限の筋肉はつけているけど、身体を動かすよりは魔術書や古代語の研究書を読むのが好きな子。
うちにある研究書だけでは物足りなくて、世界中を回って書物を読みあさっている。
ここ十年ほどで生み出された魔法や魔法具は、ほとんどヴェリタスが生みの親だ。
まあ、まだまだその知識も閃きも応用も、フォルには及ばないけれどね。
「ヴェリタスは、たまには帰ってきてるのか?」
「そうねぇ。何か新しいことを思いつくと、フォルに嬉しそうに報告しに来てるけど」
「褒められたいお年頃みたいでな」
ヴェリタスだって、もういい大人なんだけど、私たちからしたらまだまだ子供だ。
研究にのめり込む姿を見ていると、結婚はまだまだ先そうだな、と思っていたのだけど。
「アイツ、自分と似たような、研究バカの娘さんと最近良く一緒にいるらしいぞ」
ラズロさんからの新情報。
あらあら、もしかしてそのうち紹介してくれたりするのかしらね?
楽しみだわ。
「となると問題は……」
「ノアだな」
モテるのに、女っ気のないノア。
この際、BでLな相手でもいいから、連れてきてくれないかしらね。
「ん?なんだ、お前ら知らんのか?」
ラズロさんの言葉に、フォルと私は首を傾げる。
「ノアなら、ルドの娘をロックオンしたみたいだぞ」
「は?マジで?」
「うちとしては嬉しいけど、ルドルフさんに恨まれそうねぇ」
息子二人の恋はまだまだ先だと思っていたけど、そんなことなかったのね。
ママ、一安心よ。
ホッとしてお茶を口にした私を、ラズロさんが優しく見ている。
再会して以来、ラズロさんはよくこんな表情をする。
今なら。
あの告白されたときにラズロさんが口にした薬は、恋愛感情を抑える薬なんかじゃなかったってわかる。
そんな便利なもの、作り出されてない。
そもそも、人の精神に作用する魔法や魔法薬は、まだまだ研究段階なのだ。
自白剤や幻覚剤、媚薬とかならまだともかく、恋愛感情を抑える薬なんて、調合のしようがない。
あらゆる感情を麻痺させる薬なら作れるけど、ラズロさんが飲んだのはそういうのじゃないってわかってる。
あれは、ラズロさんの優しい嘘だった。
それがわかっているから、私は何も気がついていない顔で、今も一緒にいる。
あと100年もしたら、きっとラズロさんとのお別れのときが来る。
きっと、ルドルフさんやメリッサさん、他のお友達とも。
それまでは、いい思い出をたくさん作りたいし、最期のときには笑顔で見送りたい。
フォルと、二人で。
死なないということは、見送り続けるということ。
それでも、私は一人じゃないから。
ずっと隣を歩いてくれるフォルがいるから。
「フォル」
「ん?」
「私をこの世界に喚んでくれて、ありがとう」
砂糖吐く、と呻いているラズロさんを横目に、私とフォルは軽いキスを交した。
無事年内に最終話を投稿することができました
ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございます
後半、体調不良で更新がなかなかできず、
ご迷惑おかけしました。
また、新連載を始める際にはぜひよろしくお願いします




