13回目 戦力増強の為の地雷設置
そうして初日は、迷宮内生活の下準備で終わろうとする。
作業を続けて、その為の準備はととのった。
もっとも、それで寝泊まりするわけではない。
本来ならば複数で迷宮入りをする。
そして、警報などを設置して、怪物の接近を把握する。
接近したら、起きてる者が対処。
それ以外は休息をとる事になる。
そうやって迷宮内で何日も作業をしていく事になる。
しかし、今回ヒロトシは新人と二人でやってきてる。
交代制を敷くのも難しい。
新人がかなりの手練れであればともかく。
残念ながらやり方を教えねばならない存在だ。
ろくに探索の仕方も教えてもらってないのだ。
戦闘も含め、色々と仕込まねばならない。
そんな人間に、警戒などを含めた単独行動が出来るわけがない。
「なので、こういう場合の対処の仕方を教えておく」
そう言ってヒロトシは、少数で迷宮に入った場合の対処を教えていく。
「簡単に言えば罠を仕掛ける。
これに尽きる」
非情に簡単な話だ。
殺傷能力のある機具を仕掛けておく。
それを使って怪物に損傷を与える。
なんなら、殺害してしまっても良い。
そういう仕掛けを作っていく。
ただし、道具を使わず、魔力を使って。
「警報とかと同じ要領で作って設置していく。
そうすれば、俺達が戦わなくてもいい。
怪物が勝手に死んでいってくれる」
実際、このやり方でかなりの怪物をヒロトシは倒した事がある。
悪評のせいで仲間を集められないので、こういった方法を使うしかない。
ただ、こういった方法に長じる事で、得難い利点もある。
単純に、報酬を頭割りしなくて良い。
実入りを全て自分のものに出来る。
これがとてつもなく大きかった。
「作り方を教えるから、これをどんどん設置していけ」
こうして警報だけではなく、罠もあちこちに設置していった。
現代日本を知る者が見れば、こういったかもしれない。
「まるで地雷だな」
実際、やってるのは地雷の設置である。
それを魔力を使って作ってるだけだ。
こうして地雷設置が始まっていく。
構造自体は警報などよりも複雑だ。
だが、警報と極端な違いがあるわけではない。
基本的に警報は、一定の範囲に対象が入った場合に発動する。
その時に大きな音や信号などを発するようになっている。
この音や信号の代わりに、魔力の爆発などが起こるようにしていく。
ただそれだけで、警報は地雷に早変わりする。
更に、警報と爆発を組み合わせておいてもよい。
そうする事で、怪物の接近をしらせると共に、損害を与える事が出来る。
それだけでもその後の戦闘が有利になる。
「作り方はこれだ。
とりあえず、この通りに作っていけ」
そういって、手順書・説明書を渡す。
「一応実演してみせるから、参考にしろ」
目の前でやり方も見せていく。
そうして、やって見せて、やらせてみせていく。
先に警報で慣れてたせいもあるだろう。
新人は手早く魔力の地雷を作っていった。
爆発するような仕組みを作るのに手こずりはしたが。
それでも魔力を組み上げる事が出来た。
この練習の為に警報などを作らせていたのでもある。
まずは危険のないものからやらせる事で。
警報ならば、作成に失敗しても、大きな問題は無い。
せいぜい、大きな音が鳴るくらいだ。
耳は痛くなるが、命に関わる怪我を負う事はない。
そうして地雷を更に設置していき、怪物の接近に備えていく。
それが粗方終わったところでヒロトシは声をかける。
「それじゃ、ここからが本番だ。
寝ないで頑張るぞ」
「…………え?」
何の冗談だと新人は思った。




