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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
六章 犯した罪を誤魔化して
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殺意に満ちた視線

―クロエ レストランの外 朝―

(私のやったことは……ただ無関係の人間を……)


 何かを隠すような笑顔でおばあさんと少女に料理を運ぶ巽君を、レストランの外からひっそりと見守りながら、私はそんなことを思っていた。


(こんなの……私が村を燃やされた時と一緒じゃない。同じことを人間に……っ!?)


 私は並々ならぬ殺気に満ちた視線を感じて、巽君から街並みに視線を向けた。ただ商店や住宅が立ち並んでいるだけの、のどか風景。だが、いつもとは何かが違う。悪意をすぐそこから感じるのだ。


(誰? どこ? 近いのに……気配は感じるのに……)


 今の今まではなかったのに、唐突にそれは現れた。ただし、姿はない。気配だけがあるのだ。どうすれば、姿を見せることなくこんなに殺気を飛ばすことが出来るのか。


(クソ……分からない! ここから下手に動くのも危険だし、かと言って放置するのも危険だわ)


 目だけを動かして必死に探しているのだけれど、本体は一向に見つからない。まるで、私を嘲笑うかのように殺気だけを飛ばしてくる。

 朝とは言え、人は沢山いる。レストランには行列が出来ている、変な動きをすれば完全に不審者だ。本当は声を発して呼びかけてみたいのだけれど、それが出来ないのが歯がゆい。


(殺意がこちら側に向けられているのは確か。問題は誰に向けられているか……)


 レストランそのものか、レストランに並ぶ人達の中にいるのか、それともレストランの中にいる人物か。巽君を狙っているものであるとは限らない。

 だが、レストラン付近である以上、巽君でなくても巽君自身に危害が及ぶ可能性も否定出来ない。私が守らなければならないのだ。それが、私に任された使命だから。


(もし、巽君だったとしたら……他の誰かを犠牲にしてでも守らないといけないんだ。傷一つつけちゃいけない、それがボスからの命令。守らなきゃ……私がっ!)


 今、私は明らかに巽君に疑念を抱かれているが、そんなことを気にしている余裕はない。あんな状況で、咄嗟に嘘をつく方が難しい。安易に記憶を封印するのも危険が伴うし、適当なことを言って誤魔化すしかなかったのだ。真実を言えば、間違いなく引かれてしまうのだから。

 私達の関係に溝はあるが、それに使命は関係ない。影響されてはいけない。


「っ!?」


 その時、どこからか向けられていた殺意が嘘のように消えた。思わず、私は声を少し漏らしてしまった。


(何……何なの!? まさか、何か……もう!?)


 しかし、レストラン及びその周辺では何も起こらない。殺意すら気付かぬ平和ボケした人間達が、食事を食べることが出来るのを今か今かと待ち望んでいるだけ。


(……何か企んでいるのかもしれない。巽君が近付く周辺のこと……何も起こらないようにしなければ)


 結局、その日はもう何も起こらなかった。だが、不審な出来事であったのは事実だ。私は、それをただの鳥のカラスを使ってボスへと伝えることにした。

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