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12回目 人材を求めて人を失っていく

 そもそも、優れた人材が下っ端の集団などに所属する事はほとんどない。

 だいたいが、上位の集団に入ろうとする。

 現代日本における、上位の企業と同じだ。

 多くの者が大企業を目指す。

 そして大企業は、やってきた者達から優れたものだけを選べば良い。

 それと同じ事がこの世界でも起こってる。



 つまり、大手以外が優秀な人材を確保する可能性は無い。

 言ってはなんだが、凡人を確保するのがせいぜいだ。

 ならば、それで何とかやっていくしかない。

 他に選択肢は無いのだから。



 なのに、せっかく来た人間を手放していく。

 そこが理解不可能だった。

 そこまで使えないならともかく。

 それなりに使える人間を手放して何がしたいのか?

 ヒロトシにはそこが分からなかった。



 そもそも、それだけ優秀な人間を揃えてどうするのか。

 それで何をしたいのか。

 それが分からない。



 迷宮探索を更に進めたいのか?

 何のために?

 名誉や名声が欲しいのか?

 それも理解出来ない。

 あっても腹が膨れるわけではないのだから。



 稼ぎを増やしたいのだろうか。

 分からないではない。

 しかし、莫大な資産を作りたいというならともかく。

 人並みの生活を死ぬまで続けるくらいなら、そこまで気張る必要も無い。



 迷宮での稼ぎはかなりのものになる。

 エネルギーになる魔力を内包する魔石。

 それを大量に持ち帰れば、かなりの金になる。

 一般人が死ぬまで過ごすための稼ぎなど、それほど難なく手に入る。



 その為には、死なない程度に数年は頑張らねばならないが。

 だが、数年で人生を終えるまでの蓄えが出来るのだ。

 多少の贅沢がしたいというなら、まだもう少し頑張る必要があるが。

 それにしたって、更に五年も頑張ればどうにかなる。



 もっとも人生50年の世界だ。

 寿命を考えれば、落ち着いた生活が出来る期間はそれほど長くはない。

 その短い人生で、出来るだけの贅沢がしたいという気持ちも分かる。



 しかし、だからこそ疑問が募る。

 それならばなおの事、下手に人を放逐するわけにはいかない。

 手元にある人間を上手く使っていった方が効率が良い。

 手に入るかどうか分からない人材を求めるよりは現実的だ。



 だいたいにおいて、無謀な向上心の意味が分からない。

 何でか知らないが、やたらと上を目指す連中がいる。

 ヒロトシにはそれが分からなかった。

 必要な食い扶持の確保。

 その上での、それなりの贅沢。

 それが目的なら、無理して頑張る必要がないからだ。



 人材の確保や組織の拡大を目指す必要も無い。

 ヒロトシの見立てではあるが、10人くらいの人数で頑張れば良い。

 それくらいの人間が無理をせずに頑張れば、財は十分に作れる。

 特に優秀な人間がいなくてもどうにかなる。



 それなのに、何故か人材を求める者がいる。

 探索者集団の拡大を望む者がいる。

 そうして迷宮の奥を目指す者達がいる。

 どこまで到達したかで、評判が変わるからだ。

 ただ、それらに実利的な意味がどれほどあるのか。

 今以上を求めてどうするのか。

 そこが分からなかった。



(無駄な事を……)

 そう思ってしまう。

 必要な人数と必要な能力。

 それを揃えるのはそれほど難しくはない。

 それなのに、それをみすみす手放していく。

(何がしたいんだか)

 本当に意味が分からなかった。

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