第53話 師匠の回想 4
体調を崩しました
もしかしたら、明日の投稿できないかもです
すみません
久しぶりにメリッサがやってくるとわかった時、俺はこの上なく愛らしいラピスがどんな目に遭わされるのか予想がついたので、部屋にこもっているように言った。
ラピスの負うだろう気苦労を思ってだ。
でもそれは、俺の独りよがりな、間違いだった。
ラピスに言われて、数日間たった一人で部屋で過ごさせることが、どんなにさみしいことか気が付かされた。
特に、ラピスにはこの世界には友達もおらず、いたとしても、前の世界のように通信器具を大人から子供までもっているわけではない。
この世界の通信器具は、それなりに高価なのだ。
そのことに気がついて、ラピスをメリッサに会わせることに決めた。
せっかくなら、ラピスの思い切り可愛い姿を見せて驚かせてやろうと、初めてラズが来た時と同じように、メイドの真似をして歓迎させると、案の定、メリッサは食いついた。
メリッサは別に同性愛者ではないけれど、可愛いものがとにかく好きで、可愛いと思う好みのタイプは、俺やラズとほぼ同じだ。
ラピスは、どうにも自分の魅力を過小評価しているけれど。
メリッサにラピスが早々に拉致されてから、たぶん着替えさせられているのだろうと、ラズと二人で、部屋の外でソワソワしていたら、妖精のように羽のついたフワフワのワンピースを着て、うさ耳をつけた、べらぼうに可愛いラピスが姿を現した。
あのときの俺の衝撃は、計り知れない。
似合いすぎていて、咄嗟に言葉も出てこなかったくらいだ。
でも、そんなもの、まだまだ序の口だったと知ったのはメリッサたちが帰る日の朝。
なんと、ラピスは紺色のワンピースに身を包んだ、ネコ耳と尻尾をつけて現れたのだ。
おまけに、今回はかわいいピンピンした髭までついて、両手も猫の手になっている。
俺は、猫が大好きだ。
前に、ラピスがルドに唆されてネコ耳尻尾で現れたときも、とんでもない破壊力で、試しにネコにとっての媚薬であるクララスの実をチラつかせてみたら、酒によったとき以上に甘えん坊で可愛らしく甘えてきたことがある。
俺は、ハッと我にかえると、慌てて自分のローブをラピスの頭の上から被せた。
だめだ。
こんなに可愛いラピスを他の奴らになんて見せられない。
でも、その反面でもう少し堪能したい気持ちもあって、一度人間の姿に戻ったラピスに(戻り方も可愛かった)、夜、俺の部屋で二人きりで見せてほしいと伝えた。
その晩は、俺にとって理性を試される一晩になった。
クララスで酩酊状態になった、ネコのラピスは、やっぱりとんでもなく可愛くて、その上、俺にスリスリと擦り寄ってくる。
それも、甘い声をあげながら、だ。
だから、その後のことは仕方ないと思っている。
俺がムッツリなのかオープンなのかはともかく、理性は飛んでいって、深いキスをした。
はじめは戸惑っていたようなラピスは、抵抗がなくなったな、と思ったら、気絶していた。
俺、よくそこまでで我慢できたと思う。
それなのに、翌朝。
何かが足をさわさわしていると思ったら、ラピスの尻尾だった。
誘ってんの?
これ、俺誘われてんのか?
再び飛んでいった理性。
しかし、唇が重なる直前に、ラピスは言った。
「師匠は……私のこと、好き、ですか?」
オレは動きをピタリと止めて、はあっとため息をついた。
「お前な。俺が好きでもない女にこんな事するような奴にでもみえるのか?」
そう見えてるなら最悪だ。
こちとら、何百年と童貞こじらせてるってのに。
でも、どうやらラピスの言いたいことはその言葉通りではないようだった。
「好きですか?」
もう一度聞き直されて、ああ、と気づく。
そう言えば、俺からはっきり伝えたことはなかったか。
「俺に言わせるか」
「はい」
「そうだな。お前の言うとおり、はっきりさせないで進めるのは間違ってた」
どう伝えたら、と迷ったのはほんの一瞬で、すぐに本音が口からこぼれた。
「好きだ。お前のことが、他の何よりも。ずっと俺のそばに隠して、他の誰にも見せたくねぇくらいにはな」
そう言って、やさしいキスを落とす。
「初めてお前を見たときからずっと、好きだったよ。お前を知れば知るほど、どんどん好きになった。今じゃ、お前なしの世界なんていらねぇほどだ」
ラピスの頬を、涙がこぼれ落ちた。
それが喜びの涙だということはわかる。
ラピスは何回も俺に好意を伝えてくれていたけれど、俺だって、ちゃんとした言葉で聞きたい。
「俺は言ったぞ。お前は?」
「私も……私もあなたが好きです。私にとって、師匠はこの世界に私を留める楔。師匠がいないなら、この世界にも、他のどの世界にも生きていたくない」
ああ、ほんとに。
コイツはいつだって無意識に人の理性を破壊しに来る。
また、唇を重ねる。
熱く、深いキス。
頬へ、そして首筋へ。
ワンピースの中に潜り込ませた手が触れている肌は、熱く、しっとりとしている。
手を這わせながら、いくつもマーキングをした。
鎖骨の下にも、胸元にも。
「師匠……キス、を」
「煽んな。止まらなくなっても知らねえぞ」
キスがどんどん深くなっていって、溶け合うみたいで、何もかもがどうでも良くなったその時。
「主様。そろそろよろしいでしょうか」
部屋の外から、ルージュの声が聞こえた。
ハッ、と我に返る。
まだ結婚もしていないのに、危うく、ラピスのすべてを奪ってしまうところだった。
しかも、こんな朝っぱらから。
ルージュのやつは、絶対にこの状況に気がついていて声をかけてきたに違いない。
アイツは使い魔だから、ある程度俺の気持ちを共有できる。
ラピスに、転移で自分の部屋に戻るか聞いたが、このま俺の部屋にいるというので、とりあえず人間の姿に戻ってもらった。
ねこラピスの姿は、俺だけが知っていればいい。
ラピスはその後、食堂でアミュからの悪意のない言葉に被弾し、真っ赤になって食事どころではなくなったので、部屋まで連れて行った。
ラピスが平常心に戻ったのは、夕食の時間になる頃だった。
ここまでラピスを動揺させられたことに、俺は内心満足していた。




